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【特に、被災した事業主の皆様へ】熊本地震からの復旧に際して気をつけたいこと

今後の国の動き(予想)

 熊本地震の前、国会の大きな関心は2016年夏に迫る参議院選挙であった。

 しかし、今回の熊本地震を受け、それに向けた動きも変わるものと思われる。1番大きく変わると見込まれるのは、補正予算を組む時期だ。

 熊本地震以前は、参議院選の後に補正予算を組むことが見込まれていたが、熊本地震からの復旧に向けた補助金等を捻出するため、早急に補正予算を組むことになると思われる。

 1億総活躍に関する補正予算は第2号(第2次)の補正予算となり、その前に復旧・復興に向けた第1号の補正予算が組まれることになるだろう。

 そうして捻出された補助金に関して、熊本の事業主の皆様に気をつけてほしいことがある。

 

事業主の皆様に気をつけて頂きたい事

 それは、大手建設会社やゼネコンなどのいいなりになって契約をしない。必ず、契約内容について客観的なチェックを受けるという事である。

 これは、私が初任行政研修で行った宮城県石巻や、1年半赴任していた岩手県で聞き、現地調査もした話。

 東日本大震災からの復旧に際しても、多くの補助金が投じられた。その内容の中には、被災した水産加工場を建て直す補助金もあった。復興のための補助金である事から、本来は被災当時の建物を建て直すことが名目であるが、被災直後の混乱の中、被災当時よりも1まわり、2まわり大きな工場を建て直す例も散見された。

 それに目をつけたのが、大手建設会社やゼネコンである。

 もちろん、すべての建設会社に悪意があったわけではなく、こういう悪巧みをしたのはごく一部の会社である。

 しかし、その一部の会社は、政府からの補助金に上乗せして、建設会社からも事業主に補助を出すというインセンティブを与え、被災当時よりも大きな工場(水産加工場や漁獲の保管のための冷凍庫など)を建てるよう、被災した事業主たちに甘い言葉で誘った。

 その結果、事業主達は少ない元手で大きな工場を建てることができた。ただ、彼らはそのデメリットを理解していなかった。

 主なデメリットは2つある。

 1つ目は、莫大なランニングコスト。

 2つ目は、補助金で建てた建物の処分の難しさ。

 

 1つ目のランニングコストについては容易に想像がつくであろう。

 大きな施設を作れば作るほど、それを稼働させるための電力等は大きくなり、そのためのコストがかさんでいく。一方で、震災後、宮城県や岩手県での漁獲高は減少し、立て直した水産加工場のキャパシティをフル稼働させるほどの材料が手に入らない(この状態は、震災直後ではなく、震災から3年間は特に顕著だったし、今でも東北の沿岸部の市町村が抱えている問題でもある)。

 この状態を受けて、工場の一部だけ稼働させる事業者や、その一切を休業させてしまう事業者が続出した。

 ここで2つ目の問題が出てくる。

 稼働させられない工場なんて、持っていても邪魔である。むしろ、メンテナンス費用などを考えると、マイナスの資産である。

 しかし、補助金適正化法に

第22条

 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

 とあるように、補助金で建てた建物の処分には制限がかけられている。この制限自体は、補助金の原資を負担する納税者と、補助金を受け取る事業者の公平を考えれば当然のものであるが、これにより、稼働できない工場を誰かに売り渡したり、取り壊したりすることのハードルは高くなっている。

 これにより、被災地の事業者は、二進も三進もいかない状態に落ち込んでしまった。

 すべては、大手建設会社の甘い言葉に乗せられて、将来の事業戦略を考えることなく、ホイホイと建て替えの契約をしてしまったためである。

 この問題は、東北地方太平洋側の漁港の漁獲量の増加により解消される問題ではある。

 しかし、熊本県で被災された方々も、同じ轍を踏まないよう十分に注意されたい。