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【マクロスΔ】最初は苦戦していたが、メッサーの死によって正統なマクロスシリーズに位置付けられた

Walkure Attack!(初回限定盤)(DVD付)

※2016年9月29日更新

マクロスデルタはかなり異端の作品だった

 現在絶賛放送中の「マクロスΔ」。

 前作のマクロスフロンティアが菅野ヨーコとMay'nの名コンビによる素晴らしすぎる作品であったこともあって、出だしはかなり苦戦していたと思います。

 色々とこれまでのマクロスと違う要素が多くて、既存のマクロスファンが違和感を感じながら見ていたというのもその原因でしょう。

 マクロスデルタの世界観では、銀河ネットワークが完成してしまっているので、移民船団である「マクロス」が普段の生活の舞台でないというのがそもそもの違和感の始まりでした。

 初代マクロスはもちろん、

コスモフリートスペシャル 超時空要塞マクロス SDF-1マクロス(TV Ver.) 約20cm PVC製 塗装済み完成品フィギュア

マクロス7も、

http://blog-imgs-29.fc2.com/v/f/l/vflog/snapshot20090328142411.jpg

マクロスフロンティアも、

http://www.rainorshine.asia/wp-content/uploads/2008/04/snapshot20080405093221.jpg

それぞれタイトルに名前を冠したマクロス及びその船団を舞台に繰り広げていました。

 なのに、今回の作品にはマクロスデルタとかデルタ船団とかは出てこないんです。

 また、マクロスデルタでは歌を担当するのが3人以上の歌手からなるアイドルユニットのような形態をとっているのも、これまでの作品と違う点です。

 マクロスシリーズにとって重要な要素は、①歌、②戦闘機、③三角関係という3つがあります。

 これまでマクロスシリーズは、「①歌」について、現実世界での流行に合わせて歌い手のあり方を変えてきました。アイドル全盛期に作られた初代ではリン・ミンメイという昔ながらのアイドル、男性ボーカルのバンドが流行っていた頃に作られたマクロス7では熱気バサラをボーカルに据えたファイアーボンバーというバンド、洗練された女性ボーカルが目立っていた頃のマクロスFには、銀河の妖精シェリル・ノームを出現させつつ、リン・ミンメイを彷彿とさせる新人アイドルのランカ・リーを登場させることでマクロスの要素を取り入れました。

マクロス15thアニバーサーリー No.6 リン・ミンメイ(映画版)

Re.FIRE!!

 AKB48を始めとするグループアイドルが隆盛し、ラブライブも流行るような御時世なので、戦術音楽ユニットワルキューレの4人に、メインヒロインのフレイヤが加わるという、ボーカルが5人の態勢でマクロスデルタの歌を担当するのは当然のことかもしれません。

 しかし、ロックバンドや洗練された女性ボーカルが比較的大衆に受けるのに対して、AKBのようなグループアイドルは、一部の人にしか受けていないということだと思います。従来のマクロスファンの中にも、アイドルグループが好きな方もいれば、そういうのが苦手な方も多くいたことでしょう。これが、従来のマクロスファンの一部に、マクロスデルタが苦戦した理由の一つだと思います。

 あとは、ボーカルが女性で5人もいると、歌っている声が聞き取りにくいんですよね。

 ファイアーボンバーはメインボーカルのバサラが男性で、サブボーカルのミレーヌが女性であったためその声は当然聞き分けられましたし、マクロスフロンティアでは、シェリルの声を担当していたMay'nとランカの声を担当していた中島愛の声質が全然違っていたので聞き分けられました。

 今回も美雲の声は特徴がはっきりしているのですが、フレイアの声と他の声の区別が付きにくいように思います。なんか、下手にみんな上手いので、同じような声をしているんですよね。

 ランカ・リーは、素人っぽさが残っていたのではっきりとランカの声であることが認識できたのですが、ここが違いますね。

 声を聞き取ることって、マクロスの歌においては意外に大事です。というのも、誰が誰のために歌っているのかを判別しながら見てこそ、マクロスシリーズの醍醐味を知ることができるからです。

 特定の人物のことを思って、その人のために歌うからこそ、その歌がより感動的に響く。これを、マクロスデルタでは味わいにくいです。

 この点からすると、メッサーが死んでしまった第10話でカナメがメッサーのために歌っている姿こそ、マクロスシリーズの本来のあり方なのではないかと思うのです。

 第10話はこの意味で本当に素晴らしい回であると同時に、マクロスプラスシリーズを髣髴とさせる、書き込みの細かいメッサーとキースの空中戦は圧巻でした。

 しかも、メッサー死んじゃうんですよ。まあ、前半から死亡フラグを立たせまくっていたメッサーですが、まさか彼が初代マクロスにおけるフォッカーの立ち位置を奪っていくとは。初代主人公の一条輝がフォッカーの死を乗り越えてパイロットとして成長したように、ハヤテはメッサーの死を乗り越えてパイロットとして一人前になるんでしょうね。

 それを象徴するかのように、メッサーの死亡を追悼するためだけに第11話は丸々割かれることになります。死亡したキャラの追悼だけで1回分を潰してしまうことに対して不満を持つ視聴者もいるようですが、主人公が一人前になるための通過儀礼として非常に重要な回であるからこそ、1話丸々使ったのだと思います。しかも、追悼のシーンではファイアーボンバーのRemember 16を歌うなんてオマケつきですから。

上記以外に、これまでのマクロスシリーズと違うことで違和感を生じさせている点

 と、今書いたメッサーの死亡の意味について書くのがこの記事の目的ではありましたが、他にも従来のマクロスシリーズとの違いについて思うことがあるので、幾つか書きたいと思います。

 今回、ウィンダミアが「風の歌い手」であるハインツの歌による「ヴァールシンドローム」を発生させようとすることへの対抗手段として、ワルキューレやフレイアの歌が用いられます。で、もしかしたら直接歌を聞かなければ効果がないということなのかもしれませんが、ワルキューレやフレイアは、いつも最前線に出てくるのです。敵がヴァルキリーで襲ってくる中、ほぼ生身の状態でです。これが、これまでのマクロスシリーズの歌い手ではありえないほど、危なっかしすぎます。

 初代マクロスでは、マクロス本艦に乗っていたリン・ミンメイがその場で歌い、通信を通じてその歌を聞いたゼントラーディーが感動しているうちにゼントラーディーを撃墜していましたし(酷い)、マクロスフロンティアでは、フォールドクオーツを通じて遠くにいるランカやシェリルの歌が前線でバジュラと戦うアルトたちの元に届いていました。バサラだけは確かに、ギター片手に生身で敵に立ち向かっていたりもしましたが、彼はそもそも身体能力半端ないですし、途中からはサウンドフォースに組み込まれてファイアーバルキリーとかに乗るようになりますからね。

 マクロスデルタでは、生身で危なっかしい状態で最前線に出て行くような馬鹿な真似をしているせいで、落ち着いて歌を聴いていられないんですよね。実際に、銃撃を受けると歌がいちいち中断しますし。これがちょっと残念なんですよね。

 あとは、いくら同じ河森監督だからといっても、さすがにアクエリオンの要素が入りすぎなんじゃないかな、と。

 マクロスFがこれまでのマクロスシリーズの重要要素を詰め込んだものであるのに対し、マクロスΔはマクロスプラスとマクロス7の要素を合体させて作るということで、確かにメッサーらによる空中戦はマクロスプラスっぽいですし、ヴァールシンドロームをプロトデビルンたちによるアニマスピリチア吸収後の人類の洗脳に相当するものとして考えれば、それに対抗するために歌を用いるのはマクロス7っぽいですが、それ以上に目立つのがアクエリオンっぽい要素です。

 ウィンダミア人達が作戦を立ててる様子はアクエリオンの堕天翅族っぽい。キースが本当にトーマに見えて仕方ないですし。「風の歌い手」とかよくわかんない単語を連発している姿が、周りの人たち置いてけぼりで「太陽の翼」とか呟いてたトーマの姿とかぶります。ウィンダミア人は、プロトカルチャーにいじられているとはいえほぼ人間と同じ姿をしているのに、背中に翅が生えているように見えてしまうのは何故なんでしょう。最後の最後、「ワルキューレ側とウィンダミア側が手を結んで宇宙を救う」みたいな展開になったりしませんよね??

 それから、何と言ってもメインヒロインであるフレイアが平均寿命30年のウィンダミア人であることが残念ですね。これでは、若いうちはフレイアと遊んで、年をとったらミラージュ・ファリーナ・ジーナスと身を固めるというウルトラCで三角関係を解決するなんてこともできてしまうではないですか。

 こんなの、マクロスFのテレビ版最終回でアルトが発した「お前たちは俺の翼だ」という浮気容認を求めたゲス発言よりも酷い悪行です。

 なんて、そんなのは冗談ですが、命の短さを、三角関係における取引材料には絶対にして欲しくないですね。

マクロスΔはこれからが見所

 苦情めいたものも含めてつらつらと書き連ねてしまいましたが、個人的にマクロスΔは面白い作品だと思います。菅野ヨーコが音楽を提供していないことでちょっと残念に思ったりしていたところもありましたし、一番大事な第1話の作りが雑だったのは残念ではありましたが、回を追うごとに面白くなってきます。まあ、マクロス7も、最初の方は全然面白くなかったのに中盤が終わったあたりから面白くなってきましたからね。歌も、結構いいですよ。特に美雲の歌が素敵だと思いますし、フレイアの歌も綺麗です。

 メッサーの死亡を超えて、ハヤテ・インメルマンも1人前のパイロットして活躍するようになるでしょうし、ついにキースとハヤテが翼を交えることになるのでしょうから、これからが見所だと思います。

 これまであまりヒロインとして活躍していないミラージュ・ファリーナ・ジーナスが今後どのように三角関係を盛り上げていくのかが見所です。彼女がこれまでのマクロスシリーズの登場人物とすごく因縁深い人物であるという裏設定をもっと前面に打ち出して、過去のマクロスシリーズとも絡めながら活躍してくれたら最高ですね。

ミラージュ・ファリーナ・ジーナスの裏設定

 統合軍のエースパイロット夫婦マクシミリアン・ジーナスとミリア・ファリーナ・ジーナスの六女ミランダの娘であり、ミレーヌ・ジーナスの姪。
 かつては新統合軍に所属していたが敵を倒すことになじめなかったところ、祖父母よりリン・ミンメイの話を聞き、叔母にミレーヌがいることもあり歌の力を使うワルキューレに興味を抱き、アラドの誘いを受けてケイオス入りした。

 

(2016年9月29日追記)

 最終回まで無事に到達しましたね! 最終回のエヴァ展開は正直間延びしてしまった感が否めませんが、最後のフレイアの「覚悟するんよ」からの曲の入りはよかったですね。マクロスF最終回はメドレーもあって神がかっていたので、あのレベルを期待した方には少し物足りなかったかもしれませんが、素直にメインヒロインが選ばれるマクロスの作りも悪くないなと(それだけミラージュの存在感が薄かったということか…)。

 唯一、本作に対して言いたいこととしては、「アイドルを戦闘に参加させるな!」ということでしょうか。歌は歌で専門特化した方が絶対に作戦として効率的ですし、リアリティありましたよね。それなのに、わざわざ前線で歌以外の仕事をさせる意味ってあったのかな、なんて。美雲さんも、銃で打たれて死んでてもおかしくない場面ありましたしね。上にも書きましたが、基本的に敵が物理攻撃をしてこないマクロス7とは違って、物理攻撃を多用してくる相手に対して、生身で立ち向かっていくのはリスク高すぎます。

 マクロスFは劇場版でもう一皮むけたところもあるので、マクロスデルタも是非、微妙に違う味付けの劇場版を作ってくれることを期待しています。

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