松潤主演「99.9 刑事専門弁護士」最終回で検察官が使った"卑怯"な訴因変更
嵐の松潤主演の「99.9 刑事専門弁護士」がついに最終回を迎えました。
話自体は、第1話への原点回帰で、単純でしたが、中盤で出てきた「訴因変更」という言葉は耳馴れず、どうして香川照之や榮倉奈々が起こっているのかわからない人も多かったのではないでしょうか。
あらすじは次の通りです。
(あらすじ)
松本潤が弁護依頼を受けた被告人は殺人容疑をかけられていた。松本潤は静岡に行き、その被告人の、殺人事件のアリバイを発見するに至ったが、そのことを嗅ぎつけた検察は、訴因変更によって起訴状の中の犯行時刻を変更する。これによって、そのアリバイは使うことができず、被告人が無罪であることの別の理由を探すことになる。
訴因とは?
そもそも、「訴因変更」の「訴因」とは、起訴状に公訴事実を表示する手段で,犯罪事実を特定の構成要件にあてはめて法律的に構成されたもののことを言います。訴因は,できうるかぎり日時,場所,方法をもって罪となるべき事実を特定しなければならないものとされています (刑事訴訟法 256条3項) 。
刑事訴訟法
第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
4 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
5 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
日本の刑事裁判では、裁判の主体を検察官と被告人に預ける当事者主義を採用し、検察官が起訴するか否かを決める起訴便宜主義をとっているため、訴因は検察が設定し、裁判所は検察が設定した訴因に対してしか判断をすることができません。
ただし、日本の裁判制度では、判決確定後、同じ事件について改めて裁判で審理することを禁止しています(一事不再理(憲法第39条))。そのため、検察官に対しては、起訴後に、犯行時刻や犯罪の内容、当てはめるべき法律等、訴因を変更することが認められています。
憲法
第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。刑事訴訟法
第三百十二条第一項 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
もちろん、これは無制限に認められるものではなく、検察官が起訴した時に示した罪となるべき事実(公訴事実)の同一性が害されない限度に限られます。
今回は、単に犯行時刻を変更しただけであったため、この点も問題ありません。
もちろん、この変更が裁判官の心象を左右する可能性がありましたが、今回は、犯人の中丸雄一が殺害について自白していたため、多少の時間変更は問題ないという判断だったのでしょう。
結局、最初の時点でアリバイが必要だと主張していたのは香川照之の方で、最初から事実の全体像を探し求めていた松本潤にとっては、そこまで問題とならず、真犯人を見つけることができてよかったですね!!
すでに死んでしまった父親の無罪を裁判で証明することはできませんが、似たような事件で検察にやり返すことができた松本潤。彼の戦いはこれからも続いていくのだと思いますが、彼のような信念を持った弁護士は、実際にもいると思います。「それでも僕はやってない」で騒いでいた頃からずっと、刑事裁判の有罪率は変わりません。99.9のままです。
この記事をご覧になっている皆さんも、普段ワイドショーで刑事裁判の報道をしている時、世間の流れに流されて疑問を持つこともなく「有罪にちがいない」と思っている人が多いのではないでしょうか。このドラマを機に、そのような心構えを変えていくことが、好ましい社会を作っていくことになるかもしれません。
最終回は、小ネタもアツかった
最終回だけあって、父親の因縁も絡めたアツいストーリーだけでなく、小ネタも面白かったですね!詳しくは下の記事をご覧ください。