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残業時間の調整や超勤手当のカットが当然のようにまかり通る社会は絶対におかしい

職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方

残業時間の調整や超勤手当のカットは国でも当然のように行われている

 先日、山田さんという方から、下のようなに当ブログへの言及をいただいた。

 恐らく皮肉もこめられている記事なのだが、なかなかおもしろい観点である。

 記事内容には多少の誤解があると思うが、たしかに私は、ルールをそのまま当てはめたくなる人間なのかもしれない。

 そう考えたのは、残業時間の調整や超勤手当のカットが当然のようにまかり通っている現実を受け入れられなかった自分を思い出したからだ。

 しかし、誤解のないよう念のため、私は、解釈の範囲内で法律を柔軟に適用すべきだということは分かっているし、法律も人間が作ったものであり完全に正しいものではないということも承知の上で、次のように考えていることを予め申し添えておきたい。

 

 さて、私が公務員の仕事に内定する前から、国家公務員の仕事はブラックで、残業代も大幅に減額調整された上で支給されるらしい、という噂は聞いていた。

 でも、当時の私はそれを心から信じることができなかった。まさか国の中枢で、そんな違法なことがまかり通るはずがないではないかと。残業代カットも、国家公務員に関する都市伝説のひとつなのではないかと、甘く考えていた。

 

 そうした残業時間の調整と残業代のカットが本当に行われていることだと知ったのは、入省後本省で働き始めてからだった。

 

 多くの企業とは違って、中央省庁では労働時間の管理にタイムカードが導入されていない。

 これは、「実際に働いているよりも労働時間を長く申告して、残業代をがっぽり儲けてやろう」なんて考えによるものでは一切ない。

 むしろ逆で、みんな真面目に、働いた分だけ、労働時間に関する記録を毎日きっちりとエクセルファイルなどで管理し(まあ、この管理方法もいかがなものとは思うが)、それに基づいて残業時間を報告しているが、大抵の場合、それの4割減、ひどいところでは8割減の残業手当しか支給されない。

 それも、何らかの調整率(例えば、財源を理由にした調整など)を残業手当にかけて支給額を減らしているのではなく、そもそもの残業時間を調整して(実際には月150時間の残業なのに、60時間しか残業していないことに捏造されて)、調整された残業時間に基づいて残業手当を算定しているのである。

 ここで、ありがちな反論としては「公務員だから我慢しろ」「財源が足りないんだから仕方ない」というものが期待される。

 もちろん、公務員が通常の労働者と扱いを異にすることは分かるし、財源が足りない以上仕方ないことも分かる。

 しかし、超過勤務手当は、超過勤務の時間に応じて支給する旨が、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)に定められているのである。

第16条 第1項 正規の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられた職員には、正規の勤務時間を超えて勤務した全時間に対して、勤務一時間につき、第十九条に規定する勤務一時間当たりの給与額に正規の勤務時間を超えてした次に掲げる勤務の区分に応じてそれぞれ百分の百二十五から百分の百五十までの範囲内で人事院規則で定める割合(その勤務が午後十時から翌日の午前五時までの間である場合は、その割合に百分の二十五を加算した割合)を乗じて得た額を超過勤務手当として支給する。

 また、当然のことながら、「国家公務員については、超過勤務の時間を実際の労働時間よりも少なく調整することができる」なんて規定はない。

 現在の法律がこのようになっている以上、たとえ公務員であっても、労働時間に応じてきちんと超過勤務手当を支給するのが、法律に即した適正な処理である。

 もし、財源の問題を勘案して、公務員の超過勤務手当について合法的に調整すべきと考えるのであれば、一般職の職員の給与に関する法律などを改正して、調整率に関する規定を設けるなり、正規の手続きを取るべきだ。

 残念なことに、残業時間の調整や残業手当のカットは、「労働」について所管し国内の大半の労働者に関する法整備に責任を持つ厚生労働省の職員に対しても同様のことが行われているのである。

 入省直後、まだ内閣人事局がなく、総務省に「国家公務員全体を管理する機能」が残っていた頃、新入職員研修で、該当部署の職員に「なぜタイムカードを省庁全体に導入しないのか」という質問をしたことがあった。質問を受けた職員は、言葉をかなり濁していたが、つまるところ「タイムカードを導入すると、現状行われている超過勤務時間の調整ができなくなるから」という答えであった。

 

 政治家は「先ず隗より始めよ」という響きのいい言葉を誤用しながら、給与カットなどの悪辣な労働条件を国家公務員に強いる。

 しかし、多くの日本企業において、サービス残業が当然のように強要され、タイムカードが形骸化しているところもある現代社会。超過勤務手当に関する適正な支出または現状に合わせた法改正を「先ず隗より始め」ることが、国内全体の労働環境改善につながるのではないだろうか。