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映画「聲の形」に関する新海誠監督発言の真意

[まとめ買い] 聲の形(週刊少年マガジンコミックス)

映画を見る前に知っておきたい「聲の形」事前知識

 このマンガがすごい!2015に選ばれ、映画化もされて現在話題沸騰中の漫画「聲の形」。同時期に大ヒットを飛ばした「君の名は。」の新海誠監督が、映画版「聲の形」の作りを大絶賛されていたことで、さらにその評価を高めた。

  しかし、私はあえて言いたい。

 「聲の形」の内容にあんまり期待するなと。

 原作を読んだことがない人の多くは、この作品の内容を誤解しているはずだ。

 その誤解の原因は、映画の予告編にあると思う。 

 上の予告映像を見て想像するのは、

優しい男の子が聴覚障害者の女の子に手を差し伸べ、広がってゆく友達の輪の中、互いの思いが通じてハッピーエンド!

みたいなストーリーだろう。

 しかし、「聲の形」が描く世界は、そんな生優しいものではない。

 優しい友達が聴覚障害者のヒロインをハッピーエンドに導く「オレンジデイズ」のような幸せ青春像を期待したり、小学校時代の友達が高校生になってから集まってワイワイする「あの花」のような優しい物語を期待したりしてはいけない。

 予告の中では植野直花が吐き捨てる「友達?! いじめてたやつと友達?!」というセリフと、主人公の男の子がヒロインの耳元で大声を出しているシーンとしてしか描かれていないが、この作品におけるいじめの描写はこんな甘っちょろいものではない。

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 この、耳元で大声を出すシーンなんて、内容を知らない人が見たら、「気になる女の子へのいたずら」程度にしか思わないだろう。

 本作におけるいじめの内容をここで語るような無粋な真似をするつもりはないが、それなりの覚悟をもって、漫画を読むなり映画を見るなりして欲しい。非現実的な程残酷なイジメがヒロインを襲う姿を目撃することになるだろうから。

 なお、「聲の形」の内容にあまり期待するなと言いたいのは、いじめの描写がひどいからではない。あくまでも、多くの人が誤解しているであろうことを述べただけだ。

 私が「聲の形」の内容を評価しないのは、登場人物の心情について、ありえないほど筋が通っていないからだ。

 ちょっと気に障ったくらいでヒロインをとことんいじめ、ヒロインをかばった女の子はすぐに不登校。もともとはいじめっ子だった主人公は急激にいじめられっ子の立場に転落。友達はすぐに裏切るし、ヒドいイジメをしている相手を実は好きだったりする。聴覚障害のヒロインを最も理解すべき立場にある母親は手話すら覚えようとしないし、サブカル臭の一切しない登場人物が映画の作成に熱を入れる。ヒロインは急にマンションの高層階のベランダから飛び降りるし、それを助けようとした主人公は転落して意識不明。

 もう一体何がなんだか。

 

 確かに、週刊連載の漫画としてはよかったのかもしれない。私自身も、先が気になってKindleでコミックスを一気読みしてしまった。

 しかし、俯瞰して全体を見てみると、結局何を描いたわけでもない。

 この作品を通じて得られたものは何もない。

 

 京アニの技術やキャストの素晴らしい演技によって、映画としては素晴らしいものになったのかもしれない。

 しかし、やはりこの作品の内容には、特筆すべきものがないのであろう。

 演出だけでなく脚本も手掛ける新海誠監督が、「どこまでも真摯で丁寧な組み立て」、「絵」、「色彩」、「演出」、「キャスト」「入野自由」を絶賛しながら、ストーリーや脚本、原作について一切言及していないのはそこに真意があるからだ、なんて、考えすぎだろうか。 

聲の形(1) (週刊少年マガジンコミックス)

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  • 作者: 大今良時
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/01/17
  • メディア: Kindle版