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「車好きはMTでしょ」なんて時代はもう古い!【ポルシェのPDK、GT-RのDCT、ランエボのSST】

日産「GT-R」2017年モデルにはMT仕様がない

 2016年3月23日、ニューヨークモーターショー2016で世界初公開した日産「GT-R」2017年モデル。このモデルに限らず、スカイラインの名を取って以降の日産GT-Rには、MT仕様の3ペダルが存在しない。どうしてスポーツカー最高峰といわれるGT-RにはMTモデルがないのか。これまでの自動車の変遷とともにその理由を探りたい。

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どうしてこれまで車好きはMTを選んで来たのか

 車好きがMTを選択する理由は大きく2つある。

  1. MTの方が速いから
  2. MTの方が運転している感覚があるから

 現在MTに乗っている人も、このどちらかの理由で乗っているのではないだろうか。

 しかし、この感覚は、個人的に少し違和感がある。この違和感が、GT-RにMTモデルがない理由と関わりがあるのではないかと思う。

 

MTを選ぶ理由に違和感を感じる理由

 現在、私はSSTのランエボに乗っている。SSTとは、TC-SST(ツイン・クラッチ スーパー・スポーツ・トランスミッション)の略である。要するに、ハンドルの裏にシフトパドルのついたセミオートマである。

 このSSTが、ギアの切り替えがすごく早い。ギアがスムーズにあがっていく音もまたいい。

 確かにMTの方がギアチェンジの手間がある分、運転している感覚は強いのかもしれないが、自分の技量ではSSTほどスムーズにギアチェンジすることはできないと思う。恐らく世の中の大半の人も、SSTには勝てないと思う。

 つまり、MTを選択する理由である「1. MTの方が速い」という理由がいまやなくなってしまったのだ。一昔前は、ATの性能が悪く、ギアの切り替えがギクシャクすることが多かった。その頃は、自分のタイミングでギアを変えることのできるMTの方が速いということもあっただろう。しかし今はそうではない。ツインクラッチトランスミッション(デュアルクラッチトランスミッション)の登場によって、人間によるギアチェンジよりも機械制御によるギアチェンジの方がスムーズになったからだ。

 

ツインクラッチトランスミッション(デュアルクラッチトランスミッション)とは

 ツインクラッチトランスミッションは、平行軸歯車とクラッチを2系統持つトランスミッションである。片方が奇数段(1,3,5速)を、もう片方が偶数段(2,4,6速)を担当し、それらを交互に繋ぎ変えながら変速する。変速時には次のギアが待機状態にあるためスムーズにギアチェンジが行われる。

 現状、様々な車種に様々な名前で導入されている。

 ポルシェのボクスターなどではPDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)、日産GT-Rでは(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、三菱ランエボではTC-SST(ツイン・クラッチ スーパースポーツトランスミッション)、フォルクスワーゲンではDSG(ダイレクト・シフト・ギアボックス)といった具合である。

 これらの車はセミオートマしようで、ハンドルの裏についているパドルを使って自分の好きなギアで走ることもできるため、エンジンの回転数を落とさずにスピード調整をした上でカーブを曲がることも可能である。

 

マニュアル車を選ぶのは自己満足でしかなくなった

 ツインクラッチの登場により、これらのシステムが搭載された車種の場合、MTを選択する理由は「MTの方が車を運転している感覚がある」という理由だけとなった。もちろん、ツインクラッチよりもスムーズにギアを変え、適切なギアで走ることができるプロレーサーは別である。ちなみに、F1ではシームレスシフトが採用されており、そもそも手動によるギアチェンジはしない。

 結論としては、速さを追求する日産の姿勢が、GT-RにMTを導入しない最大の理由ということになろう。

 これまで「ATは下手の乗るもの」といって敬遠したり見下していたりした人は、一度ツインクラッチ制御の自動車に試乗してみて、ギアがスムーズにあがっていく心地良さを体感してほしい。