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西尾維新「症年症女」は無個性の現代に疑問を投げかける良作

症年症女 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

西尾維新原作、暁月あきら漫画「症年症女」

 ついに「症年症女」の単行本1巻が発売されました!

 学園異能インフレ言語バトル漫画「めだかボックス」の人気コンビが放つ新作ということで、期待して読みましたが、かなりいい味出してる作品です。

 西尾維新さんは、もともと大ヒット小説家で、とてつもない実力を秘めています。暁月あきらさんと組んで始めた「めだかボックス」は、いつコケるのかハラハラして読んでいた時期もあったのですが、最後の大団円まで駆け抜けた力強さは、尊敬に値します。最初のジャンプ連載で22巻まで行くってすごいですよね。

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 「めだかボックス」が黒神めだかという最強ヒロインを描く、戯言シリーズで言えば哀川潤をモチーフにした作品でしたが、「症年症女」の主人公は「いーちゃん」をモチーフにしているようです。

人類最強の初恋 (講談社ノベルス)

 もう、かなりひどく病んでます。中2病的な意味で。

「見た目が無個性ならいうことも無個性だな。やることなすこと前に倣え。そんな無個性でお前らどうして死にたくならないんだ?少なくとも僕はもう何年も死にたくて死にたくてしょうがないのに。どうせ全員区別できない類例なのにその中で上だ下だを競い合う愚かさには吐き気がする」

「やったぁ!難病!新病!原因不明!治療法はなく限られた寿命!12歳までに死ぬ!残り少ない人生!悲劇の主人公!唯一無二の個性!!」 

 ってな感じで、およそ主人公らしからぬセリフばかり。病気にかかった天才的な女の子を嫌いながらも心のどこかでは好きなところがあるというのもいーちゃんそっくりですね。

 上で「難病」と出てきているのですが、これは、人間の顔がインクで塗りつぶされたように人間の見分けがつかなくなる病気。もっと言えば、個性のない人間を見分けることができない病気で、しかもこれにかかると12歳で必ず命を落とすと言います。

 この設定がたまらなくいいですね。

 無個性につまらない人生を送ることへの皮肉満載でありながら、かといって嫌味な作品になっていないのがこの作品のすごいところです。

 なんだかんだで「症女」の方は最後まで生き残るんでしょうね。個人的な予測としては、「症年」の方も生き残って、この二人は結局、12歳を超えても生き延びる結果になるんだと思います。なんだかんだで西尾維新さんは絶望よりも希望を描く作家さんですから。

 めだかボックスは初ジャンプ作品だったこともあり、14巻の116箱で下のセリフを見たときには鳥肌が立ちました。

地球育ちのサイヤ人 孫悟空のように強く
宇宙海賊コブラのようにダンディで
シティーハンター 冴羽獠のように頼り甲斐があり
北斗神拳伝承者 ケンシロウのように愛に生き
天才バスケットマン 桜木花道のように努力家で
テニスの王子様 越前リョーマのように小気味よく
サッカーの申し子 大空翼のように爽やかで
セクシーコマンドー部部長 花中島マサルのように剽軽で
電影少女の再生者 弄内洋太のようにピュアで
現代の本因坊秀策 進藤ヒカルのように懸命で
表裏一体の決闘者 武藤遊戯のように伝説となり
帝拳高校の番長 前田大尊のように仲間思いで
男塾総代 剣桃太郎のように漢気に満ち
ジョースター家の末裔 空条承太郎のようにクールで
霊界探偵 浦飯幽助のように型破りで
小さな勇者 ダイのように勇気を持ち
崑崙山一の策士 太公望のように機転が利き
正義超人 キン肉マンのように友情に厚く
青銅聖闘士 ペガサス星矢のように熱血で
人斬り抜刀斎 緋村剣心のように優しく
大ふへん者 前田慶次のように傾く

そんな主人公にきみもなってみないか?

 「症年症女」ではどのような感動を私達に与えてくれるのでしょうか。息の長い連載となるよう、応援したい作品です。

症年症女 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

症年症女 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者: 西尾維新,暁月あきら
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/06/17
  • メディア: Kindle版
 

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