心が叫びたがってるんだ
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の長井龍雪監督が製作した劇場作品「心が叫びたがってるんだ」。ずっと見たいと思っていて、映画館に見に行こうかとも思っていたのですが、仕事に追われているうちにいつの間にか上映が終了してしまっていたので、この度、DVDを借りて見ることにしました!
導入はいいけど、終わり方が微妙かなぁ。
というか、「お城」から父親と知らない女性が一緒に出てくるのを目撃したことを無邪気に母親に話してしまう主人公の成瀬順は可哀想すぎます。やっちまったな!って感じです。
しかもそれで離婚した親から「すべてお前のせい」と言われたために言葉を口にすることができなくなってしまった主人公に対して、数年後も延々と「口をきかない子で、近所でも恥ずかしい」と罵り続ける母親。自分の発言が娘をそんな状況に追い込んでしまったんだということを自覚せずに弱い立場にいる娘を責め続けるとか、最悪ですね。
まあでも、その成瀬順自体も、ちょっと最後だけはちょっといただけない。色恋沙汰を原因として、自ら発案したミュージカルをほっぽり出すとか、彼女の願いを叶えるために協力してきたクラスメートたちに対して最悪のテロ行為です。仁藤さんがハイスペックすぎたから、成瀬順の代わりに途中まで演技をすることでなんとかなったものの、そうじゃなければ、悲惨なことになっていたことでしょう。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」と比べると、万人受けする番組だと思います。主人公は、あの花みたいに幼すぎる風貌をしていないし、カツラかぶってワンピース着て女装しながら森の中を疾走する変態男は出てこないし、安城鳴子みたいな変なあだ名のキャラがいないからです。家族で見ても安心です。
逆に、あの花の「めんま、みーつけた!!!」みたいな感動はないのですが、あれはめんまが死別しているから起こりうる感動であって、登場人物が全員生存しているこの作品においては、最後の舞台のシーンとか、最大限感動を引き出すことができていると思います。
見る前は、扱っているテーマに心はあまり惹かれなかったのですが、言葉を発しなくなった理由が上述のような両親の悲劇にあったので、先天的な言語障害じゃなく、入りやすい作品でした。
成瀬順がなかなか滑らかに言葉を発しないので、福山雅治・藤原さくらの「ラブソング」を見ている時みたいに、見ていて息苦しくなる作品でもありますが、それを押しても見た方がいい作品だと思います。
長井龍雪監督には、今後も素晴らしい作品を作り続けてほしいです。ジュブナイル作品もいいけど、ちょっと大人になった20代の若者を描き出すような作品も観てみたいです。