3年でエリート公務員辞めた結果…

月間30万PV以上!元国家公務員(総合職・旧1種)による備忘録。通称「さんエリ」

海外で大麻、麻薬、あへん、覚せい剤を使用すると国内で処罰されるのか

スノーボード選手がコロラド州で大麻使用疑惑。違法では?逮捕されないの?

 スノーボードの未成年の男子選手2人が海外の遠征先で大麻を使用していたという報道がなされている。

 以前は朝青龍も海外で薬物を使用していたという報道があったり、海外旅行が好きな人ならオランダで大麻の使用が合法的に認められているということを聞いたことがあるだろう。

 それでは、日本人が海外で大麻などを使用した場合、日本国内の法律で処分されることはないのか。

 

前提1 刑法の原則

 まず、刑法の基本的な知識を押さえておきたい。ここで問題となるのは、刑法の場所的適用範囲である。

 刑法の場所的適用範囲に関する原則は、5つある。

  1. 属地主義
  2. 旗国主義
  3. 保護主義
  4. 属人主義
  5. 世界主義

 それぞれ見ていくと内容は次の通り。

属地主義(刑法第1条第1項)

 日本国内で行われた犯罪(国内犯)について、何人に対しても刑法の適用があるという原則。

旗国主義(刑法第1条第2項)

 日本の船舶や航空機の中で犯罪行為が行われる場合、日本の刑法が適用されるという原則。属地主義の一形態。

保護主義(刑法第2条、第3条の2)

 自国の重要な利益の保護を目的として、自国又は自国民の法益を侵害する犯罪に対して、犯人の国籍・犯罪地を問わず全ての犯人につき刑法の適用を認めるという原則。内乱罪や通貨偽造罪が対象。

 また、日本国外において日本国民に対してなされた犯罪(殺人罪等)を処罰するのも保護主義による。

属人主義(刑法第3条、第4条)

 犯人が日本国民である限り、犯罪ちの内外を問わず刑法の適用を認める原則。比較的重い犯罪についてこの原則を認め、殺人罪や強姦罪などが刑法第3条に限定列挙されている。

 刑法第4条は、公務員の国外犯についての規定である。

世界主義(刑法第4条の2)

 国際テロ行為やハイジャックなど、国際社会が共同して対処しなければならない行為について、何人がどの地域で犯したか、また自国の利益の侵害を伴うか否かにかかわらず、自国の刑法を適用する原則。

 

前提2 大麻や麻薬、あへん、覚醒剤はどんな法律に基づいて違法とされるのか

 日本の法律が乱立しているためわかりにくいが、次のような構造になっている。

  • あへん → あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)
  • 大麻  → 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)
  • 麻薬  → 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)
  • 覚醒剤 → 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)

 それぞれの違法薬物等は、これらの個別の法律に基づいて処罰される。なお、これらについては、刑法第2条又は第3条の限定列挙に含まれていない。

 

前提3 大麻取締法や覚せい剤取締法は保護主義をとっている

 刑法第2条や第3条に麻薬や覚せい剤の所持等が列挙されていないことから、刑法の保護主義が直接これらの犯罪行為に適用されることはない。

 しかし、それぞれの法律の中で、その所持や使用が「刑法第二条の例に従う」として、保護主義を採用している。

  • あへん法第五十四条の四 第五十一条、第五十二条、第五十三条、第五十四条の二及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。
  • 大麻取締法第二十四条の八 第二十四条、第二十四条の二、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。
  • 麻薬及び向精神薬取締法第六十九条の六 第六十四条、第六十四条の二、第六十五条、第六十六条、第六十六条の三から第六十八条の二まで、第六十九条の二、第六十九条の四及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。
  • 覚せい剤取締法第四十一条の十二 第四十一条、第四十一条の二、第四十一条の六、第四十一条の九及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。

 ここで、刑法第2条の原文を見てみたい。上述した通り、保護主義であって、国籍を問わずこれらの行為をした者を処罰する規定である。属人主義たる第3条によるものではないことに着目したい。もちろん、日本法は日本国の主権が及ぶ範囲で適用されるため、海外でこれらの薬物を使用した者を全員日本に連れてきて裁判にかけて処罰するなんてことはできない。しかし、これらの違法薬物を所持・使用した者が日本国の主権が及ぶ範囲にいる限り、日本法に基づき処罰されることになる。

(すべての者の国外犯)
第二条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一  削除
二  第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三  第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
四  第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五  第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
六  第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
七  第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
八  第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪

 

結論 海外で大麻などを使用すると、日本法に基づいて国内で処罰される

 以上より、たとえ大麻や麻薬の使用が合法な地域でそれらを使用したとしても、日本法に基づいて処罰されることになる。ましてや、海外にそのまま滞在するならまだしも、日本に戻ってきた以上は、いつでも処罰されうるということである。

 今回、海外で大麻を使用したとされるスノーボード選手は未成年とのことだが、刑罰に関する一般法である刑法は、14歳以上であれば処罰の対象となるとする(刑法第41条)。報道の様子を見ると、14歳以上ではあるように思われるから、彼らも逮捕・起訴される可能性があるということである。

 差し出がましいこととは思うが、本文を読んでくださっている皆さんも、絶対に、オランダなどで大麻を使用したりしないように注意されたい。