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ラ・キュベ・ミティーク「ソムリエ(甲斐谷忍)」それぞれの味(第5巻59話)

ソムリエ 5 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

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ラ・キュベ・ミティーク【ソムリエ(甲斐谷忍)第5巻59話】

 前回は、降りかかる災厄の責任を他人のせいにせず、自らの行動も省みるべく語りかける歴史を持つワイン「ボーヌ・グレーヴ・ヴィーニュ・ド・ランファン・ジェズュ」を御紹介しましたが、今回は、構成員それぞれが互いに精一杯働くことで集団として最大の成果を出せることを教えてくれるワインを御紹介します。

 今回のテーマは、「ソムリエ」第5巻第59話(それぞれの味)です。

 ソムリエ佐竹城は、統括ソムリエとして彼が務めるレストランの系列店に訪れていました。そこは、ソムリエ志村がリーダーシップをとってワンマンで店を仕切っていたのですが、それを面白く思っていなかった支配人が、クーデターを起こします。裏切られた志村は2週間ほど休みを取りますが、その間に支配人が、志村の敷いていた高級ワイン路線から格安ワイン路線に方向転換しようと企て、チリからワインを輸入して、チリワインフェアーを実施しようとします。ところが、チリから船で到着したワインは再発酵防止剤であるソルビン酸を入れていないワインだったため、瓶内で二次発酵してしまい、微発泡していて客に出せるような状態ではなくなってしまっていました。そのことにいち早く気付いた志村は、なんとか代わりとなるワインを求め奔走しますが、結局どこもチリワインを分けてくれません。そうして肩を落とした志村の元に届いた1台のトラック。そこには、佐竹城がこの事態を想定して発注したワインが入っていました。そのワインこそ、ラ・キュベ・ミティークだったのです。ただし、ラ・キュベ・ミティークはあくまでもフランスワイン。すでにチリワインフェアーを聞きつけた客が店に押し寄せています。しかしそこで志村は必死に頭を下げ、客に納得してもらいます。自分のミスではないのに店を守るために頭を下げる志村の姿に、強く心打たれます。

 もちろん、今回の事態を収束できたのは、この志村の必死で誠実な対応にあることでしょう。しかし、格安高品質なチリワインを求めてきた客を納得させるほどのワインを佐竹城が手配していたことも、事態の収束に貢献しています。

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 閉店後、志村は語ります。ラ・キュベ・ミティークの気品高い味わいは、数種類のブドウがバランス良くブレンドされそれぞれの個性を保ちつつ見事に調和しているところにある。シラー、ムールヴェードル、グルナッシュ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カリニャン。どれか1つがかけても、どれか1つが突出しても、この素晴らしい味わいは得られない。

 そして、これまでワンマンで店を切り盛りしてきた志村は思い至ります。従業員の個性を尊重せず、ワンマン経営をしてきた私が、今回のような事態を招いてしまったのだと。これからは必死で働く従業員一人一人を尊重しながら働いて行こうと。

 このお話、「ソムリエ」の中で一番好きです。必死で働くがゆえに、どうしても他人に任せられなくなってしまうことってありますよね。でも、仲間だって必死に働いているわけです。彼らを信用して、個々が十分に能力を発揮してこそ、集団としてベストなパフォーマンスを発揮できる。そんなことを語りかけてくれる、素晴らしいお話でした。

 さて、このラ・キュベ・ミティークですが、現実世界でも手軽に2000円程度で手に入るワインとなっています。ワインの値段は、美味しさではなくその希少性や知名度で決まります。手軽に飲めるおいしいワインを、職場の同僚や部活の仲間たちと分かち合うのもいいかもしれませんね!

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