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iPhone7「総務省指定」刻印問題に関する法的根拠

iPhone7に「総務省指定 MIC/KS 第EC-1600x号」の文字が刻まれている問題

 新機種発売の度に世間の注目を集めるiPhone。

 今回のiPhone7も、防水・防塵、Felica対応といった、機能面の強化はされているものの、それ以外のところで世間の話題をさらっているようです。

 既に周知のこととは思われますが、火種はこちら。

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 iPhone7の背面に刻まれた「総務省指定 MIC/KS第EC-1600x号」という文字ですね。

 これを、「カッコいい!!」と見る目もあるようですが、個人的には、アルファベットが羅列されている中に漢字が入り込んでいるのはデザイン的に気持ち悪いと思います。せめて「MIC/KS No.EC-1600x」というように、アルファベットだけで記入すればこの気持ち悪さは解消されるのに…。

 さて、それでは以下、この総務省指定の文字がどうして刻まれているのか、法律の根拠を解き明かしていきたいと思います。

「総務省指定」刻印に係る法的根拠(理由)

 まず、総務省が所管する電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)には、次のような規定があります。

電波法

(高周波利用設備)
第百条第一項  左に掲げる設備を設置しようとする者は、当該設備につき、総務大臣の許可を受けなければならない。
一  電線路に十キロヘルツ以上の高周波電流を通ずる電信、電話その他の通信設備(ケーブル搬送設備、平衡二線式裸線搬送設備その他総務省令で定める通信設備を除く。)

 (後略)

 ここで「左に掲げる」というのは、本来縦書きで官報掲載される法律において、第1号以下を指します。

 今回のiPhone7から搭載されたFeliCa(おサイフケータイなどに必要なシステム)は、13.56 MHzの高周波を使用していることから(参考 Sony Japan | FeliCa | FeliCaとは | FeliCaって何?)、電波法第百条第一項第一号が直接該当し、総務大臣の許可をiPhone71台ごとに個別に総務大臣の許可を得なければいけないようにも思います。

 しかし、実際には、そんな面倒な手続きは不要となっています。

 なぜならば、同号の中に括弧書きで示された「総務省令で定める通信設備を除く」という逃げ道が用意されているからです。

 ここにおける「総務省令」は「電波法施行規則(昭和二十五年十一月三十日電波監理委員会規則第十四号)」のことです(余談ですが、昭和25年に設置された電波監理委員会は昭和27年に郵政省に統合され、現在では総務省の一部となっています)。蛇足ですが、具体的な内容を電波法施行令に落とす場合には、「政令で定める~~」というように記述されます。

 その電波法施行規則の中には、電波法第百条第一項第一号を受けて、次のような規定が置かれています。

電波法施行規則

(通信設備)
第四十四条第一項  法第百条第一項第一号の規定による許可を要しない通信設備は、次に掲げるものとする。

 (中略)

二  誘導式通信設備(線路に一〇kHz以上の高周波電流を流すことにより発生する誘導電波を使用して通信を行う設備をいう。以下同じ。)であつて、次に掲げるもの
(1) 線路からλ/2π(λは搬送波の波長をメートルで表したものとし、πは円周率とする。)の距離における電界強度が毎メートル一五マイクロボルト以下のもの
(2) 誘導式読み書き通信設備(一三・五六MHzの周波数の誘導電波を使用して記録媒体の情報を読み書きする設備をいう。以下同じ。)であつて、その設備から三メートルの距離における電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下のもの
(3) 誘導式読み書き通信設備であつて、その型式について総務大臣の指定を受けたもの

 (後略) 

 ごちゃごちゃしていますが、要するに、「誘導式読み書き通信設備(一三・五六MHzの周波数の誘導電波を使用して記録媒体の情報を読み書きする設備) = FeliCa」について、①その設備から三メートルの距離における電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下のもの、又は、その型式について総務大臣の指定を受けたもの、であれば、電波法第百条第一項第一号の規定による許可は不要であるということです。

 今回発売されているiPhone7については、①の「電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下」に該当しなかったため、その型式について総務大臣の指定を受けるという②の手段をとることになりました。

 無事に総務大臣の指定を受けたiPhone7搭載のFeliCaですが、指定を受けた場合には、電波法施行規則第四六条の四に基づき、特定の表示をしなければなりません。

電波法施行規則

(表示)
第四十六条の四  指定を受けた者は、当該指定に係る型式の高周波利用設備に別表第七号に定める様式の表示を付さなければならない

 ここで、「別表第七号に定める様式の表示」とありますが、これは下のようなものです。(参考 総務省|関東総合通信局|型式指定のための手続き

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・形状は図1に示すものとし、大きさは長径が2センチメートル以上とすること。ただし、図1による表示が困難なときは、形状は図2に示すものとし、大きさは長辺が5ミリメートル以上とすること。この場合、図2による表示と併せて「総務省指定」及び「第 ※ 号」の文字を記載すること。
・容易にき損しない材料
・適宜な色彩、容易に識別できる文字及び数字
・容易に脱落しない方法で、見やすい個所に表示
・※印は、指定番号

  これはまさに、今回のiPhone7に掲載されたものですね。デザインの都合上、図1の形で刻印することは避けたものの、図2の刻印を入れた上で、「総務省指定」及び「第 ※ 号」の文字も併せて記載することは避けられませんでした。

おまけ

 FeliCaが搭載された既存のAndroid端末には、総務省指定の刻印がないけれど、これはなぜ??という疑問が浮かんでいるかもしれません。

 これまでに発売されているAndroid製のFeliCa搭載端末は、電界強度がそこまで強くなく、「①その設備から三メートルの距離における電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下のもの」に該当するため、総務省指定の刻印なしに、総務大臣の許可なく使用することが可能だったのです。

 世間では、今回の刻印について「法律だから仕方ない」という声も聞きます。しかし、紐解いてみると、詳細なデザインを決めているのは、総務大臣の命令である総務省令です。国会の議決を得て改正しなければならない法律と異なり、省令は主管省庁内だけのプロセスで改正することができます。

 今回のiPhone7に係る騒動で明らかになったように、デザインに大きく影響し、消費者の動向まで左右しうる当該刻印に関する規制は、せめてアルファベットだけの刻印で済むようにするなどもう少し自由化してもいいのかもしれません。