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【共謀罪?】組織的犯罪処罰法改正案が自民党に強行採決されそうな予感

日本の決意

安保関連法案・TPP関連法案に引き続き、組織的犯罪処罰法改正案が強行採決されるおそれ

 2017年3月21日、組織的犯罪処罰法の改正案が閣議決定されました。

 これにより、同法は今国会に提出され、審議されることになります。

 このことにあまり関心のない国民も多いとは思いますが、行政関係者及び法律関係者の中ではかなり大きな関心事になっています。

 なぜこの法案が大きな注目を集めているかというと、組織的犯罪処罰法の改正案にいわゆる「共謀罪」を創設する規定が盛り込まれているからです。

共謀罪とは?

 「共謀罪」と聞いて、ピンとくるのは法律を学んだことのある方だけでしょう。

 「共謀罪」というのは、「殺人罪」や「窃盗罪」のような独立した犯罪類型ではありません。

 「共謀罪」というのは、「未遂罪」のように、他の犯罪行為に付随する犯罪類型です。

 皆さんも、ニュースやドラマの中で「殺人未遂罪」や「強盗未遂罪」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 「未遂罪」というのは、例えば、「相手を狙って拳銃を撃ったけれどもハズしてしまった」というように、犯罪を実行しようと行為に出たけれども結果的にその犯罪を最後まで実行しなかった(できなかった)場合に処罰するための犯罪類型です。

 実際に、「相手を狙って拳銃を撃つ」という悪いことをしている(危険な状態を生じさせている)のですから、結果が発生しなかったからといって完全にその責任を問われないとするのは不合理だからです。

 しかし、日本の刑法においては、犯罪の意思を生じただけでは処分せず、それが具体的な結果・被害として現れて初めて処罰されるのが原則となっています。そうしないと、憎しみのあまり相手を殺すことを妄想したというようなことだけで逮捕され、刑務所に送られる等の刑罰が科されることになってしまいかねないからです。

 そこで、刑法には次のような規定があり、未遂犯として処罰される犯罪は、例外として個別に規定されることとなっています。

刑法

第44条 未遂を罰する場合は、各本条で定める

 たとえば、殺人未遂罪は次のように規定されています。

刑法

第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

第203条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する

 一方で、他人の所有物を故意に壊す「器物損壊罪」(刑法261条)等は、未遂犯の処罰規定がないため、他人の所有物を壊そうとしても結果的に壊れなければ処罰されることはありません。

 つまり、原則として未遂犯は処罰せず特に法律で定めがある場合に限り処罰することになっているのです。

 さて、先程、今回問題となっている「共謀罪」というのは、「未遂罪」と同様に、他の犯罪行為に付随する犯罪類型であると説明しました。

 「未遂罪」は、犯罪を決意して実行行為に移った段階で処罰対象となるという考え方です。

 一方、一般的に言われる「共謀罪」というのは、犯罪を決意してそのための話合い(共謀)を行った時に処罰するという考え方です。

 未遂犯の場合は、犯罪を決意して他の人とその計画について話し合ったとしても、実際に実行行為に出るまで処罰されませんから、話合い(共謀)の段階で処罰するというのは、処罰のタイミングがかなり早まることになります。

 処罰のタイミングが早まるということは、それだけ人々の行動の自由が制約されるということですから、「自由」や「権利」を重視する法律関係者は、そのことから共謀罪についてかなり敏感になっているのです。

 なお、今回閣議決定された組織的犯罪処罰法改正案においては、単なる「共謀」だけでは処罰対象とせず、「物品や資金の手配」や「関係場所の下見」といった「準備行為」をして初めて処罰対象としています。したがって、今回の改正は、厳密な意味での「共謀罪」の創設ではありません

 ですから、今回の法案について「共謀罪法案」と揶揄して批判し続けるのはいかがなものかというのが個人的な考えです。

実際、今回の法改正はどうなの?

 しかし、だからといってこの法案を無批判に肯定できるかというとそうではありません

 「共謀」に加えて「準備行為」を必要とするとはいえ、今回の法改正により処罰範囲が大きく広がるのは確かです。

 処罰範囲を広げるということは、国民の権利・自由を制約するということですから、その必要性と合理性について政府の側からきちんと説明されなければなりません。

 しかし残念ながら、今回の組織的犯罪処罰法改正案について、政府からは十分な説明がされていません

 「国際組織犯罪防止条約の締結に必要である」といった形式的な説明に終始していますが、実際には今回の法律案には条約と関連する内容を大幅に超えた内容が盛り込まれています。

 「なぜ条約の締結に必要な範囲を超えて法改正をすることが必要なのか」という実質的な理由について合理的な説明がなされない限り、今回の法改正を認めるべきではないでしょう。

 ただ、実際のところ、このことについて納得行く説明はなされないように思います。

 与党である自民党の横暴に歯止めをかけるべき野党は、森友学園の問題等で首相個人を攻撃することに時間を割き過ぎで、本来議論すべき法案等について十分な時間を割こうとしないからです。

 また、近年の民主党のイメージの悪さから、「民主党が嫌いだから自民党を応援する」というような国民が多く存在していることも、自民党の横暴を助長することになるでしょう。

 個人的には、結局十分な説明がなされないまま、本件法案は今国会で可決されることになるのだろうと思っています。というのも、今の自民党はいわゆる「強行採決」ができるからです。

強行採決?

 現在、衆議院において、自民党と公明党の合計で326議席を占めています。これは、総議席数475のうち3分の2を超えています。

 衆議院で議席の3分の2を超えているということは、法案が例え参議院で否決されたとしても、衆議院で可決できるということです。

 まあ実際には、参議院において自民公明が過半数を超えているので、再議決すらなく可決するのでしょうけれど。

 本来、国会は、「民意の反映」と「民意の統合」の場です。

 与党と野党が相反する意見を持っていたとしても、国会の審議の過程で互いに歩み寄り統一的な意思形成をするというのが、現在の日本における立憲民主主義のあるべき姿です。

 しかし、現在の安倍政権は、2015年の安保関連法案及び2016年のTPP関連法案の審議において、野党からの質問に対して十分な説明をせず、国会において民意が統合されたと考えられない状態で、多数決原理により法案を可決した実績があります。

 これらを「強行採決」と呼ぶべきかは微妙なところですが、本来国会が果たすべき役割が十分に果たされていないのは確かです。

 野党からの質問に有耶無耶な回答をして時間切れにし、十分な審議がなされない状態で、多数決原理だけで議決がなされてしまう事態許されるべきではありません

 このことは、日弁連憲法問題対策本部副部長である伊藤真先生が、国会の参考人招致で語った次の動画を見て頂くとより納得して頂けるかと思います。

 個人的に、現在の自民党政権は嫌いではありません。むしろ、外交や経済政策に積極的に臨む姿勢は評価されるべきだと思いますし、安倍首相を中心とする閣僚陣の口の上手さには畏敬の念すら覚えます。

 しかし、本件は国民の権利に大きな影響を与える非常に重大な法案ですから、十分な説明をしないで、多数決原理だけに基づく横暴な可決をすることだけは絶対に許されません

 なお、マスコミの報道などを見てみても、今回の組織的犯罪処罰法改正案については、賛成派と反対派の議論が噛み合っていなくて、結局国民に十分な理解がなされない懸念があるので、近日中に中立的な立場から本件の問題の整理をした記事を公開したいと考えています。

 こういった真面目なエントリーは、あまり読者の受けがよくないのですけれど、そちらもお読みいただければ幸いです。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

 

→続きを書きました