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3年でエリート公務員辞めた結果…

月間30万PV以上!元国家公務員(総合職・旧1種)による備忘録。通称「さんエリ」

憲法に自衛隊を明記したい安倍首相の論調はさすがに受け容れられない

安倍政権の「正体」―週刊東洋経済eビジネス新書No.41

安倍首相……

 憲法記念日、安倍首相が「憲法改正を求める集会」に憲法改正に関するメッセージを出されました。 

 個人的に、安倍首相は嫌いではありません。でも、今回のこの件については、安倍首相の腹黒さが噴出してしまっているように思われます。

 一番気になったのは次の部分です。

 例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで、24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です

 私は、少なくとも、私たちの世代の内に、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。

 もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います。

 確かに、現在の日本において、自衛隊に対する国民の信頼は厚いとも言えます。

 それはひとえに、東日本大震災や熊本地震、関東東北豪雨等において、警察、消防とともに災害救助の活動をしたからです。

 しかし、災害救助というのは、本来の自衛隊の任務ではありません

 そもそも国民の命を守る任務を負っているのは、警察であり、消防なのです。

 自衛隊は、あくまでも、自衛のために有しているその力を、災害救助に転用しているだけです。

 逆に、国民が自衛隊の災害救助以外の活動を目にする機会は殆どありません(あるとすればブルーインパルスの航空ショーくらいでしょうか)。

 よく「自衛隊は国民を守るためのもの」という方がいらっしゃいます。もちろん、間接的には国民を守ることにはなるでしょうが、しかし、本来、自衛隊はを守るためのものであり、国民を守るのは警察の任務です。

 国を守るか国民を守るかという二者択一の状況で、自衛隊が選択するのはどちらであるかということを考えてみてください。

 もちろん、自衛隊による災害救助活動は非常にありがたいことではありますが、①いわば"軍隊"側面と②警察的側面の二面性を有している自衛隊について、警察的側面のみから肯定し、憲法の中で明記する気運を高めようとするのは、姑息です。

 確かに、自衛隊を違憲だと考える人もいますが、政府の活動に対して違憲の可能性を指摘するのは、自衛隊だけに限られた話ではありません思想・表現の自由を憲法が保障している以上、何にだって批判が生じるのは当然のことです。

 また、憲法学者の多数派が、自衛隊を違憲だととらえているかについては、かなり怪しいです。

 2014年に政府が解釈変更によって、自衛権発動のための条件を変更したことについて批判する憲法学者は多いかもしれませんが、自衛隊の存在自体については、独立国として当然認められる自衛のための必要最小限度の実力として、一切の武力の放棄を規定した9条2項に違反しないとし、政府の立場に一定の理解を示す学者も多くいるように思われます。

 それを、自衛隊の災害救助活動をダシに、自衛隊の合憲性に関する議論を一切封じ込めようとするのは、一種の言論統制の感さえあります。

 安倍首相に対しても、国内外から色々なプレッシャーがかかっているのは分かります。しかし、だからといって、国民を脅すような形で、特定の集団の利益を実現しようとするのは、一国の元首としてあるまじき態度です。

 また、憲法に自衛隊を明記しなければその存在の合憲性を断言できないということであれば、それは、政府自らが、現行憲法の下では自衛隊は違憲となりうるということを認めていることに他なりません。

 議論をすべきことは議論すべきですが、しかし、議論したという形だけとって、自己の望みを実現してきた過去のある安倍政権ですから、議論の俎上に上げることすら、慎重になるべきであると思います。