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刑事訴訟法

第1章 手続の関与者

2 裁判所

※裁判員の参加する刑事裁判に関する法律3条1項の例外を除き、裁判員の参加する裁判の対象事件に該当する限り、裁判員裁判は必要的であり、被告人に裁判員の関与する裁判体によるか裁判官のみの裁判体によるかを選択する権利や裁判員裁判を辞退する権利は認められていない

裁判員法3条1項

※被告人の言動等により、裁判員等の生命、身体、財産に危害が加えられるおそれ、または生活の平穏が侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり、又は裁判員の職務遂行ができず代替裁判員の選任も困難と認める場合は、地方裁判所は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない

裁判員法6条

※裁判員裁判において、裁判官及び裁判員の合議により判断される事項は、事実の認定法令の適用刑の量定である(1項各号)

法令の解釈に係る判断、訴訟手続に関する判断、その他裁判員の関与する判断以外の判断は、裁判官のみによる合議に委ねられる事項である(2項各号)

裁判員法2条2項、3項

※裁判員の参加する合議体の裁判官の員数は3人裁判員の員数は6人である(2条2項本文)

※しかし、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官1人及び裁判員4人からなる合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる(2条3項、2項ただし書)

☆裁判員の参加する合議体の裁判官の員数は3人、裁判員の員数は6人とされているが、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ 、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官1人及び裁判員4人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる

裁判員法49条

※裁判所は、裁判員の参加する裁判の対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない

☆裁判所は、裁判員裁判の対象事件については、必ず当該事件を公判前整理手続に付さなければならない

裁判員法59条 

※裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができる

☆裁判員は、犯罪事実の認定に関する事項につき、裁判長に告げて、被告人に対し、直接質問することができる

裁判員法67条1項

※裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

☆裁判員の関与する判断のための評議において、その判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によるので、裁判員のみが被告人を有罪とする意見である場合には、被告人は無罪となる 

381条 

☆裁判員裁判により言い渡された判決につき検察官は、刑の量定が不当であることを理由として公訴の申立てをすることができる

3条1項

※事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる

☆検察官は、軽犯罪法違反の事実のみならず窃盗の事実も併せて被疑者を公判請求する場合、簡易裁判所ではなく地方裁判所に対して行うこともできる

5 弁護人

39条1項

※身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、弁護人に選任されることについて裁判所の許可があった後に限る)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる

☆弁護士は、被疑者の弁護人に専任されなくても、逮捕又は勾留された被疑者と立会人なくして接見することができる場合がある

228条2項

裁判官は、捜査に支障を生ずるおそれがないと認められるときは、被告人、被疑者又は弁護人を、検察官の請求に基づく第1回公判期日前の証人尋問に立ち会わせることができる

☆被疑者の弁護人は、検察官の請求による第1回公判期日前の証人尋問に立ち会う権利を有しない

☆裁判官が、刑事訴訟法226条に基づいて、検察官の請求により、犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者につき、第1回公判期日前に証人尋問を行う場合、弁護人が立合いを求めることはできない

82条1項、2項

勾留されている被告人は、裁判所勾留の理由の開示を請求することができる。

勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、その他利害関係人も、勾留の理由の開示を請求することができる

釈放された後の被疑者やその弁護人は勾留理由開示の請求権者ではない

82条〜86条、207条1項

※勾留されている被告人等は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる(82条〜86条)

※勾留理由開示の請求の規定は被疑者の勾留にも準用される(207条1項)

☆勾留理由開示の請求は、起訴前にも起訴後にも認められる

☆勾留理由開示は、被疑者勾留及び被告人勾留のいずれについても認められる

裁判官が、検察官からの勾留請求を受け、被疑者に対し、勾留質問をする場合、弁護人が立合いを求めることはできない

憲法34条後段、刑事訴訟法207条1項、83条3項本文

勾留理由開示は、弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない

☆裁判官が、勾留されている被疑者につき、公開の法廷において、勾留の理由を開示する場合、弁護人は立会いを求めることができる 

142条、113条1項

検証については被告人の弁護人立合権が認められている

☆裁判所が、起訴された被告事件の犯行現場を検証する場合、弁護人は立会いを求めることができる

6 その他の関与者 

154条

※証人には、この法律に特別な定のある場合を除いて、宣誓させなければならない

※犯罪の被害者に被害に関する心情等の意見を陳述させる場合には、宣誓は要求されていない

157条の3第1項本文

※被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる(1項本文)

※弁護人が出頭していることが要件とされるのは、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置を採る場合であり(1項ただし書)、傍聴人と証人との間の遮蔽の場合には要件とされていない(同条2項)

292条の2第6項

※157条の3の規定は、犯罪の被害者に被害に関する心情等の意見を陳述させる場合にも準用される

※証人尋問が認められる被告事件についても、被害に関する心情等の意見の陳述が認められる事件についても、罪名による制限は設けられていない

☆公判期日において、被害に関する心情その他被告事件に関する意見を陳述したい旨の申し出ができる被害者の範囲について、法定刑の軽重による差異は設けられていない 

292の2第7項

※裁判所は、犯罪の被害者に被害に関する心情等の意見を陳述させる場合において、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させることができる

犯罪の被害者証人として尋問する場合には、供述に代え供述を記載した書面を提出させるという制度は置かれていない 

292条の2第1項、第9項 

・被害に関する心情等の意見の陳述は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない

第2章 捜査

2 捜査の端緒

☆司法警察員は、告訴を受けたときでも、ただちに被疑者を逮捕しなくてもよい

235条1項

親告罪の告訴は、犯人を知った日から6ヶ月を経過したときは、これをすることができない。ただし、強姦罪など一定の性犯罪については、6ヶ月の告訴期間は撤廃されている

237条1項

※告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる

☆被害者の法定代理人がした告訴を被害者本人が取り消すことはできない

☆親告罪の告訴の取消しは、起訴前は認められているが、起訴後は認められていない 

最決昭28.5.29

※親告罪の被害者が犯人を知った時から6ヶ月を経過していても、法定代理人が、これを知った時から6ヶ月以内にした告訴は有効である 

237条2項

※告訴の取消しをした者は、更に告訴をすることができない

241条1項

告訴又は告発は、書面又は口頭検察官又は司法警察員にこれをしなければならない

☆Aが強姦された場合、Aの夫は、「犯罪により害を被った者」として告訴権を有しない 

大判昭12.6.5

☆器物損壊罪の被害者が犯人をXと指定して告訴したが、捜査の結果、犯人はYであることが判明した場合、その告訴はYに対して有効である

☆一通の文書でA及びBの名誉が毀損された場合、Aがした告訴の効力は、Bに対する名誉毀損の事実には及ばない 

☆告訴をすることができる者の範囲について、法定刑の軽重による差異は設けられていない

☆捜査機関が犯罪があると思料するに至った理由を捜査の端緒というが、捜査の端緒には何ら制限がなく、刑事訴訟法に規定されたものに限られない

229条

・変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない(1項)

・検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる(2項)

検視は、検察官にのみ認められた権限であるが、検察官は、検察事務官又は司法警察員に検視の処分をさせることができる

※犯罪の嫌疑の存在を前提とせず、その有無を判断するために行われるのであるから、捜査そのものではなく、捜査前の処分として、検証とは区別される

大判昭7.10.31

親告罪について告訴前においても捜査をすることができる

※告訴は親告罪の構成要件ではなく、単に犯罪についての訴追条件にすぎない

※司法警察職員は犯罪があると思料した時は捜査を行う職務権限を有する

245条

※自首について、243条は準用されていない

※自首をした犯人は、自首を取り消すことはできない

245条、242条

※司法警察員は、自首を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない

3 任意捜査と強制捜査 

写真・ビデオ撮影(最決平20.4.15、百選8)

・ビデオ撮影は、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ、相当な方法によって行われたものといえ、捜査活動としては適法なもの

公道上での撮影は、通常、人が他人から容貌等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所におけるものである

☆被疑者Aに知られずに、公道上を歩行中のAの容貌を写真撮影する行為は、令状の発付を受けていなくても適法と評価される余地がある

・捜査の必要がある場合には、刑訴法221条により、ゴミ集積所に出したゴミを遺留物として領置することができる

☆被疑者Aに知られずに、Aの自宅から公道上のごみ集積所に排出されたゴミ袋を持ち帰る行為は、令状の発付を受けていなくても適法と評価される余地がある

197条2項

※捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる

☆被疑者Aに知られずに、Aと取引のある金融機関にAの負債内容の報告を求め、それを記録した書面の交付を受ける行為は、刑訴法197条2項に基づく照会といえ、任意捜査として適法と言える 

☆被疑者Aの同意に基づいて採取した口腔内細胞を試料として、AのDNA型を検査する行為は、任意捜査として適法といえる

☆被疑者Aに対し、Aの同意に基づいてポリグラフ検査を実施する行為は、任意捜査として適法といえる  

4 逮捕と勾留

203条1項

※司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕した時、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと判断した時は直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない

司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕し、弁解の機会を与えた後、留置の必要がないと判断したときは、被疑者を検察官に送致することなく、直ちに釈放しなければならない

逮捕状による逮捕の場合、令状を執行した後、被疑者に対し、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与えなければならないが、起訴前の勾留の場合、それらは必要ない

緊急逮捕現行犯逮捕においても、逮捕された被疑者に弁解の機会を与えなければならない

※被疑者を受け取った司法警察員は、被疑者が身体を拘束された時から48時間以内にこれを検察官に送致する手続をしなければならない

☆検察官は、逮捕中の被疑者につき、公訴を提起することができる

☆現行犯人である「現に罪を行い終わった者」というために、犯罪の実行行為の全部を完了している必要はない

☆逮捕者が、犯行の一部を現認していなくても、現行犯逮捕が許される場合がある

213条

※現行犯逮捕の場合、逮捕状を求める手続は存在しない

216条

※現行犯人が逮捕された場合には、199条(逮捕状による逮捕)の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する

204条1項本文

検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要があると思料する時は被疑者が身体を拘束されたときから、48時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

※検察官は、逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、留置の必要がないと思料するときは直ちに釈放しなければならない 

205条1項

※検察官は、逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない

205条2項

・前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から72時間を超えることができない

207条1項本文 

・前3条(逮捕状により被疑者を逮捕した場合)の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する

※ここに「前3条の規定による勾留の請求を受けた」とは、前3条によらない被疑者の勾留を認めない趣旨である(逮捕前置主義

A事実によって逮捕し、A事実に付加してB事実について勾留請求し又は勾留状を発することは、かえってB事実につき拘束時間に関し被疑者に有利であるから許されると解されている

☆検察官は、軽犯罪法違反で現行犯逮捕した被疑者について、軽犯罪法違反の事実のみならず窃盗の事実も併せて勾留請求することができる

※被疑者の勾留を請求するには、同一事実について、既に被疑者が逮捕されていることを要する

傷害罪の準現行犯人甲の逮捕後、勾留請求前の時点で本件が強盗目的で敢行されたと疑うに足りる相当な理由が生じた場合には、検察官は、強盗致傷罪で勾留を請求する事が可能である

207条1項本文、95条

裁判官は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被疑者を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被疑者の住所を制限して、勾留の執行を停止することができる

※勾留の執行停止は、勾留の執行を一時的に停止し、被告人の拘束を解く制度であり(95条)、これは被疑者の勾留にも準用されている

検察官は、自らの裁量により勾留の執行を停止することはできない

☆勾留の執行停止は、被疑者勾留及び被告人勾留いずれについても認められる

☆勾留している被疑者について、緊急の手術のため入院せざるを得ないという事情があるとき、裁判官は、被疑者の勾留の執行を停止するにあたり、その住居を制限することができる

95条

・裁判所は、適当と認める時は、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる

☆被告人から勾留執行停止の申立てがあった場合でも、裁判所は、勾留の執行を停止するか否かの裁判をする必要はない 

207条1項ただし書、90条、91条1項

保釈被告人についてのみ認められ、被疑者には認められない

☆逮捕状による逮捕も起訴前の勾留は、保釈は認められない

最決昭57.8.27

・逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当である

逮捕状による逮捕については、刑事訴訟法上、不服申立の手段がない

☆被疑者又は弁護人は、逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができない

429条1項2号

・裁判官が勾留に関する裁判をした場合において、不服が有る者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる

☆被疑者の弁護人は、被疑者の勾留場所警察署の留置施設から拘置所に変更することを求めて裁判所に準抗告をすることができる

☆被疑者は、勾留請求を受けた地方裁判所の裁判官が勾留状を発した場合、これに不服が有るときは、同裁判所に対し、その裁判を取り消して勾留請求を却下するよう請求することができる

☆検察官は、勾留請求を受けた地方裁判所の裁判官が、犯罪の嫌疑が認められないものとして勾留請求を却下した場合、これに不服が有るときは、同裁判所に対し、その裁判を取り消して被疑者を勾留するよう請求することができる

※429条にいう「裁判官」とは、受命裁判官、受託裁判官、起訴前又は第1回公判期日前に各種の処分をする裁判官を意味する。この「裁判官」の裁判が準抗告の対象となる。そして、第1回公判期日後において保釈請求を却下するのは「裁判所」であって、「裁判官」ではないから、第1回公判期日後の保釈請求を却下する裁判は準抗告の対象とはならない

☆被告人又は弁護人は、第1回公判期日後の保釈請求を却下する裁判に対して準抗告をすることができない

☆検察官は、地方裁判所の裁判官がした勾留請求を却下する裁判に対して高等裁判所に準抗告をすることはできず、地方裁判所に準抗告をすることができる

☆窃盗罪で勾留状が発せられ、これが執行された後に、窃盗罪について勾留の理由又は必要がなくなった場合、検察官は、詐欺罪について捜査の必要があることを理由として被疑者の勾留を継続することは許されない

☆司法巡査は、甲を準現行犯人として逮捕するに当たり、甲に逮捕の理由を告げる必要はない

212条2項4号

☆甲が司法巡査から「ちょっと待って」と声をかけられて直ちに逃走を開始したことは、「誰何されて逃走しようとするとき」に該当する

208条1項

※207条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から10日以内に控訴を提起しないときは、勾留期間の延長が認められた場合を除き、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない

☆裁判官が、検察官から勾留の請求があった翌日に、被疑者を勾留する旨の裁判をした場合でも、検察官は、勾留の請求をした日から10日以内に控訴を提起しないときは、勾留期間の延長が認められた場合を除き、直ちに被疑者を釈放しなければならない

※勾留期間の計算は、初日を参入する(55条1項参照)

※裁判官がその裁量により勾留期間を短縮することは違法である

☆裁判官は、窃盗事件を犯した被疑者甲について、勾留の理由及び必要性があると認めたが、操作に要する期間は7日間で足りると考えた場合でも、勾留期間を7日間とする勾留状を発することはできない

208条2項

※裁判官は、やむを得ない事由があるときは、検察官の請求により、10日間の勾留の期間を延長することができる

☆裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、被疑者の勾留の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて10日を超えることができない

☆傷害罪の準現行犯人甲を傷害罪で勾留した後、本件が強盗目的で敢行された疑いが生じた場合、強盗目的であったことの捜査のために勾留期間を延長することが許される

※勾留期間延長の裁判においては、被疑者に対し被疑事件を告げこれに関する陳述を聴く手続は要求されていない

☆裁判官は、検察官から勾留期間を10日間延長する請求があった場合でも、その延長期間を5日間とする裁判をすることができる

※逮捕の効力は、逮捕状に記載されている事実についてのみ及び、それ以外の事実には及ばない(事件単位の原則)。そのことから、逮捕状に含まれていない犯罪事実については、逮捕の効力が及ばず、必要があれば、別個の逮捕をすることが可能となる 

同一事件についての逮捕・勾留は、原則として1回しか行うことはできない(逮捕・勾留一回性の原則) 

☆傷害罪の準現行犯人甲を傷害罪で勾留した後、甲が「強盗目的で事件を起こした」旨供述した場合であっても、傷害罪による勾留中に強盗致傷罪で逮捕することは違法である

37条の4

・裁判官は、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない

227条1項

※検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第1回の公判期日前に限り検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる

226条

☆検察官は、犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、取調べに対して出頭又は供述を拒んだ場合には、その者が当該犯罪の被害者であったとしても、第1回の公判期日前に限り、裁判官に証人の尋問を請求することができる 

179条1項

※弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に証人の尋問を請求することができる

被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる 

☆弁護人は、被告人のアリバイを供述する証人に海外赴任の予定があるなど、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に、裁判官に証人の尋問を請求することができる

228条1項、152条

☆裁判官は、第1回の公判期日前の証人尋問請求において、召喚に応じない証人に対しては、更にこれを召喚し、又はこれを勾引することができる

242条

※司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない

司法警察員は、告訴を受けた事件に関する書類及び証拠物について、当該事件について犯罪の嫌疑がないものと思料するときでも、検察官に送付しなければならない

191条1項、218条1項

☆検察官は、司法警察員から送致を受けた事件であっても、捜査の必要があると思料するときは、自ら、捜索差押許可状の発付を受けて、捜索差押えを行うことができる

少年法41条前段

☆司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを検察官ではなく家庭裁判所に送致しなければならない

223条1項

検察官検察事務官又は司法警察職員司法警察員及び司法巡査をいう)は、犯罪の捜査について必要があるときは、被疑者以外の出頭を求め、これを取り調べることができる

☆司法巡査は、犯罪の捜査について必要があるときは、犯罪の被害者の出頭を求め、これを取り調べることができる

210条1項前段

☆検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。

210条1項中段

※緊急逮捕の場合に、司法巡査を含む司法警察職員が裁判官の逮捕状を求める手続をすることを認めている

緊急逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない

※被疑者の緊急逮捕後、逮捕状請求前に被疑者を釈放した場合にも逮捕状を請求しなければならない(犯罪捜査規範120条3項)。この定は逮捕状請求前に被疑者が逃走した場合にも妥当する

☆司法巡査により緊急逮捕された被疑者が、司法警察員に引致された後、逮捕状請求前に逃走してしまった場合であっても、司法警察員は、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない

※すでに勾留されている者が起訴された場合、勾留事実と同一の事実で引き続き勾留する場合には、特段の手続を必要とせず、公訴の提起があった日から当然に被告人としての勾留が開始される

280条

※公訴の提起があった後第1回公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う

※逮捕された被疑者でまだ勾留されていない者について204条又は205条の時間の制限内に公訴の提起があった場合には、裁判官は速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない

※検察官が司法警察職員から被疑者を受け取った後、205条1項及び2項の期間制限内に公訴提起した場合、身柄の措置を裁判官に委ねることになり(280条2項)、裁判官が同条により釈放を命じない限り、引き続き留置を続けることができる

少年法48条1項

勾留状は、やむを得ない場合でなければ少年に対して、これを発することはできない

☆少年の被疑者についても、勾留することができる

87条1項、207条1項

※勾留の理由又は必要性がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹請求により、決定をもって勾留を取り消さなければならない(87条1項)

※被告人の勾留の取消請求の規定は、被疑者の勾留にも準用される(207条1項)

勾留の取消請求は、起訴前でも起訴後でも認められる

☆勾留の取消しは、被疑者勾留及び被告人勾留のいずれについても認められる

☆勾留の必要がなくなったとき、検察官は、裁判所に対し、被告人の勾留の取消しを請求することができる

39条3項

※捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があったときは、被疑者と弁護人の接見の日時、場所等を指定することができる

☆検察官が弁護人に対して行う接見の日時の指定は、起訴前は認められているが、起訴後は認められていない

217条

30万円以下の罰金拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、現行犯逮捕が許される

☆30万円以下の罰金に当たる罪について、犯人の住居又は氏名が明らかであっても、犯人が逃亡するおそれがある場合は、現行犯逮捕することができる

☆裁判官は、30万円以下の罰金に当たる過失傷害罪を犯した被疑者甲について、罪証を隠滅をすると疑うに足りる相当の理由があると認める場合でも、住居があれば、勾留状を発することができない

207条1項、60条1項、3項 

※裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときで、刑事訴訟法60条1項各号に当たるときは、被疑者を勾留することができるが、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、住居不定の場合にのみ勾留することができる

202条、211条、216条

司法巡査逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに司法警察員引致しなければならない(202条)。そして、この規定は緊急逮捕の場合と現行犯逮捕の場合にも準用される(211条、216条)

☆司法巡査は、逮捕状により被疑者を逮捕したときだけでなく、現行犯逮捕したとき、又は緊急逮捕したときも、直ちにこれを司法警察員に引致しなければならない

214条

私人が現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない

88条1項

※勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる

☆勾留されている被告人やその弁護人のみならず、被告人の配偶者や直系の親族も、保釈の請求をすることができる

☆保釈の請求は、起訴前は認められていないが、起訴後は認められている

☆保釈は、被告人勾留にしか認められない

☆勾留されている被告人の配偶者は、被告人と独立して、裁判所に対し、被告人の保釈を請求することができる

89条

※保釈の請求があったときは、除外事由に該当しない限り、保釈を許さなければならない(権利保釈、必要的保釈)。殺人の公訴事実により勾留中の被告人は、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき」(89条1号)という除外事由に該当するので、89条による保釈は許されない

☆裁判所は、第一審の公判整理中に保釈の請求があったときは、刑事訴訟法89条各号所定の事由がある場合を除いて、保釈を許さなければならない

※裁判員法2条1項によると、裁判員裁判対象事件は、法定刑に死刑又は無期刑を含む事件と法定合議事件のうち故意の犯罪行為で人を死亡させた事件であり、刑事訴訟法89条1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に該当し、89条による権利保釈は認められないものの、90条の裁量保釈により保釈が認められる余地がある

344条

※禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった後は、権利保釈(必要的保釈)の規定の適用がないが、裁量保釈が認められる余地がある

90条

※殺人の公訴事実により勾留中の被告人であっても、裁判所が、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる(裁量保釈、任意的保釈

☆裁判所は、保釈の請求がない場合又は89条各号所定の事由がある場合でも、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができる

91条1項

※勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、被告人の請求により、又は職権で、決定を以て保釈を許さなければならない(義務的保釈

92条1項 

・裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない

60条1項柱書、280条1項 

被告人勾留裁判所(裁判官)の職権の発動のみであり、検察官に勾留請求権はない

検察官による勾留請求は被疑者勾留についてしか認められない

81条、207条1項

☆弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者以外の者との接見等の制限は、被疑者勾留及び被告人勾留のいずれについても認められる 

6 捜索・差押・検証 

218条3項

・身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するためには、被疑者を裸にしない限り、刑事訴訟法218条1項の令状によることを要しない

☆捜査機関が身体の拘束を受けている被疑者の顔写真を撮影するには、身体検査令状による必要はない

218条4項

・第1項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する

☆検察事務官は、捜査令状の発付を請求することができる

☆捜索令状の発付の請求を受けた裁判官は、犯罪の嫌疑及び証拠等の存在の蓋然性が認められる場合でも、必ずしも令状を発付しなければならないわけではない 

220条1項2号、3項

※検察官、検察事務官又は司法警察職員は、刑事訴訟法199条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場で差押え、捜索又は検証をすることができ、その場合、差押、捜索又は検証をするには、令状を必要としない

最決平8.1.29

・逮捕した被疑者の身体又は所持品の捜索、差押えについては、逮捕現場付近の状況に照らし、被疑者の名誉等を害し、被疑者らの抵抗による混乱を生じ、又は現場付近の交通を妨げるおそれがあるなどの事情のため、その場で直ちに捜索、差押えを実施することが適当でないときは、速やかに被疑者を捜索、差押えの実子に適する最寄りの場所まで連行した上でこれらの処分を実施することも、220条1項2号にいう「逮捕の現場」における捜索、差押と同視することができる

221条

※検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

※占有取得過程に強制の要素がないので、憲法35条の押収には当たらず、令状は必要でない

医師が死体を解剖するには、鑑定処分許可状の発付を受ける必要がある  

225条4項・168条6項、139条、172条

☆捜査機関からの鑑定の嘱託を受けた者は、鑑定処分許可状があっても、身体検査を拒否する者に対しては、直接強制として身体検査を行うことができない

222条1項本文・131条2項

☆捜査機関が女子の身体を検査する場合、医師又は成年の女子を立ち会わせなければならない 

最決平10.5.1(百選25)

・令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される

最決平6.9.16(百選32) 

・身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状(としての捜索差押許可状)の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができるものと解するのが相当である

・そのように解しないと、強制採尿令状の目的を達することができないだけでなく、このような場合に右令状を発布する裁判官は、連行の当否を含めて審査し、右令状を発布したものとみられるからである

☆捜査機関が人の着用している下着の中を捜索して物を差し押さえるためには、捜索際抑え許可状によれば足り、併せて身体検査令状の発付を受ける必要はない

☆最高裁判所の判例は、人の体内に存在する尿を導尿管(カテーテル)を用いて強制的に採取するには捜索差押令状によるべきものとしつつ、処分の性質にかんがみ、身体検査令状に関する規定を準用し、令状には適当と認められる条件の記載が不可欠だとしている。これに対しては、体内に存在する尿は生体の一部であって証拠物とはいえないという批判が考えられるが、最高裁判所は尿はいずれ体外に排出される老廃物であるということに着目したと考えることもできる。仮にそうであるとすれば採尿に関する最高裁判所の考え方は、体腔内に隠匿された証拠物を採取するという場合にはあてはまるとしても、体内を流れる血液を採取するという場合には当てはまらないことになる。もっとも、最高裁判所は、捜索差押え令上によるべき理由として、体内に存在する尿を証拠として強制的に採取する行為は捜索・差押えの性質を有するということを挙げており、この点を重視すれば、体腔内に隠匿された証拠物を採取するという場合はもちろん、体内を流れる血液を採取するという場合も、捜索差押令状によるべきものと考える余地もある。

113条

※法は、裁判所の行う捜索差押については、手続の公正を維持するため、被告人・弁護人の立会権を認める(113条1項本文)が、捜査機関が令状を得て行う捜索差押については、被疑者・弁護人等に立会権は認めていない

※113条2項は、裁判所の差押状又は捜索状の執行について、あらかじめ執行の日時及び場所を、執行に立ち会うことができる者に対して通知しなければならないと規定している。これに対して、司法警察職員等の捜査機関による捜索差押許可状に基づく捜索・差押えについて、222条1項は113条を準用していない

警察官が、裁判官により発せられた捜索許可状に基づき、被疑者方を捜索する場合、弁護人が立合いを求めることはできない

司法警察員は、捜索差押許可状により被疑者以外の者の住居を捜索するときは、あらかじめ、その者に執行の日時を通知する必要はない

※法は、被疑者・被告人の身柄確保を図る逮捕・勾留に関しては、令状を所持しないためこれを示すことができない場合であっても、「急速を要するとき」に、その執行を認める緊急執行の制度を設けている。ここに「急速を要するとき」とは、令状を入手するまで放置しておけば、被疑者・被告人の所在が不明となり令状の執行が著しく困難となるおそれがある場合をいう。これに対し、身柄確保を図るものではない捜索差押えについては、緊急執行を認める規定はない

最決昭29.7.15

・距離の如何に関わらず停止を求めるためにその後を追いかけることは事物自然の要求する通常の手段方法であって、客観的に妥当なものであると認むべくこれを目して強制又は強制的手段であるとは到底考えられないところであるし又同巡査が被告人の背後より「どうして逃げるのか」と言いながらその腕に手をかけたことも任意に停止をしない被告人を停止させるためには此の程度の実力行使に出ることは真にやむをえないことであって正当な職務執行上の手段方法であると認むるを相当とする。

宿泊を伴う取調べ(最決昭59.2.29、百選6) 

・任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、……強制手段によることができないというだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容されるものと解すべきである

・これを本件についてみるに、まず、被告人に対する当初の任意同行については、捜査の進展状況からみて被告人に対する容疑が強まっており、事案の性質、重大性等にもかんがみると、その段階で直接被告人から事情を聴き弁解を徴する必要性があったことは明らかであり、任意同行の手段・方法等の点において相当性を欠くところがあったものとは認め難く、また、右任意同行に引き続くその後の被告人に対する取調べ自体については、その際に暴行、強迫等被告人の供述の任意性に影響を及ぼすべき事跡があったものとは認め難い

強制採尿(最決昭55.10.23、百選31)

☆強制採尿令状については、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である

☆捜査機関が人の身体から直接強制として尿を採取するには身体検査令状による必要はなく、捜索差押許可状で足りる

※数人の警察官に身体を押さえつけられた状態で被告人の強制採尿を行った事案について、被告人が激しく抵抗していたことから、その身体を数人の警察官が押さえつけたとしても、その有形力は採尿の安全実施のために必要最小限度のものであり適法だとしている

222条1項、114条2項

※人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押許可状又は捜索許可状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらに代わるべき者立ち会わせなければならない

☆司法警察員は、捜索差押許可状により被疑者の住所を捜索するときは、被疑者の同居人であるが立ち会う場合であれば、被疑者をこれに立ち会わせる必要はない

☆司法警察員は、捜索差押許可状により被疑者以外の者が1人で居住しているアパートの居室を捜索するときに、その者を立ち会わせることができなければ、アパートの管理人を立ち会わせて捜索することができる

222条3項、116条

※夜間の令状の執行はその旨の令状の記載がない限り許されないのが原則である(116条1項)。しかし、日没前に捜索許可状又は差押許可状の執行に着手した場合、日没後でもその処分を継続することができる(116条2項)

☆司法警察職員は、捜索差押許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなくても、日没前に同許可状の執行に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる

219条1項

※捜索すべき場所に存在する物は、場所に対する捜索許可状により捜索することができる

☆司法警察員は、捜索すべき場所を会社事務所とする捜索差押許可状により同事務所を捜索するときは、同事務所にある金庫内を捜索することができる

※捜索令状には、被疑者の名前と罪名のほか、捜索すべき場所、身体又は物が明示されなければならない(219条1項)。しかし、逮捕状(200条1項)と異なり、捜索令状には犯罪事実の記載は要求されていない

☆捜索令状には、被疑事実の要旨を記載しなくてもよい

8 被疑者の防御

30条

※被告人又は被疑者は、いつでも弁護人を選任することができる(1項)

※被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる(2項)

☆被疑者は、自己の配偶者が弁護人を選任した場合にも、自ら弁護人を選任することができる

☆被告人又は被疑者の兄弟姉妹は、被告人又は被疑者の意思にかかわらず、弁護人を選任することができる

32条2項

※公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

☆被告人の国選弁護人の選任は、審級ごとにしなければならない

38条の2

裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。

国選弁護(最判昭54.7.24、百選A29)

国選弁護人は、裁判所が解任しない限りその地位を失うものではなく、したがって、国選弁護人が辞任の申出をした場合であっても、裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り弁護人の地位を失うものではない

☆国選弁護人は、辞任を申し出ても、裁判所又は裁判官が解任しない限り、弁護人の地位を失わない

刑事訴訟規則18条 

公訴提起後における弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を差し出してこれをしなければならない

第3章 公訴

2 公訴提起

60条2項本文

被告人の勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする

55条3項ただし書

※期間の末尾が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日に当たるときは、これを期間に算入しないことが原則である。ただし、時効期間については、この限りでない。

※公訴時効の制度が被告人の利益のために設けられたものであることから、公訴時効期間の満了日が、日曜日、土曜日、国民の休日に関する法律に規定する休日に当たるときであっても、これを期間に算入する

熊本水俣病事件(最決昭63.2.29、百選42)

・公訴時効の起算点に関する刑訴法253条1項にいう「犯罪行為」とは、刑法各本条所定の結果をも含む趣旨と解するのが相当である

☆結果犯について、実行行為が終了した日と結果が発生した日が異なる時、公訴時効は、結果発生時から進行する

254条2項

共犯者の1人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯者に対してその効力を有するが、この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める

☆共犯者の1人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する

最判昭41.4.21

☆一個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合の場合における公訴時効期間の算定については、数個の罪名を各別に論じることなく、これを一体として観察し、その最も重い罪の刑につき定められた時効期間による。

訴因変更と時効の停止(最決平18.11.20、百選A14)

☆検察官が、A事実を起訴した後、これと一罪の関係にあると判断してB事実を訴因に追加する旨訴因変更請求をし、裁判所もこれを許可したが、審理の結果、両事実は併合罪の関係にあることが判明し、裁判所は、同許可決定を取り消した。この場合でも、B事実について、訴因変更請求によって公訴時効の進行は停止する

338条3号

公訴の提起があった事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき、裁判所は判決で公訴を棄却しなければならない

271条1項

※裁判所は、公訴の提起があったときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない 

起訴状謄本の不送達と公訴時効(最決昭55.5.12、百選A13)

・刑訴法254条1項の規定は、起訴状の謄本が同法271条2項所定の期間内に被告人に送達されなかったため、同法339条1項1号の規定に従い決定で公訴が棄却される場合にも適用があり、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、右公訴棄却決定の確定したときから再びその進行を始めると解するのが相当である

起訴状の謄本公訴の提起があった日から2ヶ月以内被告人に送達されなかったため、公訴が棄却された場合、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、公訴棄却の判決が確定したときから再びその進行を始める

271条2項

起訴状の謄本が公訴の提起があった日から2ヶ月以内に被告人に送達されなかったため、公訴が棄却され、その裁判が確定したとき、検察官は、同一事件について更に公訴を提起することができる

249条

・公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない

248条

・検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる 

☆刑事訴訟法248条の定める「起訴便宜主義」は、検察官の訴追裁量権限を認めるものであるが、起訴便宜主義にも例外が有り、少年法20条の規定により家庭裁判所が刑事処分を相当と認めて検察官に送致した少年の事件については、検察官は原則として起訴しなければならないと定められている

257条

☆検察官は、第一審の判決があるまで公訴を取り消すことができる

260条

※検察官は、告訴、告発又は請求のあった事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない 

250条

・時効は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)については、次に掲げる期間を経過することによって完成する(1項柱書)

・事項は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによって完成する(2項柱書)

※「人を死亡させた罪」であって、「死刑に当たるもの」は公訴時効が完成しない

☆公訴時効が完成する期間は、法定刑の軽重による差異が設けられている

461条の2第1項

検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければならない

465条1項、2項前段

※略式命令を受けた被告人又は検察官は、その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる

4 起訴状の記載 

256条5項

※数個の訴因又は罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる

☆公訴事実は、数個の訴因を択一的に記載することが許される

☆本位的訴因と併合罪の関係にある事実を予備的訴因とすることは許されない

☆起訴状に3個以上の訴因を予備的に記載することも許される

☆罰条を予備的又は択一的に記載することも許される

256条6項、規則289条

※起訴状には、裁判官に予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはならないとされている(起訴状一本主義、256条6項)

※略式請求手続では、必要な書類及び証拠物も裁判所に差し出さなければならず(289条)、いわゆる起訴状一本主義は適用がない

※訴因の予備的記載がなされている場合には、主たる訴因が認定できれば、予備的訴因を審判する必要はない 

第4章 公判の手続

316条の2第1項

☆裁判所は、裁判員裁判の対象事件ではない事件についても、必要があると認めるときは、公判前整理手続に付することができる。

☆裁判所は、公判前整理手続において、弁護人から、被告人の自白調書につきその自白の任意性を争う旨の意見が述べられた場合であっても、公判前整理手続の終結までに当該自白調書の証拠能力を判断する必要はない

☆検察官は、公判前整理手続における証拠開示に関する裁判所の決定に対して、不服申立てをすることができる

316条の32

☆裁判所は、公判前整理手続に付された事件の公判において、検察官、被告人及び弁護人が公判前整理手続において取調べを請求しなかった証拠について、やむを得ない事由によって請求できなかった場合でなくても、必要と認めるときは、職権で証拠調べをすることができる。

☆裁判所は、事件を公判前整理手続に付し、同手続を終結させて公判を開始した後であっても、期日間整理手続に付することができる 

419条

※即時抗告は、刑事訴訟法に個別に明文の規定がある場合に限り許される

弁護人は、訴因変更を許可する裁判所の決定に対し、即時抗告をすることができない

316条の9第1項

被告人は、公判前整理手続期日に出頭する権利を有するが、出頭の義務を負わない

☆被告人は、公判前整理手続期日への出頭が義務付けられていない

☆公判前整理手続期日には、被告人は、裁判所の許可がなくても出頭することができる

316条の21第1項

検察官は、証明予定事実を記載した書面を提出した後、その内容を追加・変更することができる

弁護人は、検察官請求証拠の開示を受けた後、検察官に対し、それ以外の証拠の標目を記載した一覧表の交付を請求する権利有しない 

316条の31第1項

☆公判前整理手続に付された事件については、裁判所は、公判期日において、公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない 

316条の29

公判前整理手続に付された事件を審理する場合には、刑事訴訟法289条1項に規定する必要的弁護事件に該当しないときであっても、弁護人がなければ開廷することはできない 

316条の4第1項

※公判前整理手続は、被告人に弁護人がいなければ行うことはできない(必要的弁護制度

☆裁判所は、被告人に弁護人がなければ公判前整理手続を行うことができない 

316条の5第2号

公判前整理手続においては、裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回若しくは変更許すことができる

316条の5第7号

※裁判所は、証拠の採用決定又は証拠調請求の却下決定をすることができる

☆裁判所は、証拠調べをする決定をすることができる

316条の13第1項前段

※検察官は証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない

☆検察官が、証明予定事実を記載した書面について、裁判所への提出を免除されることはない

316条の18

※被告人又は弁護人は、刑事訴訟法316条の17第2項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、開示しなければならない

被告人又は弁護人は、取調べを請求した証拠について、検察官に対し、開示する必要がある

2 公判手続の流れ

公判前整理手続の流れ

(1)公判前整理手続に付する旨の決定(316条の2第1項)

(2)検察官による証明予定事実記載書面の提出・証拠調べ請求(316条の13第1項、第2項)

(3)検察官請求証拠の開示(316条の14)

(4)被告人又は弁護人による類型証拠の開示請求・検察官による類型証拠開示(316条の15)

(5)被告人又は弁護人による検察官請求証拠に対する意見表明(316条の16)、事実上・法律上の主張の明示証拠調べ請求(316条の17)、請求証拠の開示(316条の18)

(6)検察官による被告人側請求証拠に対する意見表明(316条の19第1項)、被告人側による主張関連証拠の開示請求及び検察官による主張関連証拠の開示(316条の20)

(7)証明予定事実の追加・変更の明示、追加証拠調べ請求等(316条の21、316条の22)

(8)公判前整理手続の終了、事件の争点及び証拠の整理の結果の確認(316条の24)

刑事事件の通常の第一審公判手続 

①冒頭手続

人定質問(規則196条)

 ↓

起訴状朗読(291条1項)

 ↓

黙秘権等の告知(291条3項、規則197条)

 ↓

被告人・弁護人の陳述(291条3項)

②証拠調べ

検察官の冒頭陳述(292条、296条)

③弁論

弁護人の弁論(293条2項)

④判決 

規則196条

※裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先立ち、被告人に対し、その人違いでないことを確かめるに足りる事項を問わなければならない(人定質問)

※人定質問の方式については、法文上定まったものはないが、実務では起訴状に記載された氏名、年齢、職業、住居、本籍を逐次質問するのが敢行であるとされている

※公判期日における実質的な審理は、起訴状の朗読で始まるが、裁判長はこれに先立ち、被告人として出頭している者が起訴状に表示された者と同一人であるかを確かめるため一定事項を問わなければならない

291条1項

※検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。

※起訴状は必ず朗読することを要し、省略することや、要旨の告知で替えることは許されない

291条3項、規則197条1項

※裁判長は、起訴状の朗読が終わった後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。そしてこのとき、裁判長は、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない 

☆被告人および弁護人の被告事件についての陳述は、陳述の機会を与えれば足り、被告人が現実にその機会を利用せず、陳述をしないときは、実際にその陳述は聴く必要はない

316条の34第1項

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、裁判員裁判の対象事件において、公判前整理手続期日に出席することができない

316条の33以下

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、情状に関する事項についても、証拠調べを請求することはできない

316条の36第1項

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、裁判所が申出を相当と認めるときは、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、その証人を尋問することができる

316条の38第1項 

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、裁判所が申出を相当と認めるときは、訴因として特定された事実の範囲内で事実及び法律の適用について意見を陳述することができる

351条、355条

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、上訴をすることができない 

286条の2 

・被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる

☆証人尋問が予定された公判期日に、勾留されている被告人が、召喚を受け、正当な理由がないのに出頭を拒否し、引致しようとする刑事施設職員に暴力を振るって出頭しないときは、裁判所は、被告人が出頭しないまま、その公判期日において証人尋問を行うことができる

規則206条

※異議の申立について決定があったときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。

☆弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて、裁判所が決定で棄却したのに対し、弁護人は、その判断に不服があるときでも、重ねて異議を申し立てることはできない

最判昭30.1.11

・被告人が弁護人を選任するのは主として公判における弁論のためであり、公判の審理においてよく攻撃防御の方法が尽くされ弁論が終結した後の期日であるから、弁護人にその期日を通知して出頭の機会を供するかぎり、必ずしもその立会を要するものと解しなくとも被告人の権利保護に欠けるところはない

☆被告人に弁護人があるとき、判決宣告を行うための公判期日に弁護人が出頭しなくても、裁判所は、判決を宣告することができる

298条1項

検察官被告人又は弁護人は、証拠調べ請求をすることができる

規則190条2項

※証拠調べ請求に基づく場合に、証拠調べの決定をするについては相手方又はその弁護人の意見を聴かなければならない

☆同一事件の共犯者である甲と乙が、共同被告人として併合審理を受けている場合、検察官が、乙のためにのみその供述録取書の証拠調べを請求したとき、甲又は甲の弁護人は、これに対して意見を述べる権利はない

296条本文

☆検察官は、証拠調べのはじめに、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない

316条の30 

※公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、刑事訴訟法296条の冒頭陳述に引き続き、これを明らかにしなければならない

公判前整理手続に付された事件について、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、検察官の冒頭陳述に引き続き必ず冒頭陳述をしなければならない

309条1項

※検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べに関し異議を申し立てることができる 

☆検察官、被告人又は弁護人は、裁判所による証拠調べの決定に対し、適法に異議を申し立てることができる

43条3項

※決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調べをすることができる

☆裁判所は、保釈請求に対して許可又は却下の決定をするに当たり、公判期日において証拠として取調べていない資料に基づいて判断することができる

420条

・裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない(1項)

・前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない(2項)

検察官は、保釈を許可する裁判所の決定に対し、適法に抗告をすることができる

43条2項

※決定又は命令は、口頭弁論に基づいてこれをすることを要しない

☆裁判所は、決定をもって公訴を棄却する場合、口頭弁論に基づく必要はない 

293条1項

※検察官は、証拠調べが終わった後、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない(論告)

検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、被告人が無罪である旨の陳述をすることができる

293条2項

※被告人及び弁護人は、(証拠調べが終わった後)意見を陳述することができる(弁論) 

☆弁護人は、証拠調べが終わった後の意見の陳述において、被告人の量刑について、具体的な刑の内容を陳述することも許される

356条

※被告人の法定代理人・保佐人、勾留理由開示請求者、原審の代理人・弁護人による上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない

☆弁護人は、被告人の明示した意思に反して、被告人のために上訴をすることができない 

規則199条の3第3項2号

※主尋問においては誘導尋問をしてはならない。ただし、訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するときはこの限りでない

規則199条の3第3項6号

証人前の供述と相反するか又は実質的に異なる供述をした場合において、その供述した事項に関する誘導尋問は、例外的に許される

規則199条の10第1項

※訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる

321条1項2号

検察官の面前における供述を録取した書面については、公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述をした場合で、公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特段の情況の存する時でなければ、証拠能力を有しない 

32条1項

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する

☆被疑者の国選弁護人が公訴提起後に保釈の請求をするために、公訴提起後に改めて第一審の弁護人として選任される必要はない

280条1項、規則187条1項

※公訴の提起があった後第一回の公判期日までの勾留に関する処分は、公訴の提起を受けた裁判所の裁判官がこれをしなければならない。ただし、事件の審判に関与すべき裁判官は、その処分をすることができない

93条

 ※保釈を許す場合には、補償金額を定めなければならない

☆裁判所は、犯罪の性質や情状がどうであれ、補償金額を定めずに保釈を許可することはできない

94条1項

※保釈を許す決定は、保証金の納付があった後でなければ、これを執行することができない

☆保釈が許可されても、保証金(又はこれに代えることを許された有価証券、保証書)が納付されなければ、被告人は釈放されない

96条1項

☆裁判所は、検察官の請求がなくとも、職権で保釈を取り消すことができる

保釈中に被告人が他の罪を犯したことは保釈の取消事由とされていない 

 

311条2項、3項

※被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、いつでも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、被告人の供述を求めることができる

検察官の立証が終了する前であっても、被告人質問を実施することができる

被告人甲の弁護人は、裁判長に告げて共同審理を受けている被告人乙の供述を求めることができるが、共同被告人甲が乙の供述を求めることもできる

☆被告人Aの弁護人だけでなく、共同被告人Bの弁護人も、被告人Aに対し、その供述を求めるための質問をすることができる

※被告人質問は、狭義の証拠調べ、すなわち、証人尋問(刑事訴訟法304条)と異なることから、証人尋問の場合に要求されている証拠調べの請求(298条1項)や証拠決定(規則190条1項)は必要とされていない

被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない

被告人質問を開始するに当たっては、あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめる必要はない 

被告人質問において、弁護人の質問と検察官の質問の順番が決められているわけではない

☆当事者の質問終了後、裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても、訴訟手続の法令違反の問題は生じない 

※少年に対する公訴提起には、その事件が少年法42条により家庭裁判所に送致され、さらに少年法20条により家庭裁判所から検察官送致(逆送)されることが必要であるから(少年法45条5号本文)、これらの手続を経ないで起訴された場合には、手続違背として公訴棄却の判決がなされる(刑事訴訟法338条4号)。

裁判所は、少年であることが判明した被告人について、決定をもって、事件を家庭裁判所に移送することはできない

335条1項

※有罪の言渡しをするには、罪となるべき事実証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない

☆裁判所は、被告人につき、有罪の言渡をするには、罪となるべき事実のみならず、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない

342条

※判決は、公判廷において、宣告により告知される。

判決は、必ず公判廷において宣告しなければならず、例外は存しない 

抽象的防御説

※訴因事実中に含まれている事実を認定する場合は、被告人に新たな防御の機会を与える必要がなく、防御に実質的な不利益を生じないから、訴因変更は必要ではないと解する立場

※当初の訴因に掲げられた事実の一部分を認定する場合には、該当する構成要件が異なることになっても、訴因の変更は不要である

336条

※被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡しをしなければならない

☆裁判所は、被告人につき、無罪の言渡しをする場合には、決定ではなく、判決でしなければならない 

4 訴因の変更

訴因変更の要否−共同正犯の実行行為者(最決平13.4.11、百選45)

☆殺人罪の共同正犯の訴因としては、その実行行為者がだれであるかが明示されていないからと行って、それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから、訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても、審判対象の確定という見地からは、訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ、実行行為者がだれであるかは、一般的に、被告人の防御にとって重要な自己であるから、当該訴因の成否について争いがある場合等においては、争点の明確化などのため、検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ、検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上、判決においてそれと実質的に異なる認定をするには、原則として、訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら、実行行為者の明示は、前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから、少なくとも、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。

312条1項

 

※裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない

審理の途中予備的訴因を追加することも許される

☆検察官は、第1回の公判期日の前であっても、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因の追加、撤回又は変更を裁判所に請求することができる

罰条変更の要否(最決昭53.2.16、百選A20)

・裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防御に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで起訴状に記載されていない罰条であってもこれを適用することができるものというべきである

・起訴状における罰条の記載は、訴因をより一層特定させて被告人の防御に遺憾のないようにするため法律上要請されているものであり、裁判所による法令の適用をその範囲内に拘束するためのものではないと解すべきである

最決平14.7.18(重判平14刑訴4)

・「被告人は、単独又はB及びCと共謀の上、平成9年9月30日午後8時30分ころ、福岡市中央区所在のビジネス旅館A2階7号室において、被害者に対し、その頭部等に手段不明の暴行を加え、頭蓋冠、頭蓋底骨折等の傷害を負わせ、よって、そのころ、同所において、頭蓋冠、頭蓋底骨折に基づく外傷性脳障害又は何らかの障害により死亡させた」という訴因

・被害者に致死的な暴行が加えられたことは明らかであるものの、暴行態様や傷害の内容、死因等については十分な供述等が得られず、不明瞭な領域が残っていたというのである。そうすると、第1次的予備的訴因は、暴行態様、傷害の内容、死因等の表示が概括的なものであるにとどまるが、検察官において、当時の証拠に基づき、できる限り日時、場所、方法等をもって傷害致死の罪となるべき事実を特定して訴因を明示したものと認められるから、訴因の特定に欠けるところはないというべきである 

最決平21.7.21

・検察官において共謀共同正犯者の存在に言及することなく、被告人が当該犯罪を行ったとの訴因で公訴を提起した場合において、被告人1人の行為により犯罪構成要件のすべてが満たされたと認められるときは……、裁判所は訴因どおりに犯罪事実を認定することが許されると解するのが相当である

☆検察官において、共謀共同正犯者の存在に言及することなく、被告人が1人で自動二輪車を摂取したという窃盗の訴因で公訴を提起した場合、裁判所が、証拠上、他に実行行為を行っていない共謀共同正犯者が存在するとの心証を得たとしても被告人1人の行為により犯罪構成要件の全てが満たされたと認めるときは、訴因通りの犯罪事実を認定することができる

312条4項

※裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない

☆裁判所は、訴因の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない

最判昭33.6.24

・本件犯罪の外形的事実は全く同一であって、これについてどの程度の範囲が合ったと認定するかによって、強盗殺人の共同正犯とも、殺人のほう助ともなる事案である。そして原審の認定は訴因よりも遥かに被告人に有利であり、その防御を害したものとは認められない

☆I市内の路上において、甲が金品強取の目的でVを殺害しようとその首を締めている時、これに加功することにして自己が着用していたベルトを後に手交してV殺害の目的を達成させたという被告人に対する強盗殺人罪の共同正犯を同日同所における上記ベルトの趣向による殺人罪の幇助犯にする場合、訴因変更を必要としない

最大判昭40.4.28(百選A23)

・共同正犯を認めるためには、幇助の訴因には含まれていない共謀の事実を新たに認定しなければならず、また法定刑も重くなる場合であるから、被告人の防御権に影響を及ぼすことは明らかであって、当然訴因変更を要するものと言わなければならない

☆「乙が公務員Aに賄賂を供与した際、これを幇助した。」という贈賄幇助の訴因で起訴された甲について、「乙と共謀の上、公務員Aに賄賂を供与した」という贈賄の共同正犯の事実を認定するには、訴因変更の手続を要する

☆I市内の被告人方において、甲が乙ら4名に対して現金各5万円を供与した際、その事情を知りながら甲を被告人方まで案内したほか乙ら4名に対し、儒教世を促す等の行為をしたという被告人に対する公職選挙法違反の幇助犯を、同日同所における甲との同法違反の共同正犯にする場合、訴因変更を必要とする

最大判昭26.6.15

・元来、訴因又は罰条の変更につき、一定の手続が要請される所以は、裁判所が勝手に、訴因又は罰条を異にした事実を認定することに因って、被告人に不当な不意打ちを加え、その防御権の行使を徒労に終わらしめることを防止するにあるから、かかるおそれのない場合、例えば、強盗の基礎に対し恐喝を認定する場合の如く、裁判所がその太陽及び限度において訴因たる事実よりもいわば縮小された事実を認定するについては、敢えて訴因罰条の変更手続きを経る必要がないものと解するのが相当である

☆「Aを脅迫して現金を強取した」という剛種の訴因で起訴された甲について、脅迫が相手方の犯行を抑圧するほど強度ではなかったことを理由に「Aを脅迫して現金を交付させた」という恐喝の事実を認定するには、訴因変更の手続を経る必要はない

最決昭53.3.6(百選46①)

・収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂との間に事実上の共通性がある場合には、両立しない関係にあり、かつ、一連の同一事象に対する法的評価を異にするに過ぎない

☆「甲は、公務員乙と共謀の上、乙の職務上の行為に対する謝礼の趣旨で、丙から賄賂を収受した」という収賄の訴因を、「甲は、丙と共謀の上、公務員乙の職務上の行為に対する謝礼の趣旨で、乙に対して賄賂を供与した」という贈賄の訴因に変更することは、収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂が同一である場合、公訴事実の同一性が認められ、許される

最判昭29.8.20

・本件起訴状記載の公訴事実には、原判決の認定したような「飲食店B方」において「右B及び同店の客D他2名の面前において」という本件行為の公然性を認めるに足る事実は何ら記載されていないばかりでなく、起訴状記載の罪名及び罰条に徴しても、原判決の認定したような公然わいせつの点は本件においては訴因として記載されなかったものと解するのが相当である。なお、記録を精査しても、本件において訴因又は罰条につき追加変更の手続が適法になされたと読むべき資料はない。して見れば、原判決は結局、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものと言わなければならない

☆I市内の路上で寄託中の女性を追尾し、同女が逃げんこんだ甲方において、仰向けに押し倒し馬乗りになって陰部をもてあそんだという被告人に対する強制わいせつ罪を、同日同所における甲他3名らの面前での上記行為として公然わいせつ罪にする場合、訴因変更を必要とする

最決昭30.10.19

☆I市内の路上において、甲と共同して実行した足蹴等によりBに傷害を負わせたという被告人に対する傷害罪の共同正犯を、同日同所における被告人が単独で実行した足蹴による暴行罪にする場合、訴因変更を必要としない

最判昭33.2.21

・窃盗のほう助をした者が、正犯の盗取した財物を、その贓物たるの情を知りながら買い受けた場合においては、窃盗ほう助のほか贓物故買罪が別個に成立し両者は併合罪の関係にあるものと解すべきであるから、右窃盗ほう助と贓物故買の各事実はその間に公訴事実の同一性を欠くものといわねばならない。そして本件における本位的訴因、予備的訴因の両事実も、右説明のように、本来併合罪の関係にある別個の事実であり従って公訴事実の同一性を欠くものであるから、贓物故買の事実を予備的訴因として追加することは許容されないところといわねばならない

☆I市内の被告人方において、同市内の倉庫からウィスキー瓶10ダースを窃取するのに必要だと甲から頼まれて被告人所有の大型貨物自動車を貸与して甲の犯行を容易にしたという被告人に対する窃盗罪の幇助犯を、同日同所において盗品であることを知りながら甲からウィスキー10ダースを買い受けたという盗品等有償譲受け罪にする場合、訴因変更は許されない

最決昭31.11.9

・その基本的事実関係は、まさに彼此、同一であるということができる。

・その基本的事実関係において同一性を失わないと判断して第一審の訴訟手続を是認したのは正当である

☆財団法人の外務員として賛助金集金の事務に従事していた平成16年2月14日から同年3月31日までの間、15回にわたって集金した現金1,500万円を着服横領したという被告人に対する業務上横領罪を、平成16年1月31日まで上記賛助金集金の事務に従事していたが同日付で解雇されたのに従前同様の地位にあるごとく装って上記期間15回にわたって賛助金名下に上記現金を詐取したという詐欺罪にする場合、訴因変更は許される

5 簡易な手続

350条の2第1項

※検察官が即決裁判の申立てをなしえる場合は、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮して相当と認められる場合である。ただし、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、即決裁判手続の申立ては認められない

☆検察官は、公訴を提起しようとする強盗について、即決裁判手続の申立てをすることができない

350条の2第2項

即決裁判手続の申立ての要件として、被疑者の同意を要求している

☆検察官は、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、即決裁判手続の申立てをすることができない

350条の9

即決裁判手続による公判期日は、被告人に弁護士がないときは、開くことができない

350条の14

☆裁判所が即決裁判手続において被告人に懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の執行猶予の言渡しをしなければならない

403条の2

※即決裁判手続においてされた判決については、罪となるべき事実についての事実誤認を理由とする控訴をすることができない

☆ 即決裁判手続においてされた判決に対しては、罪となるべき事実の事実誤認以外の理由による控訴の申立てをすることができる

第5章 証拠法

私人作成の燃焼実験報告書(最決平20.8.27、百選84)

通算約20年間火災原因の調査・判定に携わった経験のある私人が、燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面については、321条4項の書面(鑑定書)に準ずるものとして同項により証拠能力を有する

・321条3項所定の書面(検証の結果を記載した書面)の作成主体は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員」とされているのであり、かかる規定の文言及びその趣旨に照らすならば、本件報告書抄本のような私人作成の書面に同項を準用することはできない

・作成者は、火災原因の調査、判定に関して特別の学識経験を有するものであり、本件報告書抄本は、同人が、かかる学識経験に基づいて燃焼実験を行い、その考察結果を報告したものであって、かつ、その作成の真正についても立証されていると認められる

最判昭32.7.25

医師の作成した診断書には正規の鑑定人の作成した書面に関する刑訴法321条4項準用される

最判昭47.6.2

酒酔い鑑識カードのうち被疑者との問答の記載のある欄は、同巡査が所定の項目につき質問をしてこれに対しる被疑者の応答を簡単に記載したものであり、必ずしも検証の結果を記載したものということはできず、……同巡査作成の捜査報告書たる性質のものとして、刑訴法321条1項3号の書面に当たる

☆本件「化学判定」欄は、甲警察署巡査Aが被疑者の呼気を通した飲酒検知管の着色度を観察して比色表と対照した検査結果を検知管の示度として記入したものであり、また、被疑者の外部的状態に関する記載のある欄は、同巡査が被疑者の言語、動作、酒臭、外貌、態度等の外部的状態に関する所定の項目につき観察した結果を所定の標語に印を付ける方法によって記入したものであって、本件「酒酔い・酒気帯び鑑識カード」のうち以上の部分は、同巡査が、被疑者の酒酔いの程度を判断するための資料として、被疑者の状態につき前記のような検査、観察により認識した結果を記載したものであるから、紙面下段の調査の日時の記載、同巡査の記名押印とあいまって、刑事訴訟法321条3項にいう「検証の結果を記載した書面」に当たるものと解するのが相当である。(中略)「外観による判定」欄の記載は、同巡査が被疑者の外部的状態を観察した結果を記載したものであるから、検証の結果を記載したものと認められる。

※直接証拠とは、要証事実を直接証明するのに用いる証拠をいう。犯行目撃証人の供述、犯罪被害者の供述、被告人の自白などがその具体例である。他方、直接証拠以外の証拠を間接証拠という。これは、要証事実を直接に証明するのではなく、その存否を推認させる事実(間接事実)を証明するのに用いられる証拠である。犯行現場に残された犯人の指紋などである。 

2 証拠と証明

333条1項

※被告事件について犯罪の証明があったときは、334条(被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない)の場合を除いては、判決で刑の言渡しをしなければならない

☆裁判所は、被告事件について犯罪の証明があったときは、同事件について刑を免除する時を除き、判決で刑の言渡をしなければならない

証明の程度(最決平19.10.16、百選60)

・合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨である

・このことは、直接証拠によって事実認定をすべき場合と、状況証拠によって事実認定をすべき場合とで、何ら異なるところはない

☆刑事裁判の有罪認定に当たって必要とされる「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」とは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨である

☆状況証拠により事実認定を行う場合も、直接証拠により事実認定を行う場合も、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする

略式手続においても、証拠により合理的な疑いを差し挟まない程度に有罪の立証を行う必要がある

318条、裁判員法62条

証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねられている(318条)

☆裁判官が、証人の証言の信用性を判断する際には、その証人の公判廷での供述態度を考慮することができる

☆裁判官が、経験則に反する心証を形成した上で事実を認定することは許されない

※裁判員の関与する判断に関しても、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断に委ねられる(裁判員法62条)

☆裁判員の参加する刑事裁判において、裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる 

326条1項

検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの状況を考慮し相当と認める時に限り、刑事訴訟法321条から325条までの規定にかかわらず、これを証拠とすることができる 

38条3項

※有罪とするには、自白のほかに他の証拠を必要とする

☆憲法第38条第3項の「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」という規定は、自白の証明力に対する自由心証を制限したものである

最決昭58.9.13

・被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所に委ねられるべき問題であることはもとより、その前提となる生物学的、心理学的要素についても、右法律判断との関係で究極的には裁判所の評価に委ねられるべき問題である 

最判昭25.11.21

※黙秘権を告知しなかったからといって直ちに供述が任意性を失うことにはならない

4 被告人以外の供述 

規則208条1項

・裁判長は、必要と認めるときは、訴訟関係人に対し、釈明を求め、又は立証を促すことができる

※釈明を受けた相手方は釈明に応ずる義務を負う

※実況見分調書の作成主体には専門性を有する特別の知識経験が要求されない 

実況見分調書は、実況見分を行い調書を作成した者が、公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときに限り、証拠能力が認められる

規則210条

※裁判所は、被告人の防御が互いに相反する等の事由があって被告人の権利を保護するため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護士の請求により又は職権で、決定をもって、弁論を分離しなければならない

※単に共同被告人の主張が互いに相反するだけでは、必ずしもその権利を保護するために分離する必要はなく、裁判所が実質的判断によって決すべきである

※各被告人に対する訴訟手続は被告人ごとに別個に存在し、一方の被告人との関係で取り調べられた証拠が当然に他方の被告人との関係でも証拠になるわけではない。また、関連性が存在しない場合、証拠能力が認められず、証拠として採用することができない

罪となるべき事実(最大判昭33.5.28、百選A43)

・共犯者の自白をいわゆる「本人の自白」と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない

・共同審理を受けていない単なる共犯者はもちろん、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であっても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であって、被害者その他の純然たる証人とその本質を異にするものではない

共犯者の供述に第三者の供述と同様の証拠能力を認め、補強証拠は必要でないとする

規則190条2項

証拠調べ又は証拠調べの請求の却下の決定をするについては、証拠調べの請求に基づく場合は、相手方又はその弁護人の意見を聴かなければならない

☆当事者の一方が鑑定を請求した場合、裁判所が鑑定を決定するについては、相手方又はその弁護人に意見を述べる機会を与えなければならない 

171条

※証人尋問の規定は、勾引に関する規定を除いて、鑑定人についてこれを準用する

☆裁判所は、選任した鑑定人の尋問を行うための召喚に当該鑑定人が応じないときでも勾引することはできない

166条、規則128条1項

※鑑定人には、宣誓をさせなければならず(166条)、その宣誓は鑑定をする前にさせなければならない(規則128条1項)

鑑定人には、鑑定をする前に、宣誓をさせなければならない

規則129条1項

※鑑定の経過及び結果は、鑑定人に鑑定書により又は口頭でこれを報告させなければならない

☆鑑定人に鑑定の経過及び結果を報告させるに当たっては、鑑定書により報告させる方法のほか、口頭で報告させる方法も認められている 

174条

※特別の知識によって知り得た過去の事実に関する尋問については、鑑定の規定によらないで、証人尋問の規定を適用する

☆鑑定人作成の鑑定書を取り調べた後、鑑定の過程について説明を求めるため、当該鑑定人を証人として尋問することができる

実況見分調書(最決昭35.9.8、百選A39)

☆刑訴法321条3項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する

警察犬による臭気選別(最決昭62.3.3、百選70)

・選別につき専門的な知識と経験を有する指導手が、臭気選別能力が優れ、選別時において体調等も良好でその能力がよく保持されている警察犬を使用して実施したものであるとともに、臭気の採取、保管の過程や臭気選別の方法に不適切な点のないことが認められる(場合において、臭気選別の結果を有罪認定の用に供しうる)

・右の各臭気選別の経過及び結果を記載した本件各報告書は、右選別に立ち会った司法警察員らが臭気選別の経過と結果を正確に記載したものであることが、右司法警察員らの証言によって明らかであるから、刑訴法321条3項により証拠能力が付与される

☆警察犬による臭気選別の経過及び結果を記載した報告書は、選別に立ち会った司法警察員が臭気選別の経過と結果を正確に記載したものであることを証言によって明らかにすれば、同条第3項により証拠能力を付与される 

犯行状況等の再現結果を記録した実況見分調書(最決平17.9.27、百選86)

・刑訴法326条の同意(検察官及び被告人の同意)が得られない場合には、同法321条3項所定の要件(真正作成証言)を満たす必要があることはもとより、再現者の供述の録取部分及び写真については、再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号(供述不能(+特信状況)、相反供述又は実質的不一致供述・相対的特信状況)ないし3号(供述不能、不可欠性、絶対的特信状況)所定の、被告人である場合には同法322条1項所定の要件(不利益事実の承認・任意性、絶対的特信状況)を満たす必要があるというべきである。もっとも、写真については、撮影、現像等の記録の過程が機械的操作によってなされることから前記各要件のうち再現者の記名押印は不要と解される 

鑑定受託者による鑑定書(最判昭28.10.15、百選A40)

・捜査機関の嘱託に基づく鑑定書(刑訴223条)には、裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する刑訴321条4項を準用すべきものである

捜査機関の嘱託に基づき作成された鑑定書には、裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する刑訴法321条4項が準用される

304条の2

☆証人の供述中に被告人を退廷させた場合には、証人の供述が終了した後、被告人に証言の要旨を告知しなければならない

第6章 実体判決と形式裁判

第7章 上訴

☆刑訴法は控訴審の性格を原則として事後審としており、控訴審は、第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく、当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし、これに事後的な審査を加えるべきものである。第一審において、直接主義・口頭主義の原則が採られ、争点に関する証人を直接調べ、その際の証言態度等も踏まえて供述の信用性が判断され、それらを総合して事実認定が行われることが予定されていることに鑑みると、控訴審における事実誤認の審査は、第一審判決が行った証拠の信用性評価や証拠の総合判断が論理則、経験則等に照らして不合理といえるかという観点から行うべきものであって、刑訴法382条の事実誤認とは、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であるということをいうものと解するのが相当である。したがって、控訴審が第一審判決に事実誤認があるというためには、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要であるというべきである

2 控訴

373条

☆控訴の提起期間は、14日とする 

393条2項

※控訴裁判所は、量刑に影響を及ぼす情状については、第一審判決後の事実についても、職権で取り調べることができる

裁判所法16条1項

※高等裁判所が、簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴について裁判権を有する

簡易裁判所がした刑事第一審の判決に対する控訴については、地方裁判所ではなく、高等裁判所が裁判権を有する

最判昭23.11.18

※控訴審判決が一審判決の認定した事実よりも不利益な事実を認定をしても刑を不利益に変更しない限り刑事訴訟法402条に反しない。

※同条の趣旨が、判決主文、すなわち判決の結果を原判決の結果に比して被告人の不利益に変更することを禁ずる点にある

☆控訴裁判所は、被告人のみが控訴をした事件について、原判決の認定した事実に誤認があると認める場合には、それより被告人に不利益な事実を認定することができる場合もある

388条

控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。

☆控訴審では、被告人は、公判期日において、控訴趣意書に基づき自ら弁論をすることができない

☆控訴審では、被告人自身が弁論をすることはできず、控訴趣意書を被告人が差し出した場合でも、それに基づく弁論は弁護人が行う

355条

※原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる

新島ミサイル事件(最大決昭46.3.24)

☆第一審判決がその理由中において無罪の判断を示した点は、牽連犯ないし包括一罪として起訴された事実の一部なのであるから、右第一審判決に対する公訴提起の効力は、それが被告人からだけの控訴であっても、公訴事実の全部に及び、右の無罪部分を含めたそのすべてが控訴審に移審係属すると解すべきである。そうとすれば、控訴裁判所は右起訴事実の全部の範囲にわたって職権調査を加えることが可能であるとみられないでもない。しかしながら、控訴審が第一審判決について職権調査をするにあたり、いかなる限度においてその職権を行使すべきかについては、さらに慎重な検討を要するところである。いうまでもなく、現行刑訴法においては、いわゆる当事者主義が基本原則とされ、職権主義はその補充的、後見的なものとされているのである。当事者主義の表れとして、現行法は訴因制度をとり、検察官が公訴を提起するには公訴事実を記載した起訴状を裁判所に提出しなければならず、公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならないこととし、この訴因につき、当事者の攻撃防御をなさしめるものとしている。(中略)このように、審判の対象設定を原則として当事者の手に委ね、被告人に対する不意打を防止し、当事者の構成な訴訟活動を期待した第一審の訴訟構造の上に立って、刑事訴訟法はさらに控訴審の正確を原則として事後審たるべきものとしている。すなわち、控訴審は、第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく、前記のような当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし、これに事後的な審査を加えるべきものなのである。そして、その事後審査も当事者の申し立てた控訴趣意を中心としてこれをなすのが建前であって、職権調査はあくまで補充的なものとして理解されなければならない。けだし、前記の第一審における当事者主義と職権主義との関係は、控訴審においても同様に考えられるべきだからである。

 これを本件についてみるに、本件公訴事実中第一審判決において有罪とされた部分と無罪とされた部分とは牽連犯ないし包括一罪を構成するものであるにしても、その各部分は、それぞれ1個の犯罪構成要件を充足しうるものであり、訴因としても独立しえたものなのである。そして、右のうち無罪とされた部分については、被告人から不服を申し立てる利益がなく、検察官からの公訴申立てもないのであるから、当事者間においては攻防の対象からはずされたものとみることができる。このような部分について、それが理論上は控訴審に移審係属しているからといって、事後審たる控訴審が職権調査を加え有罪の自判をすることは、被告人控訴だけの場合、刑事訴訟法第402条により第一審判決の刑より重い刑を言い渡されないことが被告人に保障されているとはいっても、被告人に対し不意打ちを与えることであるから、前記のような現行刑事訴訟の基本構造、ことに現行控訴審の性格にかんがみるときは、職権の発動として許される限度をこえたものであって、違法なものといわなければならない

※公訴不可分の原則を理由に全体が移審するが、無罪部分は当事者の攻防からはずされたとみて、裁判所の職権調査は無罪部分に及ばなくなる

3 上告

405条

※上告理由は、憲法違反判例違反に限られている。

判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認は、上告理由がない場合に職権破棄の事由となるのであって(411条3号)、上告理由とはならない

☆高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があることは、適法な上告理由とならない

裁判所法16条3号

※高等裁判所は、刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決及び簡易裁判所の判決に対する上告について裁判権を有する

☆高等裁判所が刑事事件の上告審として裁判権を有することはない

414条、393条1項本文 

※393条1項(控訴裁判所は、刑事訴訟法392条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調べをすることができる )は、414条により上告審に準用されている

上告審は、法律審であるが、事実の取調べを行うことができる

411条柱書、1号

※上告裁判所は、刑事訴訟法405条各号に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる 

☆上告裁判所は、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる

410条2項

※高等裁判所が最高裁判所の判例と相反する判断をしたという事由のみがある場合で、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、刑事訴訟法410条1項は適用されず、原判決を破棄しなくともよい

☆上告裁判所は、第二審の判決が最高裁判所の判例と相反する判断をした場合において、その判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、これを破棄しなくともよい

4 抗告

430条1項、2項

司法警察職員のした処分のうち準抗告の対象となるのは、39条3項の処分(弁護人との接見交通の日時場所の指定)及び押収押収物の還付に関する処分である

☆被疑者又は弁護人は、司法警察員が録取した供述録取書の内容に不服が有る場合、これに被疑者が署名したことの取消しを求める準抗告をすることができない

捜索・差押え時の写真撮影と準抗告(最決平2.6.27、百選35) 

・写真撮影は、それ自体としては検証としての性質を有すると解されるから、刑訴法430条2項の準抗告の対象となる「押収に関する処分」には当たらないというべきである。したがって、その撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡しを求める準抗告を申し立てることは不適法である

☆被疑者又は弁護人は、捜査機関が、捜索差押許可状に記載された「差し押さえるべき物」に該当しない印鑑を写真撮影した場合、これにより得られたネガ及び写真の廃棄又は引渡しを求める準抗告をすることができない

第8章 非常救済手続

439条1項4号

※再審の請求は、有罪の言渡しを受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態にある場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹がこれをすることができる

439条1項1号

検察官は、再審の請求をすることができる

440条1項 

☆有罪の言渡しを受けた者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる

448条1項

☆再審の請求を受けた裁判所は、同請求の理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない

再審公判の判決の確定時に、原確定判決はその効力を失う