読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

3年でエリート公務員辞めた結果…

月間30万PV以上!元国家公務員(総合職・旧1種)による備忘録。通称「さんエリ」

石原前都知事の「大きな流れ」に「逆らいようがなかった」発言はおかしい!責任逃れ【百条委員会証人喚問】

真の指導者とは (幻冬舎新書)

石原さん、その発言はどうかと思います!

 2017年3月20日に行われた、東京都議会百条委員会における石原慎太郎氏の証人喚問

 大方の予想通り、目覚ましい成果を挙げられなかったようですね。

 猪瀬・舛添という2名の知事を挟んだ後で、いまさら責任を追求される石原前都知事には同情する部分もありますが、証人喚問における石原前都知事の発言の中には、看過できない部分がありました。

 それが、次の発言です。

 市場を豊洲に移すというのは(都政の)大きな流れとして決定していた。私も逆らいようがなかった

 石原前都知事は、地方自治法第100条第1項に基づく証人喚問という強い強制力を有した場での発言であることから、「ピラミッドの頂点にいた私が最終報告をうけて決裁した。その責任は認める」と責任を全面的に認めるような発言をしながらも、やはり築地市場豊洲移転問題についてできる限り責任を負いたくないようで、実質的な責任は石原前都知事本人にはなく東京都全体にあると印象づけたいようです。

 「ピラミッドの頂点にいた私が最終報告をうけて決裁した。その責任は認める」というのも、あくまで「形式的な責任」を負うと言いたいだけなのでしょう。

 確かに、東京都はとても大きな組織です。都庁には多くの職員がいて、実質的には職員によって東京都の行政運営がなされているとも言えるでしょう。

 しかし、だからといって、都庁全体の流れに、そのトップである東京都知事が逆らえないとまで言うのは不適切ではないかと思うのです。

法律的な話(行政庁と補助機関)

 感情論に終止しても実益がないので、法的な背景を踏まえてお話をさせていただきます。

 行政法には、「行政庁」と「補助機関」という概念があります。

 「行政庁」というのは、「行政主体のために意思を決定し、それを外部に表示する権限をもつ行政機関」のことで、国で言えば、各省の大臣などのことです。

 一方、「補助機関」というのは、「行政庁の意思決定の補助をする任務を負う行政機関」のことで、国で言えば、各中央省庁で働く職員などのことです。

 つまり、行政主体(国や地方公共団体)の意思決定を行うのは行政庁であり、補助期間は意思決定の補助をするにすぎないのです。

 これを東京都について見てみると、東京都知事が意思決定の主体である行政庁であり、副知事以下の都庁職員は補助機関にすぎないのです。

 これについては、地方自治法において明確に定められています

地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)

第二編 普通地方公共団体
  第七章 執行機関
   第一節 通則
第138条の2  普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う
第138条の4第1項 普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く。

   第二節 普通地方公共団体の長
    第一款 地位
第139条第1項 都道府県に知事を置く。

    第三款 補助機関
第161条第1項 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。
第172条第1項 前十一条に定める者を除くほか、普通地方公共団体に職員を置く。

 つまり、石原前都知事は、豊洲移転問題について自らの判断と責任において意思を決定しており、副知事以下の職員は、その意思決定を補助しただけなのです。

 そうであるにも関わらず、「都庁全体の流れ」に逆らえないというのはどういうことなのでしょうか。

 補助機関である職員達の意向に、行政庁である都知事が逆らえなかったとでも言うのでしょうか。

 たとえば、安倍首相が「国全体の流れに逆らえなかった」とか、麻生財務大臣が「財務省全体の流れに逆らえなかった」とか言ったら、国民はどのように感じるでしょうか

 明らかな違和感を感じませんか?

 実際のところ、国の行政権は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織する合議体である内閣に帰属する(憲法66条1項)のに対し、地方公共団体の行政権は、知事のみに単独で帰属します(地方自治法第138条の2、第138条の4第1項)。

 これは独任制と呼ばれていて、いわば、アメリカ合衆国における大統領と同様の立場にあるのです。

 つまり、国における内閣総理大臣よりも、東京都における東京都知事の方が、より強い力を持っているということです。

 強い力を持っているにも関わらず、「大きな流れ」に「逆らいようがなかった」というのは、筋違いも甚だしいでしょう。「逆らいようがなかった」ではなく、「逆らわずに進めてしまった」というのが正確なところでしょう。

 また、「移転先を豊洲にする方向性は、青島都知事の頃から決まっていたことである」ということを石原前都知事は述べていますが、選挙を通じて石原慎太郎氏が新たに都知事となった時点で、当該時点における東京都民1000万人超の民意は石原慎太郎氏に託されているのです。

 実際のところ、移転先を豊洲にする方向性は、青島都知事の頃からあったのかもしれません。

 しかし、それを既定路線として無批判に受け入れ見直しを図ることなく、その流れにただただ流されていったというのでは、都知事としての職務を怠慢していたということを自白していることになります。

 特に、猪瀬・舛添といった短期の都知事ならまだしも、石原慎太郎氏は、4期(1999年~2012年)も都知事の職についていたわけで、そのような大きな存在都庁全体の流れに逆らえないなんてことは言うべきではないですし、実際にはありえないでしょう。

 現に、小池都知事は、就任から1年未満でありながら、その大きな流れに逆らっている訳ですから。

終わりに

 と、証人喚問における石原氏の発言に、許容し難い言葉があったのでこのような文章を書きましたが、私本人としては、別に石原都知事が責任を負わされようが当時の意思決定プロセスがどうであろうが、正直どうでもいいです。

 東京都民である私が望むのは、安心・安全に市場移転が完了することと、経済的・効率的な都政運営なのです。

 石原氏の証人喚問をはじめとした市場移転問題の調査のために、一体いくらの税金がつぎ込まれているのでしょうか

 国会1日あたり3億円かかると言われていますから、大組織である都議会の運営にもそれなりにかかっていることでしょう。

 今回の件については、いずれ小池百合子都知事が知事の職を辞された後に、石原氏同様に責任を問われないためのパフォーマンスであるようにも思います。

 確かに、築地市場にしても豊洲新市場にしても、市場の安心が確保されることは大事ですが、政治家の保身などの周辺部分に、多額の税金が投入されるのは望ましいことではありません。それは、多くの都民も同じ思いではないでしょうか。

 一刻も早く茶番を終わりにして、行政運営上の重要部分に、都知事及び都庁職員の時間並びに税金をつぎ込んでいただきたいものです。