2016年12月23日更新
司法修習生への給費制復活??
本日12月19日の読売新聞のネット記事によると、司法修習生への給費制が復活する方向のようですね。もちろん、まだ法案作成段階なので、確かなことは言えませんが。
参考までに、司法修習生というのは、司法試験合格後、弁護士としての活動を始める前に受けることを義務付けられた1年の研修を受けている人々のことです。
昔、ミムラさんやオダギリジョーさん、松雪泰子さんや堤真一さん主演で、司法修習をテーマとする「ビギナー」というドラマが放送されていたこともありました。
以前は司法修習生に対して、月額約20万円が支給されていましたが、2011年以降給費制は廃止され、貸与制(つまり、単にお金を借りられる制度)になっていました。
読売新聞の記事によれば、貸与制との併用を想定しているということなので、以前ほどの金額はもらえないんでしょうね。また、本人等の所得で、給付対象を制限するとかでしょうね。
そうしないと、司法制度改革の時に給費制から貸与制に切り替えた時の理屈を否定しなければいけないことになりますから。
司法制度改革当時の考え方によれば、司法制度改革(裁判員制度の導入や法科大学院等の制度整備)にかかる多額の財源にあてるために給費制から貸与制に切り替えるということであり、当該費用が当時より抑制されたために制度を再度検討するということかもしれませんが。
参考:平成17年度予算編成の基本的考え方について(平成16年5月17日 財政等審議会) p.24
裁判員制度の導入、法曹人口の拡大等に伴い、中期的にも財政負担の拡大が見込まれるところである。「11月建議」でも指摘したように、司法修習生の給費制は早期に廃止し貸与制への切替を行うべきであり、また、裁判官・検察官の給与についても、一定の明確な目安を踏まえた昇給の在り方について検討するなど、その在り方について見直しを行うべきである。
実際、法科大学院に通う生徒も当時よりかなり減少しましたし、そもそもいくつかの法科大学院では募集自体を停止しているので、当時よりは法曹人口拡大のための費用は抑えられているはずですしね。
私自身としては、給費制が復活したらありがたいとは思いますが、正直どちらでもいいかなと思います。
だって、当時の水準に戻ったとしても、所詮総額240万円程度ですからね。
なんて書いたら、市民感覚が欠如していて法曹に不向きみたいなことを言われるかもしれませんが、私自身は240万円が大金であることは認識しています。ただ、社会的正義を実現すべき立場にある法曹が、たかが240万円を得たいがために給費制復活を声高に要請するのはどうなのかなと思ったり(もちろん、既に修習を終えられて、自分の利益ではなく法曹界の未来のためにそのような活動をされている方もいらっしゃることは承知していて、その方々をとやかく言うつもりはありません)。
そんなことのために時間と労働力を使うくらいであれば、もっと他の法律問題に力を注いで、社会の利益を増やすと同時にさっさと貸与された金額を返済した方が生産的ではないかと思うのです。
なお、どのような経緯で今回のような動きになっているのかを簡単に追ってみたのですが、平成28年に開かれている法曹養成制度改革連絡協議会の中で、改めて司法修習生に対する経済的支援の在り方が検討されているんですね。平成25年の時点では、法曹養成制度検討会議において「給費制とすべきとの意見もあったが,貸与制を導入した趣旨,貸与制の内容,これまでの政府における検討経過に照らし,貸与制を維持すべきで」という結論になっていたのに(参考:法務省:法曹養成制度検討会議)、ここ数年で方向性が変わるとは。
当該連絡協議会においては、第2回協議会で問題提起されて、第4回協議会で経過報告がされているのですが、今のところ調査結果などがどのように扱われどのような判断がなされているのかは法務省のHP上では分かりません。
協議会を傍聴している記者の方などは経過を詳しく知っているはずなので、マスコミの今後の報道や法務省のプレスリリース等は今後も要チェックですね!
(12月23日追記)
法務省の発表によると、生活費として必要最低限度の13万5千円を一律に給付するというものでした。家賃補助も入れたら月17万円。以前の制度よりは減額されていないものの、司法修習生にとってはとても助かる制度になりそうですね。
この時点で詳細な金額までマスコミにオープンにするということは、財務省との予算要求もほぼ確実に通るということなんでしょうね。