注意
既存の法学ガールシリーズとは異なり、あくまでも勉強中の大学院生が自分の理解のために書いているものです。したがって、誤解・誤謬が含まれる場合がございます。
また、適宜文献を参照しておりますが、参照元に関する記載が粗い場合がございます。
その点御容赦の上、懐疑的にお読みくださいますようお願いいたします。
第10話 違法性
違法性阻却事由は、およそ①正当防衛、②緊急避難、③正当業務行為、④同意、の4つだな。①②③は条文の根拠があるけれど、④同意については条文に根拠がない超法規的違法性阻却事由であって実質的違法性論から導かれるということは前にやったな。
正当業務行為は、医者が手術をするような簡単なものもあれば、西山記者事件で問題になったような憲法上の取材活動の自由と国家の機密を比較衡量するようなややこしい事例まであるな。結果無価値論的には、判例のように社会的相当性を考慮すべきではないというけれど、ここでは社会的相当性を考慮したほうが妥当な結論が導かれると思うから、判例の立場をとっておこう。
違法性の本丸は正当防衛だ…。
「正当防衛ってさ、論点がたくさんあって大変だったイメージがあるよね」
確かに論点が多いけれど、刑法36条に示された要件に即して考えれば、そんなにややこしくないよ。
「刑法36条に示された要件とは?」
①急迫不正の侵害、②自己又は他人の権利、③防衛の意思、④相当性(やむをえずにした行為)だね。
たとえば、喧嘩闘争の場合、(a)侵害を予期し、(b)積極的加害意思がある場合には、①侵害の急迫性の要件を満たさないから、正当防衛が成立しないことになる。
一方で、積極的加害意思があったとしても、侵害を予期していなければ急迫性は否定されず、防衛の意思についての判断になる。その場合、専ら攻撃の意思で対抗する積極的加害行為があれば、③防衛の意思が否定されて正当防衛が成立しないことになるね。
喧嘩闘争と似ていてややこしいのが、自招侵害のケースだ。この場合、次の(a)(b)(c)の要件を満たすと、刑法36条を離れて、「反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえない」という観点から違法性阻却を否定することになる。具体的には、(a)侵害者の攻撃が、防衛者の暴行に触発された、時間的場所的に一連一体の事態といえること、(b)侵害者が不正の行為によって招いたこと、(c)第一暴行と第二暴行が均衡を失していないという要件だね。
それから、④相当性については、次のような判断枠組みで考えればいい
(a)実質的に武器対等か→(b)武器対等でなくても必要最小限度の防衛手段であるか
「うんうん、勉強になるよ」
それ以外にも細かい論点はあるけれども、重要なのはとりあえずこんなところかな。緊急避難についても同様に、刑法36条に示された要件を満たすかを検討すればいい。もっとも、正当防衛と緊急避難では「やむをえずにした行為」の意味が異なるということには注意が必要だけれどね。
「緊急避難においては、法益の均衡が必要になるということだね」
同意についても、前に罪刑法定主義のところでやったように、202条との均衡論の話だけ押さえておけばいいと思う。安楽死の話とかは試験では出しにくいからね。
「ここまで来たら、最後まで行ってしまおう! 責任の話だね!」