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【ロースクール】法曹養成制度改悪は終わらない【5年一貫コース】

変貌する法科大学院と弁護士過剰社会

4+2ー1=5

 ロースクール制度の改革について、次のような案が文部科学省から出されています。

 要するに、現在、司法試験の受験資格を得るためには、最短で、大学(法学部)4年+法科大学院2年の計6年かかるところ、大学での学習を3年にし、計5年で司法試験を受けられるコースを設置するということらしいです。 

 しかし、ここで思い出して頂きたいことがあります。

 それは、法科大学院設置前は、大学を卒業せずとも、司法試験を受けることができたということです。

 つまり、以前は、在学中に司法試験に合格する一部の天才を除けば、大学での4年間の学習を経た後で司法試験を受験していたということです。

以前:大学4年      =
現在:大学4年+大学院2年=
将来:大学3年+大学院2年=

歪みすぎていませんか?

 これまでの流れをまとめると、次のようになります。

 新司法試験への移行に伴い、もともと大学4年の勉強でよかったところ、2年の大学院生活を経なければ司法試験受験資格を得られないようにしました。

 でも、それだと期間が長過ぎて法曹の人気が低迷したので、大学での修学期間を4年から3年に減らします。

 そうしたら今よりも受験に必要な期間が減るので、法曹志望者も増えるんじゃないの?

 もともと国の方で2年間上乗せしておいて、1年減らすってどういうことなんでしょう?

 しかも、法科大学院設置前から存在していた、法学部での学習期間を1年減らすとか…。

 もういっそのこと、上乗せした大学院の2年間をそのまま削って元通りにしてしまえばいいのに…。

利権の臭いがする

 どうして、文部科学省はこのような馬鹿げた提案をするのでしょうか。

 私はこの背景に、私立大学から文部科学省への、利権を巡った圧力が存在しているのではないかと思います。

 なぜならば、国立大学である東京大学において、5年一貫コースの設置は不可能だと思われるからです。

 東京大学では、学部1・2年生の学生は、教養課程に所属し、幅広い分野の教育を受けます。いわゆる文科1類だとか理科3類だとかです。

 したがって、専門課程である法学部の授業を受けるのは、基本的には3・4年生の間だけなのです。

 このような制度の上、東京大学では5年一貫コースの設置はできないでしょう。

 そこで、全国的に5年一貫コースの導入が進められたとしても、東京大学においてはこれまで通り6年かかることになるのです。

 他方で、5年一貫コースを導入した私立大学は、勉強にかかる期間の短さをウリにして、学生を呼び込むでしょう。場合によっては、東京大学志望の学生も、志望先を変えるかもしれません。それを私立大学が狙って文部科学省に圧力をかけているのではないでしょうか。

 別に私は、「東京大学から私立大学に志望先を変えるのがけしからん」と言いたいのではありません。

 私立大学が利権を獲得するために、法曹養成制度をさらにメチャクチャにするのは絶対に許せないということを申し上げたいのです。

法科大学院卒業を受験資格から除けばいいのに

 それでは、法曹志望者の減少を食い止めるためには、どうすればいいのでしょうか。

 3つ、私の考えを述べたいと思います。

①法科大学院を卒業したら、法曹資格を当然に得られるようにする

 一番簡単なのは、法科大学院を卒業したら、司法試験合格と同じ資格を得るようにすることです。

 もっとも、弁護士や検察官、裁判官といった法曹の仕事は、人の人生を左右する重大な仕事ですから、一定の能力の担保が必要です。そこで、法科大学院の進級・卒業試験を厳格に行う必要はあると思います。

 大学ごとに進級・卒業の難易度が変わるとそれは不公平ですから、全国統一の進級試験・卒業試験を実施するのも案だと思います。

 このような制度にすると、もしかしたら弁護士の人数が増加するのにあわせて、質の低い弁護士が増えるという心配があるかもしれません。

 しかし、上記のとおり全国統一で卒業試験を厳格に行うことで、法曹としての能力が不十分な人が法曹になることは防ぐことができます。

 また、万が一レベルの低い弁護士が出てきたとしても、そういう人は競争によって淘汰されていけばいいのです。

 情報化が進んだ社会ですから、質の高い弁護士・質の低い弁護士の評判は、すぐに広まりますよね。

 腕の悪い医者のいる病院の悪評が広まるのと同様です。

(なお、医者の場合、生命を直接扱う仕事であるにも関わらず、医学部を卒業すれば9割が医師免許を取得できます。弁護士は、医者と比べれば、「1時間以内に適切な処置をしなければ人が死ぬ」みたいな場面には出くわさないのですから、果たして医者よりも厳しい試験にする必要があるのでしょうか)

 また、法律関係の相談は、(治療を急ぐ病気とは違って)比較的時間の猶予もあり、セカンドオピニオンも得やすいですから、質の低い弁護士が世の中に増えたからといって、国民が直接的に不利益を被ることも少ないように思うのです。

②法科大学院卒業を、司法試験受験資格から除く

 現在の司法試験は、基本的に法科大学院を卒業しなければ受験できないことになっています。

 そもそも受験資格を制限するから、受験までの長い期間を敬遠し、法曹志望者が減少するのです。

 確かに、法科大学院での教育は、法律実務家の養成にとって、重要かもしれません。

 しかし、だからといって、司法試験の受験資格を法科大学院卒業者に限定する必要はないでしょう。

 法律実務家になるための司法試験を突破する能力があるのであれば、別に法科大学院を卒業する必要はないと思われるからです。

 こんなことをいうと、「法科大学院では、司法試験では図れない能力を養っているんだ」という反論があるかもしれません。しかし、それならいっそのこと、上述のように法科大学院を卒業したら直ちに法曹の資格を得られるようにすればいいと思うのです。なぜならば、法科大学院では、憲法・民法・刑法・民訴・刑訴といった、司法試験で問われる科目の授業にも多くの時間が割かれているからです。

 どんな人であっても、司法試験を受けることができる。しかし、より深く法律実務に必要な知識を修得したい学生は法科大学院に進学する。そんな仕組みこそが理想なのではないかと思うのです。

 旧司法試験時代の法学部進学者だって、そうですよね? 別に、法学部を卒業しなくても旧司法試験を受けることができるけれど、専門的な法律の学習をしたいから法学部に進学したというのが、当時の法曹志望者の多数派だったはずです。

③分野別弁護士制度の導入

 現在、司法試験の受験科目はかなり多くなっています。

 憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法に加え、労働法・国際法等の選択科目があります。

 しかし、果たして、実際の弁護士は、これらの全ての知識を実務で用いているのでしょうか。

 もちろん、それぞれの科目の知識が連動しているのは確かでしょう。

 しかし、刑事専門の弁護士が、商法の知識を使うでしょうか(もちろん、全く使わないわけではないと思いますが)。

 憲法・刑法・刑事訴訟法に加え、それに関連する民法の知識があれば、刑事弁護には足りるのではないでしょうか。

 現在は、全ての法律の知識をフルセットで揃えなければ弁護士の仕事をすることが一切できません。

 それが、法曹になるためのハードルを高くしすぎていると思うのです。

 刑事系科目の試験に通った人は、民事訴訟における代理人にはなれなくても、刑事訴訟の代理人となることができる「刑事専門弁護士」となれたり、

民事系科目の試験に通った人は、「民事専門弁護士」となれたり、

公法系科目の試験に通った人は、「行政専門弁護士」となれたりするような、

分野別の弁護士制度を導入すれば、法曹への参入ハードルはかなり低くなり、志望者は増えると思うのです。

 もっとも、民事においても差止訴訟等においては憲法の知識を使うこともあります。また、刑事事件の被告人が、被害者から損害賠償請求の民事訴訟を提起され、その業務も依頼されることもあると思います。そういう場合には、フルセットで全ての分野の弁護士業務を行うことのできる「本来の弁護士」に依頼すればいいのです。

終わりに

 今の私にとって身近な話題ということもあって、思っていることを連々と書いてしまいました。

 上に書いたことの一部でも実現すれば、現在の法曹養成制度よりも良くなると思うのですが、既存の弁護士による既得権益や、私立大学の利権などを考えると、実際には実現できないのでしょうね。

 「法曹の仕事が重要である」という認識の下、その根幹となる養成制度をどんどん歪めていく日本社会の構造は、とても残念です。

 まあ、どんな社会であろうと、自分が置かれた環境の中で自分ができることをやるだけですね。