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3年でエリート公務員辞めた結果…

月間30万PV以上!入省3年で総務省(総合職・旧1種)を退職した元国家公務員のブログ。通称「さんエリ」

交通事故減少のためハイビーム使用を促す全国交通安全運動がアホすぎる?

政治・国会・行政

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平成28年秋の全国交通安全運動でハイビーム使用を励行

 平成27年中、夜間に車にはねられた死亡事故625件のうち96%が、ロービームのライトを点灯させていた車によるものだったことを受け、本日2016年9月21日からはじまる全国交通安全運動の重点項目としてハイビーム使用を呼びかけるとのこと。

ハイビーム使用を…横断死亡96%が「下向き」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

 これ、ソースである読売新聞が元凶だと思うのですが、

アホじゃないか

と思いました。

  内閣府の平成28年秋の全国交通安全運動推進要綱においては、「夜間の対向車や先行車がいない状況における走行用前照灯(いわゆるハイビーム)の使用の励行」と書いてあり、常時ハイビームを付けることを奨励しているわけではないので、政府の方針自体が間違っている訳ではないのですが、これを伝えるメディアの側にどれだけリテラシーがないのかと。

 そもそも、対向車や先行車がいない道は地方の田舎には多いのでしょうけれど、都心はもちろん、地方の都市部の主要な道路では対向車や先行車が一切いないなんてことはありません。時間帯にもよりますが、ライトを点灯させる時間帯の17時~24時にかけて街は車で溢れかえっていますし、24時以降の深夜であっても周囲に車がいない状況なんて滅多にありません。

 そんな状況の中、日本国内を夜間走る車のうち、ハイビームで走る車の割合はどれくらいあるのでしょうか。

 あくまで実感ベースですが、私が夜間に高速道路以外の下道を走る場合、東京都心では時間換算で99.9%ロービームですし、地方の都市部では90%程度、地方の田舎部では50%程度の割合でロービームを使用しています。

 上掲の読売新聞の記事では、夜間の死亡事故625件のうち、ロービームが597件(95.5%)、ハイビームが9件(1.4%)、補助灯が6件(1.0%)、無灯火が13件(2.1%)となっています。

 実際にロービーム状態で走っている車の割合とロービームの状態で事故を起こした件数の割合を比較したとき、また、同様にハイビームのそれを比較したとき、そこに有意な差は現れるのでしょうか。

 交通安全白書等を見ても参考になるデータが出てこないのであくまで推測の域を出ませんが、私はそこに差はないと考えます。

 

 さらに、今回の報道では自動車が歩行者を死亡に至らせる事故だけに着目していますが、対向車や先行車がいる場合にハイビームを使用するリスクを忘れてはいけません。車を運転する方ならわかると思うのですが、対向車がハイビームにしたままこちらに接近してくると、前方の視界がかなり悪くなります。狭い道路であれば、対向車との接触のリスクは増しますし、広い道路であっても、先行車や前方の障害物と接触するリスクは増加します。

 

 以上述べたような全体像を見ることなく、また、政府の要綱本体に書いてある「対向車や先行車がいない状況における」といった前置きなしに、「横断死亡の96%がロービームの車によるものだからハイビームを使用しましょう」といった記事を書くような読売新聞は、人の生命を蔑ろにした害悪でしかありません。

 以前よりマスコミに疑いの目を向ける人が多くなり、情報リテラシーが浸透している日本社会ですが、テレビ等に比べて新聞は比較的信用を保っているように思います。たとえ新聞であったとしても、そこにある情報を鵜呑みにすることなく、1次情報にあたるなど、他人の言説に惑わされない心構えが大切です。