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日本人向けにBinanceや海外仮想通貨取引所を紹介するのは違法?

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海外の仮想通貨交換所を日本人向けに紹介するのは違法なのか

 最近、ツイッターやブログでよくみる、バイナンスやKuCOINへの紹介

 これらは海外の取引所で、友達紹介システムがあるためにインフルエンサーを中心に流行しています。

 ところが、twitterで次のようなツイートを発見。 

 確かに、資金決済法には次のような規定があります。

(外国仮想通貨交換業者の勧誘の禁止)
第63条の22 第六十三条の二の登録を受けていない外国仮想通貨交換業者は、国内にある者に対して、第二条第七項各号に掲げる行為の勧誘をしてはならない。

(仮想通貨交換業者の登録)
第63条の2 仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

第2条第7項 この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。
一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

 ただ、63条の22の規定が、ブロガー等に適用されるのかはかなり微妙なところです。

 というのも、あくまでも63条の22が規制の対象としているのは、外国仮想通貨交換業者だからです。

 それに、63条の22に違反したところで、資金決済法に罰則はありません(もっとも、罰則はないが違法というのは、日本の法律ではよくあることです)。

第8章 罰則
第107条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第七条の登録を受けないで第三者型前払式支払手段(第三条第五項に規定する第三者型前払式支払手段をいう。第三号において同じ。)の発行の業務を行った者
 二 不正の手段により第七条、第三十七条又は第六十三条の二の登録を受けた者
 三 第十二条の規定に違反して、他人に第三者型前払式支払手段の発行の業務を行わせた者
 四 第四十二条の規定に違反して、他人に資金移動業を営ませた者
 五 第六十三条の二の登録を受けないで仮想通貨交換業を行った者
 六 第六十三条の七の規定に違反して、他人に仮想通貨交換業を行わせた者
 七 第六十四条第一項の規定に違反して、内閣総理大臣の免許を受けないで資金清算業を行った者
 八 不正の手段により第六十四条第一項の免許を受けた者
第108条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第五十六条第一項の規定による資金移動業の全部又は一部の停止の命令に違反した者
 二 第六十三条の十一第一項の規定に違反した者
 三 第六十三条の十七第一項の規定による仮想通貨交換業の全部又は一部の停止の命令に違反した者
 四 第八十二条第二項の規定による業務の全部又は一部の停止の命令に違反した者
 五 第九十六条第二項の規定による業務の全部又は一部の停止の命令に違反した者
第109条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第二十条第二項、第六十一条第三項若しくは第六十三条の二十第三項の規定による公告をせず、又は虚偽の公告をした者
 二 第四十三条第一項の規定に違反して、供託を行わなかった者
 三 第四十六条の規定による命令に違反して、供託を行わなかった者
 四 第五十二条、第六十三条の十三若しくは第七十八条の規定による帳簿書類の作成若しくは保存をせず、又は虚偽の帳簿書類の作成をした者
 五 第五十三条第一項若しくは第二項、第六十三条の十四第一項若しくは第二項若しくは第七十九条の規定による報告書若しくは第五十三条第三項若しくは第六十三条の十四第三項若しくは第四項の規定による添付書類を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書若しくは添付書類を提出した者
 六 第五十四条第一項若しくは第二項、第六十三条の十五第一項若しくは第二項若しくは第八十条第一項若しくは第二項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
 七 第五十四条第一項若しくは第二項、第六十三条の十五第一項若しくは第二項若しくは第八十条第一項若しくは第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
 八 第六十五条第一項の規定による免許申請書又は同条第二項の規定による添付書類に虚偽の記載をして提出した者
第110条 第二十六条又は第二十七条第一項の規定による業務の全部又は一部の停止の命令に違反した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第111条 第七十四条第一項若しくは第二項(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)又は第九十三条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第112条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第五条第一項の規定による届出書若しくは同条第二項の規定による添付書類を提出せず、又は虚偽の記載をした届出書若しくは添付書類を提出した者
 二 第八条第一項の規定による登録申請書若しくは同条第二項の規定による添付書類、第三十八条第一項の規定による登録申請書若しくは同条第二項の規定による添付書類又は第六十三条の三第一項の規定による登録申請書若しくは同条第二項の規定による添付書類に虚偽の記載をして提出した者
 三 第十四条第一項又は第二項の規定に違反して、供託を行わなかった者
 四 第十七条の規定による命令に違反して、供託を行わなかった者
 五 第二十二条の規定による帳簿書類の作成若しくは保存をせず、又は虚偽の帳簿書類の作成をした者
 六 第二十三条第一項の規定による報告書若しくは同条第二項の規定による添付書類を提出せず、又は虚偽の記載をした報告書若しくは添付書類を提出した者
 七 第二十四条第一項若しくは第二項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
 八 第二十四条第一項若しくは第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
 九 第九十五条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
 十 第九十五条の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第113条 第五十五条、第六十三条の十六、第八十一条又は第九十六条第一項の規定による命令に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。
第114条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
 一 第五条第三項、第十一条第一項、第四十一条第一項若しくは第六十三条の六第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 二 第十三条第一項の規定による情報の提供をせず、又は虚偽の情報の提供をした者
 三 第二十条第四項、第六十一条第七項若しくは第六十三条の二十第七項において準用する会社法第九百五十五条第一項の規定に違反して、調査記録簿等(同項に規定する調査記録簿等をいう。以下この号において同じ。)に同項に規定する電子公告調査に関し法務省令で定めるものを記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は同項の規定に違反して調査記録簿等を保存しなかった者
 四 第二十五条の規定による命令に違反した者
 五 第三十条第二項の規定による届出書若しくは同条第三項の規定による添付書類を提出せず、又は虚偽の記載をした届出書若しくは添付書類を提出した者
 六 第三十条第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 七 第六十九条第二項若しくは第七十七条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 八 第七十六条の規定に違反した者
 九 第八十九条第三項の規定に違反して、その名称中に認定資金決済事業者協会の会員(第八十七条第二号に規定する会員をいう。以下同じ。)と誤認されるおそれのある文字を用いた者
 十 第百条第三項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をした者
第115条 法人(人格のない社団又は財団であって代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
 一 第百八条(第五号を除く。) 三億円以下の罰金刑
 二 第百九条(第一号を除く。) 二億円以下の罰金刑
 三 第百十条又は第百十二条(第一号、第二号、第九号及び第十号を除く。) 一億円以下の罰金刑
 四 第百七条、第百八条第五号、第百九条第一号、第百十二条第一号、第二号、第九号若しくは第十号、第百十三条又は前条 各本条の罰金刑
2 人格のない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその人格のない社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
第116条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
 一 第二十条第四項、第六十一条第七項又は第六十三条の二十第七項において準用する会社法第九百四十一条の規定に違反して、同条の調査を求めなかった者
 二 第二十条第四項、第六十一条第七項若しくは第六十三条の二十第七項において準用する会社法第九百四十六条第三項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者
 三 正当な理由がないのに、第二十条第四項、第六十一条第七項又は第六十三条の二十第七項において準用する会社法第九百五十一条第二項各号又は第九百五十五条第二項各号に掲げる請求を拒んだ者
第117条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の過料に処する。
 一 第三十三条第一項、第六十一条第一項若しくは第四項若しくは第六十三条の二十第一項若しくは第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 二 正当な理由がないのに第八十九条第一項の規定による名簿の縦覧を拒んだ者
第百十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。
 一 第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 二 第八十九条第二項の規定に違反して、その名称中に認定資金決済事業者協会と誤認されるおそれのある文字を用いた者

バイナンスの紹介が仮想通貨交換業に当たる?

 もうひとつ考えられるのは、海外仮想通貨取引所の紹介が、2条7項2号の「媒介、取次ぎ」に当たるかもしれないということです。

第2条第7項 この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。
一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

 もしバイナンスの紹介が2条7項の仮想通貨交換業に当たるとするならば、それを登録なく行うと63条の2違反となり107条5号により刑罰が科されることになります。

(仮想通貨交換業者の登録)
第63条の2 仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

第107条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
五 第六十三条の二の登録を受けないで仮想通貨交換業を行った者

 ただ、海外仮想通貨取引所への登録の勧誘「(仮想通貨の売買の)媒介」や「(仮想通貨の売買の)取次ぎ」に当たるかはかなり微妙なところでしょう。

 刑罰規定は罪刑法定主義(憲法31条等)から厳格に解釈されるところ、やはり海外取引所を紹介して勧誘する行為自体は、「仮想通貨売買の媒介」や「仮想通貨売買の取次ぎ」には当たらないように考えられます。

 2条7項2号の規定は本来「Zaifの口座開設が出来てない人の代わりに、日本円を預かって、その分だけCOMSAを買ってあげる(仮想通貨売買の取次ぎ(顕名があれば代理))」とか、「取引所の外でQASHを買いたい人とQASHを売りたい人同士を紹介して手数料をもらう(仮想通貨売買の媒介)」とか、そのような行為を指すものと解されるからです。

※「代理」、「取次ぎ」、「媒介」については資金決済法の中に定義規定がないため、民法99条以下、商法502条等を手がかりに考えることになるでしょう

 もし法令の文言が「63条の2の登録を受けていない仮想通貨交換業者への斡旋」や「63条の2の登録を受けていない仮想通貨交換業者への登録の媒介又は取次ぎ」を禁ずるように書かれていれば、アウトとなるでしょうけれど…。

 また、そもそも2条7項の仮想通貨交換業については、「業」として行うことが予定されていますから、もし63条の2違反を問われたとしても、その観点から打ち返すことはできそうですね(反復継続して収益を上げる意思で行っているかで判断が分かれる)。

民法上の不法行為責任や不当利得返還請求を受ける可能性

 他に考えられるとすれば、意思決定の自由の侵害や、専門的な知見を有した人から素人への勧誘行為ということで不法行為責任が問われる可能性もなきにしもあらずです…。

 また、紹介者(ブロガーやインフルエンサー)に紹介料を支払って自らを宣伝させている海外仮想通貨交換業者は、63条の22に該当するため、今後日本で仮想通貨取引交換業の認可が下りなくなる可能性があります。

 バイナンスなんかは、日本に進出しようとしているので、かなり深刻な問題になりますね。

 すると、バイナンスとしては日本に進出するために、過去に支払った紹介料の返還を紹介者(ブロガーやインフルエンサー)に求めてくる可能性があります。

 返還を求めた場合の法律関係が日本法によるのか中国法によるのかは要検討ですが、「法の適用に関する通則法」によって日本法が適用される可能性もあり、民法704条により悪意の不当利得者として利息付きで報酬額の返還を求められる可能性もあります。(そうなった場合、不法原因給付(708条)によって請求を跳ね返すことも考えられますが)

 まあ、紹介料を回収したところで、バイナンスが紹介者を通じて日本居住者を登録させた事実は消えないので、このような展開となる可能性も低いように思われます

終わりに

 以上、まだまだ検討が必要ですし、所管省庁である金融庁の見解を聞く必要もありそうですが(ただし金融庁の意見が法律解釈的に正しいかとは限らない。裁判で覆る可能性は十分にある)、海外の仮想通貨取引交換業者の紹介に関する法律問題の検討でした。

 基本的には問題はないけれども、全くリスクがない訳ではないという結論にひとまずしておきます。

 なお、ネット上で何の留保もなく「バイナンスやKuCOINは違法取引所だ」と称する記事が出回っていますが、あくまでも日本の資金決済法から見た場合の話です。

 別に、バイナンスやKuCOINが拠点を置く香港では違法とはされていません。

 例えば、麻薬取締法では国外含めて全ての人に麻薬の所持を禁じていますが、「バイナンスは違法取引所だ」というのは、オランダ国内で麻薬を所持しているオランダ人に「お前は麻薬を所持してるから違法だ」と主張しているようで的外れです。

 もちろん、バイナンスが日本国民をターゲットに自ら広告を打つようであれば、日本法の観点からその行為を違法(資金決済法に違反している)ということはできると思います。

 ただ、そのような前置きなく「違法だ!」と叫ぶことあまり生産的ではありません

 そもそも「違法」という言葉パワーワードですが、かなり幅のある概念です。刑法で論じる違法性と行政法で論じる違法性は全く異なるものですし、民法の中でも不法行為の際に論じる違法性と債務不履行の時に論じる違法性とは異なるものです。日常用語として使われる「違法」という言葉もまた、それらとは違う意味の場合があります。

 「バイナンスが違法だ!」という時の「違法」とは、単に「法律に反している」という意味にすぎないものと思われます。

 あくまでも、資金決済法の適用範囲主権の及ぶ範囲についての留保を置いた上で、登録を受けていない海外仮想通貨取引所の日本法での取扱いを論じるべきでしょう。