第1編 総論
第1章 序説―会社と会社法
第2節 株式会社
第2章 会社法総則
第4節 会社の使用人
362条4項3号
※取締役会設置会社においては、支配人は取締役会の決定で選任する
※支配人については、任期に制限はない
12条1項4号
☆支配人は、会社の許可を受けなければ、他の会社の取締役となることができない
最判昭51.10.1
・支配人の意図が自己の利益を図るにあり、かつ、相手方が右の意図を知り又は知りうべかりしものであったときには、民法93条ただし書の規定を類推適用して、信用金庫はその行為についての責に任じない
☆支配人が自己の利益を図る意図で会社の事業に関する行為をした場合でも、相手方がその意図を知っているときは、その会社は、その行為について責任を負わない
11条2項
・支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる
☆支配人は、会社の他の使用人を選任することができる
第5節 会社の登記
37条1項、911条1項、911条3項6号
・発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない(37条1項)
※911条1項、911条3項6号は設立の登記すべき事項として発行可能株式総数を要求している
☆定款の絶対的記載事項のうち、発行可能株式総数は、登記すべき事項である
911条3項
☆資本金の額は株式会社の登記事項である(5号)
☆事業年度は株式会社の登記事項ではない
☆取締役の氏名は株式会社の登記事項だが、取締役の住所は登記事項ではない
☆取締役会設置会社である時、その旨は株式会社の登記事項である(15号)
☆監査役会設置会社である時、その旨及び監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨は株式会社の登記事項であるが、監査役のうち常勤監査役であるものについて常勤監査役である旨は登記事項ではない(18号)
27条
※本店の所在地は定款の絶対的記載事項である(3号)
☆支店の所在地は、定款の絶対的記載事項ではない
☆会社の本店の所在地は、設立する際の定款で定めなければならない
☆会社の公告方法を、設立する際の定款で定める必要はない
最判昭28.12.3
・28条2号にいわゆる財産引受けは現物出資に関する規定をくぐる手段として利用せられる弊があったので、これを防ぐため現物出資と同様な厳重な規定を設け、公証人の認証を受けた定款にこれを記載しないと財産引受けの効力を有しないものと定められたのである。従って、単に財産引受けは会社の保護規定であるから、会社側のみが無効を主張しうるということはできない。この無効の主張は、無効の当然の結果として当該財産引受け契約のいずれの当事者も主張ができるものであるから、本件訴訟において売主である被上告人のこの主張を容れたことにつき原判決には所論の違法はない。右の如く財産引受けが定款上無効なる場合といえども、会社成立後に新たに467条1項の特別決議の手続をふんで財産取得の契約を有効に結ぶことは可能であるが、原判決はかかる新たな売買契約の成立を認めていない。単に会社側だけで無効な財産引受け契約を承認する特別決議をしても、所論のごとくこれによって瑕疵が治癒され無効な財産引受契約が有効となるものとは認めることができない
☆判例によれば、定款に定めのない財産引受けは無効であり、会社の成立後、その財産引受契約を承認する株主総会の特別決議をしても、これによって無効な財産引受契約が有効となるものではない
28条4号括弧書き
※定款の認証手数料は、定款の絶対的記載事項である設立費用に含まれない
☆定款の認証の手数料は、定款に定めがなくても、成立後の会社が負担する
30条2項
・公証人に認証を受けた定款は、会社の成立前は……これを変更することができない
☆公証人による認証を受けた定款を会社の成立後に変更する場合には、改めて公証人による認証を受ける必要はない
26条、27条、30条1項
☆株式会社の設立の際は、発起人が全員で定款を作成して、公証人の認証を受けなければならない
908条1項前段、911条3項14号
☆株式会社の代表取締役の就任は、その登記の前でも、悪意の第三者に対抗することができる
908条1項後段、918条
☆株式会社の支配人の退任による代理権の消滅は、その登記の後でも、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、その第三者に対抗することができない
最判昭43.11.1(総則商行為百選6)
・民事訴訟において、誰が当事者である会社を代表する権限を有するものであるかを定めるに当たっては、908条1項の適用はない
・908条1項は、会社と実体法上の取引関係に立つ第三者を保護するため、株式会社の清算人が誰であるかについて、登記をもって対抗要件としているものであり、民事訴訟は、それ自体実体法上の取引行為でない
☆判例の趣旨によれば、株式会社の代表取締役は、その登記の前でも、民事訴訟における当事者である株式会社を代表する権限を有する者となりうる
第2編 株式会社
第3章 株式と株主
第1節 株式と株主
166条1項ただし書
※取得請求権付株式の取得請求があった場合、その株式を取得するのと引き換えに交付される会社の株式以外の財産の帳簿価額がその請求の日における分配可能額を超えているときは、当該会社は取得請求権付株式を取得できない
☆取得請求権付株式の株主は、その取得の対価が金銭である場合において、株式会社に分配可能額がないときは、取得の請求をすることができない
167条1項
※会社は、取得請求権付株式の取得請求の日に、その請求に係る取得請求権付株式を取得する
☆株式会社が株主の取得の請求によって取得請求権付株式を取得する場合に、その取得について株主総会の決議は不要である
※株式会社は自己株式を特に期間の制限なく保有できる
465条1項4号
※株式会社が、取得請求権付株式を取得した結果、取得した日の属する事業年度に欠損を生じた場合、その行為に関する職務を行った業務執行者は、その超過額を支払う義務を負う
☆株式会社が株主の取得の請求によって取得請求権付株式を取得した結果、取得した日の属する事業年度に係る計算書類において欠損が生じた場合、その行為に関する職務を行った業務執行者は、その会社に対し、その欠損を填補する責任を負う
108条2項5号ロ
※取得請求権付株式とすることができる株式に制限はなく、優先株式を取得請求権付株式とすることができる
※取得請求権付株式の対価として交付される財産の内容につき、特に限定はない
☆優先株式を取得請求権付株式とすることができ、その取得の対価を普通株式とすることもできる
第3節 株式の譲渡・担保化と権利行使の方法
株券発行前の株式譲渡(最大判昭47.11.8、会社法百選A4)
・安易に128条2項の適用を否定することは、株主の地位に関する法律関係を不明確かつ不安定にならしめるおそれがあるから、これを慎むべきであるが、少なくとも、会社が右規定の趣旨に反して株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らしても株式譲渡の効力を否定するを相当としない状況に立ち至った場合においては、株主は、意思表示のみによって有効に株式を譲渡でき、会社は、もはや、株券発行前であることを理由としてその効力を否定することができず、譲受人を株主として遇しなければならない
・128条2項の法意を考えてみると、それは、株式会社が株券を遅滞なく発行することを前提とし、その発行が円滑かつ正確に行われるようにするために、会社に対する関係において株券発行前における株式譲渡の効力を否定する趣旨と解すべきであって、右の前提を欠く場合についてまで、一律に株券発行前の株式譲渡の効力を否定することは、かえって、右立法の趣旨にもとるものといわなければならない
☆株券発行会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らし、株券発行前にされた株式の譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至った場合において、株主が意思表示のみによって株式を譲渡したときは、その譲渡は、会社に対しても、その効力を有する
会社の過失による名義書換の未了と株式譲渡人の地位(最判昭41.7.28、百選15)
・会社は株式譲受人を株主として取り扱うことを要し、株主名簿上に株主として記載されている譲渡人を株主として取り扱うことを得ない。そして、この理は会社が過失により株式譲受人から名義書換請求があったのにかかわらず、その書換をしなかったときにおいても、同様である
☆株式の譲渡について、会社に対し適法に株主名簿の名義書換請求がされたにもかかわらず、会社の過失により名義書換が行われなかったときは、会社は、株主名簿の名義書換のないことを理由として、株式の譲渡を否定することができない
最判昭30.10.20
・130条1項によれば、記名株式の移転は、取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載しなければ会社には対抗できないが、会社からは右移転のあったことを主張することは妨げない法意と解するを相当とする。従って、……会社側においては、株主名簿の書換が何らかの都合で遅れていても、右株式の譲渡を認めて譲受人……を株主として取り扱うことを妨げるものではない
☆株式の譲渡に関する株主名簿の名義書換が会社の都合が遅れている場合、会社は、その譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことができる
最判昭37.4.20
※譲渡人は、譲受人に対し、受領した配当金相当額の金員について不当利得返還義務を負う
☆株券発行会社の株式について、その会社の剰余金の配当の基準日より前に株券が交付されて譲渡されたが、その基準日までに株主名簿の名義書換請求がされずに譲渡人が配当金を受領した時は、譲渡人は、譲受人に対し、受領した配当金相当額の金員について不当利得返還義務を負う
433条2項
※株主から会計帳簿・資料の閲覧請求があったときは、会社はそれに応じなければならないのが原則である(柱書)
※株主の権利の確保又は行使に関し調査をする以外の目的で請求したときは、請求を拒みうる(1号)
☆会社は、株主から会計帳簿の閲覧請求があったときでも、株主の権利の確保又は公私に関し調査をする目的で請求されたものでないことを証明すれば、その請求を拒むことができる
第4節 特殊な株式保有の形態
共有株式の権利行使者の指定方法(最判平9.1.28、百選11)
・準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である
・準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうち一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反することになるからである
☆判例によれば、その株式に係る権利を行使する者を指定するときは、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができる
最判昭53.4.14
・有限会社において持分が数名の共有に属する場合に、その共有者が社員の権利を行使すべき者1人を選定し、それを会社に届け出たときは、社員総会における共有者の議決権の正当な行使者は、右被選定者となるのであって、共有者間で総会における個々の決議事項について逐一合意を要するとの取決めがされ、ある事項について共有者の間に意見の相違があっても、被選定者は、自己の判断に基づき議決権を行使しうると解すべきである
☆判例によれば、その株式にかかる権利を行使する者を指定し、会社に通知した場合、株主総会の決議事項について共有者の間に意見の相違が生じたときでも、その指定された者は、自己の判断に基づき議決権を行使することができる
126条3項、4項
・株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名及び名称を通知しなければならない(3項)
・3項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる
☆その株式に係る権利を行使する者の指定及び会社に対する通知を欠くときは、会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる
会社法106条但書の法意(最判平27.2.19、百選12)
・共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、株式会社が同条ただし書の同意をしても、当該権利の行使は、適法となるものではないと解するのが相当である
☆判例によれば、その株式に係る権利を行使する者の指定及び会社に対する通知を欠く場合、共有者全員が議決権を共同して行使するときであれば、会社から議決権の行使を認めることが許される
相続による株式の共有(最判平2.12.4、百選10)
・株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、右株式につき「権利行使者」を定めて会社に通知し、この権利行使者において株主権を行使することを要するところ……、右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、右と理を異にするものではないから、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である
☆判例によれば、株式を2以上の者が共同して相続し、そのうちの1人が共有者として株主総会決議不存在確認の訴えを提起する場合において、その株式に係る権利を行使する者の指定及び会社に対する通知を欠くときは、特段の事情がない限り、原告適格は認められない
第5節 投資単位の調整
186条2項
※株式の無償割当においては、会社が保有する自己株式は、割当先の株式の対象から除かれている
☆株式の分割により自己株式の数は増えるが、株式無償割当により自己株式の数は増えない
234条1項3号、235条1項
☆株式の分割により1株に満たない端数が生じうるが、株式無償割当てにより1株に満たない端数が生じることもある
184条1項
☆株式の分割により株主の有する株式と異なる種類の株式をその株主に取得させることはできないが、株式無償割当てにより株主の有する株式と異なる種類の株式をその株主に取得させることはできる
184条2項
※株式の分割の場合には、現に2以上の種類の株式を発行していない限り、株主総会の決議によらないで発行可能株式総数を増加する定款変更をすることができる
☆株式の分割の場合には、現に2以上の種類の株式を発行していない限り、株主総会の決議によらないで発行可能株式総数を増加する定款変更をすることができるが、株式無償割当の場合には、株主総会の決議によらなければ発行可能株式総数を増加する定款変更をすることはできない
185条
※株式の分割においては、会社が保有する自己株式を交付することはできない
☆株式の分割により自己株式を株主に取得させることはできないが、株式無償割当により自己株式を株主に取得させることはできる
第4章 機関
第1説 総論
399条
※会計監査人の報酬は定款・株主総会決議により定める必要はなく、取締役・執行役がその業務執行権限に基づき契約内容として規定すれば足りる
338条2項
☆会計監査人は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、その株主総会において再任されたものとみなされる
346条4項、6項
※会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役会は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない
☆会計監査人が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないとき、裁判所ではなく監査役会が、利害関係人の申立てにより、一事会計監査人の職務を行うべき者を選任する
397条1項、3項
※会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役(会)に報告しなければならない
☆会計監査人は、取締役が不正の行為をし、又は不正の行為をするおそれがあると認めるとき、その旨を取締役会に報告する必要はない
429条1項、423条1項
※役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(429条1項)とされるところ、会計監査人はここにいう「役員等」に含まれる(423条1項括弧書き)
※「役員等」に監査役は含まれる
☆会計監査人は、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う
☆監査役は、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う
第2節 株主総会
☆株式会社は、株主が代理人によってその議決権を行使することができない旨を定款で定めることができない
298条1項3号
※株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨を定めることができる(書面投票制度)
☆株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとする旨を定めた時も、株主総会を開催することを要する
☆株主は、必要な事項を記載した議決権行使書面を株式会社に提出した場合でも、同一の議案について、代理人によってその議決権を行使することができる
☆株主は、議決権行使書面によって議決権を行使した場合にも、その議決権行使に係る議題について株主総会に出席することができる
298条2項本文、298条1項3号
※取締役は、株主の数が1000人以上である場合には、書面投票を定めなければならない
☆大会社であっても、株主の数が1000人未満であれば、書面投票を定める必要はない
☆大会社においては、株主の数が1000人未満であれば、株主総会を招集する場合に株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨を定める必要はない
298条2項本文括弧書、299条1項
※株式会社は、その総会において決議することができる全部の事項について議決権を行使できない株主に対しては、株主総会の招集通知を発する必要がない
☆株主総会の招集の通知は、その株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主に対しては、することを要しない
314条、規則71条3号
・取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない(本文)
・当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない(ただし書)
☆株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合には、取締役は、当該事項について説明をすることを要しない
☆取締役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合でも、その事項が株主総会の目的である事項に関しないものであるときは、その説明をすることを要しない
300条
※株主総会は、株主全員の同意があるときは、招集手続を経ずに開くことができる(本文)
※書面又は電磁的方法による議決権行使ができる旨を定めた場合は、招集手続は省略できない(ただし書)
☆株主全員の同意を得て、招集の手続を経ることなく株主総会を開催するとき、株主の同意は書面又は電磁的記録による必要はない
299条2項、4項
※書面投票又は電子投票により得る旨を定めた場合もしくは株式会社が取締役会設置会社である場合には株主総会の招集の通知は書面でしなければならない(2項)
※その通知には、298条1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない(4項)
☆取締役会設置会社でない会社においては、株主総会に出席しない株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めない場合には、株主総会の目的である事項を定めたときでも、その事項を招集通知に記載することを要しない
☆会社法上の公開会社は、取締役会設置会社であるので(327条1項1号)、株主総会の招集通知は、口頭ですることができない
☆会社法上の公開会社でない取締役会設置会社において、株主総会の招集通知は、口頭ですることができない
299条1項
※株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間(株主総会に出席しない株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができることを定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、1週間……)前までに、株主に対してその通知を発しなければならない
☆会社法上の公開会社においては、株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに株主に対して発しなければならず、定款でこれより短い期間を定めることはできない
444条6項、437条
※取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、監査役等及び会計監査人の監査を受け取締役会の承認を受けた連結計算書類を提供しなければならない(444条6項)
※取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、取締役会の承認を受けた計算書類及び事業報告(監査役設置会社又は会計監査人設置会社においては、監査報告又は会計監査報告含む)を提供しなければならない
☆連結計算書類を作成しなければならない会計監査人設置会社においては、定時株主総会の招集通知に際して、株主に対し、連結計算書類に係る会計監査人の会計監査報告を提供する必要はない
439条
※指名委員会等設置会社では、取締役会の承認を受けた計算書類が一定の要件を満たしている場合、定時株主総会の承認を要しない
※監査委員の1人が監査報告書に会計監査人の監査結果が相当でない旨の付記をした場合には、取締役会による確定が許されず、定時株主総会の承認を要することになる
☆株主総会は、会社の本店の所在地で招集する必要はない
309条3項1号
・発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合に合っては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない
☆譲渡による株式の取得について会社の承認を要する旨の定款の定めは、株主総会の特別決議により、廃止することができる
☆会社が、定款を変更して、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける場合には、株主総会の特別決議を経なければならない
424条
※役員等の株式会社に対する損害賠償責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない
☆取締役がその任務を怠った場合における会社に対する損害賠償責任は、総株主の同意がある場合には、株主総会の決議を経ることなく、これを免除することができる
☆会計監査人がその任務を怠った場合における会社に対する損害賠償責任は、株主総会の決議をもってその全部を免除することができない
☆監査役会設置会社において、取締役がその任務を怠った時に負う会社に対する損害賠償責任の全部の免除をするためには、総株主の同意がなければならない
425条1項柱書
※任務懈怠による取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役が善意無重過失の場合、株主総会決議(309条2項8号)によって、最低責任限度額を控除して得た額を限度として、免除することができる
☆監査役会設置会社において、取締役がその任務を怠った時に負う会社に対する損害賠償責任の一部の免除をするためには、取締役が職務を行うにつき善意で、かつ、重過失がないときであることが必要である
425条3項1号
※監査役会設置会社において、取締役の任務懈怠による責任の一部の免除(425条1項)に関する議案を取締役が株主総会に提出するためには、各監査役の同意を得なければならない
☆監査役会設置会社において、取締役がその任務を怠った時に負う会社に対する損害賠償責任の一部の免除に関する議案を取締役が株主総会に提出するためには、監査役全員の同意を得なければならない
426条1項
※取締役が2人以上いる監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、定款の定めに従い、取締役会設置会社であれば取締役会決議によって、一定の額を限度として取締役の責任を免除することができる旨を定款で定めることができる
☆監査役会設置会社において、取締役会の決議によって、取締役がその任務を怠った時に負う会社に対する損害賠償責任の一部の免除をするためには、取締役会の決議によって免除することができる旨を定款で定めなければならない
428条2項
※取締役が自己のために会社と取引を行った場合には、株主総会決議による一部免除(425条)、定款の定めに基づく取締役会等の決議による免除(426条)及び責任限定契約(427条)の規定は適用されない
☆会社と取引をした取締役の責任の一部の免除をするためには、その取引が自己のためにしたものでないことが必要である
☆株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議長として議事を主催した場合でも、その株主総会の決議は、無効とならない
313条1項
☆株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる
831条1項3号
・株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき、株主総会決議の取消事由となる
☆株主総会の決議について特別の利害関係を有する株主は、その決議において、議決権を行使することができる
308条2項
☆株式会社は、自己株式について、株主総会における議決権を有しない
308条1項かっこ書、会社法施行規則67条
※議決権の歪曲化を防止するため、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主は、その所有する当該会社の株式につき議決権を行使できない
453条かっこ書
・株式会社は、その株主(当該株式会社を除く)に対し、剰余金の配当をすることができる
☆株式会社は、自己株式について、剰余金の配当をすることができない
会社計算規則76条2項柱書5号
※自己株式の資産性は否定されているため、貸借対照表上は純資産の部の株主資本に係る項目の中で控除項目として計上される
☆株式会社は、自己株式の取得価額を貸借対照表の資産の部には計上せず、純資産の部に計上しなければならない
☆自己株式を償却しても、資本金の額は、減少しない
☆自己株式を償却しても、発行可能株式総数は、減少しない
規則63条3号ヘ
※書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使のいずれもすることができる旨を定めた場合に、書面と電磁的方法によって重複して議決権行使がなされたときに、いずれを有効な議決権行使として取り扱うかについて、取締役会はあらかじめ合理的な定めを設けることができる
☆取締役会は、書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使のいずれもすることができる旨を定めた場合には、株主が同一の議案につき両方の方法により重複してそれぞれの内容が異なる議決権の行使をしたときの取扱いに関する事項を定めることができる
309条1項
・株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
※剰余金の配当に関する株主総会決議は普通決議で足りる
※普通決議の定足数については、定款の定めにより変更できる。
☆会社は、定款の定めにより、剰余金の配当に関する株主総会の定足数を排除することができる
316条1項
・株主総会においては、その決議によって、取締役……が当該株主総会に提出し、又は提供した資料を調査する者を選任することができる
☆株主総会においては、その決議によって、取締役がその株主総会に提出し、又は提供した資料を調査する者を選任することができる
317条
・株主総会においてその延期……について決議があった場合には、株主総会の招集の決定と通知に関する規定は、適用しない
☆株主総会においてその延期の決議があった場合、後日開催されるその株主総会につき、改めて株主に対する招集通知を発する必要はない
398条2項
・定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない
☆会計監査人は、定時株主総会において出席を求める決議があったときは、その株主総会に出席して意見を述べなければならない
462条1項6号イ、2項
☆分配可能額を超えて金銭による剰余金の配当がされた場合、その配当に係る議案を株主総会に提案した取締役は、その職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明した場合を除き、配当額に相当する金銭を会社に対し支払う義務を負う
120条
※株式会社は、株主の権利行使に関し財産上の利益の供与をしてはならない(1項)
※当該行為に関与した取締役は、株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う(4項本文)
※もっとも、この責任は、当該利益の供与をした取締役を除き、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は免れることができる(4項ただし書)
☆会社がその計算において株主の権利の行使に関し財産上の利益の供与をした場合、それに関与した取締役は、自らその財産上の利益の供与をしたときを除き、その職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明することにより、その供与した利益の価額に相当する額を会社に対し支払う義務を免れる
最判昭51.12.24
・株式会社が定款をもって株主総会における議決権行使の代理人の資格を当該会社の株主に限る旨定めた場合において、当該会社の株主である県、市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても……定款の規定に反しない
・定款の規定は、株主総会が株主以外の第三者によって撹乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨に出たものであり、株主である県、市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、特段の事情のない限り、株主総会が撹乱され会社の利益が害されるおそれはなく、かえって、右のような職員又は従業員による議決権の代理行使を認めないとすれば、株主としての意見を株主総会の決議の上に十分に反映することができず、事実上議決権行使の機会を奪うに等しく、不当な結果をもたらすからである
☆判例によれば、株式会社が定款をもって株主総会における議決権行使の代理人の資格を会社の株主に限る旨を定めた場合において、株主である法人がその代表者の指揮下にある職員を代理人として株主総会で議決権を行使することは、定款に反さず、許される場合もある
304条本文
・株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項にかぎる。……)につき議案を提出することができる
☆取締役会設置会社においては、取締役の解任が株主総会の目的である事項となっていない場合、株主は、その株主総会において、取締役の解任の議案を提出することはできない
第3節 取締役・取締役会
369条
※取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う(1項)
※1項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない(2項)
※取締役会の決議に参加した取締役は取締役会議事録に異議をとどめないと決議に賛成したものと推定されるが、賛成したものとみなされるわけではない(5項)
348条2項
※取締役が2人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する
☆取締役会設置会社においては、定款に別段の定めがある場合を除き、業務執行についての取締役会の決定をするにあたり会議を開催する必要があるが、取締役会設置会社でない会社においては、取締役が3人いる場合であっても、業務の決定をするにあたり会議を開催する必要がない
☆定款に取締役の員数及び取締役会の決議要件についての定めがなく、3人の取締役がいる場合において、2人の取締役が取締役会の決議について特別の利害関係を有するときでも、その取締役会の決議を行うことができる
☆取締役会の決議は、定款の定めにより、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の3分の2以上に当たる多数をもって行うこととすることができる
327条2項
※取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)は、監査役を置かなければならない
☆取締役会設置会社においては、監査役を置かなければならないが、取締役会設置会社でない会社においても、監査役を置くことができる
326条2項
※株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる
☆取締役会設置会社でない会社においても、監査役を置くことができる
326条3項
※取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない
349条3項
※株式会社(取締役会設置会社を除く)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる
☆取締役会設置会社においては、代表取締役を選定しなければならず、取締役会設置会社でない会社においては、代表取締役を定めることができる
295条
※取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる(2項)
※取締役会設置会社でない会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる(1項)
☆取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款に定めた事項に限り、決議をすることができるが、取締役会設置会社でない会社においては、株主総会は、会社に関する一切の事項について決議をすることができる
309条5項本文
※取締役会設置会社においては、株主総会は、株主総会の目的である事項以外の事項については、決議をすることができない
☆取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に別段の定めがある場合を除き、当該株主総会の目的とされた事項以外の事項については、決議をすることができないが、取締役会設置会社でない会社においては、株主総会は、当該株主総会の目的とされた事項以外の事項についても、決議をすることができる
取締役権利義務者の解任(最判平20.2.26、会社法百選45)
・346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(役員権利義務者)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(不正行為等)があった場合において、854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは、許されないと解するのが相当である
・同条は、解任請求の対象につき、単に役員と規定しており、役員権利義務者を含む旨を規定していない
・346条2項は、裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申し立てにより一時役員の職務を行うべき者(仮役員)を選任することができると定めているところ、役員権利義務者に不正行為等があり、役員を新たに選任することができない場合には、株主は、必要があると認める時に該当するものとして、仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして、同条1項は、役員権利義務者は新たに専任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ、新たに専任された役員には仮役員を含むものとしているから、役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても、株主は、仮役員の選任を申し立てることにより、役員権利義務者の地位を失わせることができる
☆判例の趣旨によれば、任期の満了により取締役を退任したが、会社法又は定款で定めた取締役の員数を欠くため、なお取締役としての権利義務を有する者については、訴えをもってその解任を請求することができない
368条1項括弧書
※取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならないが、これを下回る期間を定款で定めることができる
☆会社は、取締役会の日の3日前までに取締役会の招集通知を発する旨を定款で定めることができる
366条1項
※取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する
☆取締役会の招集権者を定めるときは、定款ではなく取締役会で定めることもできる
名古屋高判平12.1.19
・取締役招集通知に記載されていない事項が取締役会で審議・議決されたとしても、これによって直ちに当該決議が違法となるものとはいえない
☆取締役会においては、その招集に際して定められた取締役の目的である事項以外の事項についても決議することができる
367条1項
※取締役会設置会社(監査役設置会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)の株主は、取締役が取締役会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、取締役会の招集を請求することができる
☆監査役設置会社の株主は、取締役が会社の目的の範囲外の行為をするおそれがあると認めるときでも、取締役会の招集を請求することができない
373条1項
※特別取締役による取締役会決議の制度を利用するためには、1人以上の社会取締役を置いていることが必要であるが、社外取締役が特別取締役に選定されていることは必要ではない
363条2項
※代表取締役は、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない
372条
・取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない(1項)
・1項の規定は、363条2項の規定による報告については、適用しない(2項)
☆代表取締役は、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならず、あらかじめ他の取締役の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときでも、取締役会への報告を省略することができない
428条1項
※自己のために株式会社と取引をした取締役又は執行役の任務懈怠責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることはできない
☆取締役が自己のために会社とした取引によって会社に損害が生じたときは、その取締役は、任務を怠ったことがその取締役の責めに帰することができない事由によるものであることを証明しても、その取引に係る任務懈怠責任を免れることができない
385条1項
※監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生じるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる
☆監査役設置会社においては、取締役が法令に違反する行為をするおそれがある場合でも、その行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときでなければ、監査役は、その取締役に対し、その行為をやめることを請求することができない
383条1項本文
※監査役設置会社の監査役には、業務監査権を実効あらしめるという観点から、取締役会への出席義務がある
※取締役会は、たとえ正当な理由があったとしても、監査役の取締役会への出席を許否することはできない
339条1項
※役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる
☆社外取締役を株主総会の決議によって解任するには、正当な理由がなくてもよい
最判昭35.10.14
・354条の規定の類推解釈により、右Aが会社のためにした金銭借り入れの行為について、善意の第三者に対してその責を負うものと解するのが相当
☆取締役の地位を有しない会社の使用人が、代表取締役の承認の下に、会社を代表する権限を有するものと認められる名称を使用して取引をした場合には、会社は、その取引について善意の第三者に対して責任を負う
最判昭56.4.24
・代表取締役に通知しないで招集された取締役会において代表取締役に選任された取締役が、この選任決議に基づき代表取締役としてその職務を行ったときは、右選任が有効な取締役会の代表取締役選任決議として認められず、無効である場合であっても、会社は、354条の規定の類推適用により、代表取締役としてした取締役の行為について、善意の第三者に対してその責めに任ずべきものと解するのが相当
☆代表取締役に通知しないで消臭された取締役会において代表取締役に選定された取締役が代表取締役として取引をした場合には、その選定が無効であるときであっても、会社は、その取引について、善意の第三者に対して責任を負う
表見代表取締役と第三者の過失(最判昭52.10.14、百選48)
・代表権の欠缺を知らないことにつき第三者に重大な過失があるときは、悪意の場合と同視し、会社はその責任を免れるものと解するのが相当
・354条は第三者の正当な信頼を保護しようとするものである
☆会社が代表取締役以外の取締役に会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付し、その取締役がその名称を使用して取引をした場合であっても、その取締役が会社を代表する権限を有しないことを知らないことにつきその取引の相手方に重大な過失があるときは、会社は、その取引について責任を負わない
最判昭59.3.29(商法百選28)
・相手方等いわゆる表見代理が成立しうる第三者は、当該取引の直接の相手方に限られるもの
☆会社が代表取締役以外の取締役に会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付し、その取締役がその名称を使用して取引をした場合において、善意の第三者として保護される者は、その取引の直接の相手方に限られる
最判昭45.12.15(民訴百選18)
・Aは、被上告会社の代表取締役ではなく、同会社の代表者としての資格を有するものではないから、Aを被上告会社の代表者として提起された本件訴は、不適法として却下を免れない
・民法109条および会社法354条の規定は、いずれも取引の相手方を保護し、取引の安全を図るために設けられた規定であるから、取引行為と異なる訴訟手続において会社を代表する権限を有する者を定めるに当たっては適用されない
・取引の相手方保護を図った規定である商法24条が、その本文において表見支配人の下取引行為について一定の効果を認めながらも、そのただし書において表見支配人のした訴訟上の行動について右本文の規定の適用を除外していることから考えても明らか
☆会社の代表者としての資格を有しない者につき代表取締役の就任の登記がされた場合において、その者を被告である当該会社の代表者として提起された訴えは、不適法である
取締役の監視義務と対第三者責任(最判昭48.5.22、百選71)
・株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有するものと解すべきである
☆取締役会を構成する取締役は、社外取締役であっても、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役による会社の業務執行一般につき、これを監視する職務を有する
招集手続の瑕疵と取締役会決議の効力(最判昭44.12.2、百選65)
・取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続に瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、右瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当である
☆取締役会の開催に当たり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠いた場合において、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、その決議は有効である
最判昭41.8.26
・定足数は、討議、議決の全過程を通じて維持されるべきであって、開会のはじめに満たされていればよいというものではない
・定足数の充足は、開会時において存したにすぎず、総会招集の決議がなされた当時においては存しなかったというのほかはない。このように定足数を欠く取締役会の決議は無効と解すべき
・法律は、一定数以上の取締役が会議に出席することを要請し、その協議と意見の交換により取締役の叡智が結集されて一定の結論が生み出されることを期待しているものと解せられる
☆取締役会の定足数は、開会時に充足されただけでは足りず、討議及び議決の全過程を通じて維持されなければならない
最判昭41.12.20
・取締役会の代表取締役解任の決議は、……告知をまってはじめて解任の効果が生ずると解すべきではない
・代表取締役の会社代表機関たる地位を剥奪するものであって、右決議によって右機関たる地位が失われることの効果として、被上告会社を代表する権限も当然消滅する
☆代表取締役の解職に関する取締役会の決議については、その決議がその代表取締役に告知されなくても解職の効果が生ずる
最判平21.4.17(重判平21商法2)
・株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がないかぎり、これを主張することはできないと解するのが相当である
・362条4項が重要な業務執行についての決定を取締役会の決議事項と定めたのは、代表取締役への権限の集中を抑制し、取締役相互の協議による結論に沿った業務の執行を確保することによって会社の利益を保護しようという趣旨に出たもの
☆代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、特段の事情がないかぎり、その会社以外の者は、取締役会の決議を経ていないことを理由とするその取引の無効を主張することができない
341条
・309条の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合に合っては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合に合っては、その割合以上)をもって行わなければならない
☆取締役を選任する株主総会の決議の定足数は、定款の定めにより、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1とすることができる
代表取締役解職の取締役会決議と特別利害関係(最判昭44.3.28、百選66)
・代表取締役の解任に関する取締役会の決議については、当該代表取締役は、369条2項にいう特別の利害関係を有する者にあたると解すべきである
・代表取締役は、会社の業務を執行・主宰し、かつ会社を代表する権限を有するものであって、会社の経営、支配に大きな権限と影響力を有し、したがって、本人の意思に反してこれを代表取締役のちいから排除することの当否が論ぜられる場合の居ては、当該代表取締役に対し、一切の私心を去って、会社に対して負担する忠実義務に従い更正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、かえって、自己個人の利益を図って行動することすらあり得るのである。それゆえ、かかる忠実義務違反を予防し、取締役会の決議の公正を担保するため、個人として重大な利害関係を有する者として、当該取締役の議決権の講師を禁止するのが相当だからである
☆判例によれば、代表取締役の解職に関する取締役会の決議について、その代表取締役は、議決に加わることができない
423条3項
※競業取引又は利益相反取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する(柱書)
※競業取引又は利益相反取引をしようとする取締役又は執行役(1号)
☆本件取引が利益相反取引である場合には、取締役Bが特別の利害関係を有する取締役としてこれを承認する取締役会の議決に加わっていなかったとしても、本件取引により甲社に損害が生じたときは、取締役Bは、その任務を怠ったものと推定される
☆取締役が取締役会の承認を得て自己のために行った会社との取引によって会社に損害が生じた場合、その取締役会において異議を述べなかった監査役は、その任務を怠ったと推定されない
423条2項
・取締役又は執行役が会社法356条1項の規定に違反して競業取引をしたときは、当該取引によって取締役が得た利益の額は、1項の損害の額と推定する
☆本件取引が利益相反取引であるにもかかわらず、取締役会の承認を受けずにされた場合には、本件取引により取締役Bが得た利益の額は、後者に生じた損害の額と推定されない
利益相反の間接取引(最大判昭43.12.25、百選58)
・取締役が右規定に違反して、取締役会の承認を受けることなく、右の如き行為をなした時は、本来、その行為は無効と解すべきである
・このことは、同条は、取締役会の承認を受けた場合においては、民法108条(双方代理)の規定を適用しない旨規定している反対解釈として、その承認を受けないでした行為は、民法108条違反の場合と同様に、一種の無権代理人の行為として無効となることを予定しているものと解すべきであるからである
・取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあっては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかったことを理由として、その行為の無効を主張しうることは、前述のとおり当然であるが、会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかったことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知っていること)であることを主張し、立証して初めて、その無効をその相手方である第三者に主張しうるものと解するのが相当である
☆判例によれば、本件取引が利益相反取引であるにもかかわらず、取締役会の承認を受けずにされた場合、甲社の取締役Bが有効な取締役会の承認があったと信じて取引をしていたときでも、甲社は、Bに対し、本件取引の無効を主張することができる
最判昭38.12.6
・取締役が自己又は第三者のためにその会社と取引をなすには取締役会の承認を要する旨規定するのは、会社と取締役個人との間の利害衝突から会社の利益を保護することを目的とするものであるところ、取締役がその会社に対し無利息、無担保で金員を貸し付ける行為は、特段の事情のない限り会社の利益にこそなれ不利益であるとはいえないから、取締役会の承認を要しないものと解するのを相当とする
☆判例によれば、本件取引の内容が、取締役Bが甲社に対して無利息かつ無担保で金銭を貸し付けるものである場合には、利益相反取引として甲社の取締役会の承認を受ける必要はない
356条1項2号
※取締役は、自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとする場合には、当該取引につき重大な事実を開示し、その承認を受けなければならない
☆判例によれば、本件取引の内容が、不動産鑑定士による鑑定評価の評価額を代金額として甲社がBから不動産を買い受けるものである場合にも、利益相反取引として甲社の取締役会の承認を受ける必要がある
最判昭48.11.26
※取締役が死亡した場合の弔慰金の支給は、それが在職中の職務執行の対価であるときは、株主総会の決議によらなければならない
・株式会社の取締役又は監査役であった者に対して支給される退職慰労金(死亡の場合の弔慰金を含む。……)は、それが在職中の職務執行の対価である時は、361条1項にいう報酬に含まれると解される
☆判例によれば、取締役が死亡した場合の弔慰金の支給は、それが在職中の職務執行の対価であるときは、株主総会の決議によらなければならない
取締役の報酬の変更(最判平4.12.18、会社法百選62)
※株式会社において、定款又は株主総会の決議によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではない
☆判例によれば、株主総会の決議に基づいて取締役の報酬の額が具体的に定められた場合、その後、株主総会がその取締役の報酬を無報酬とする旨の決議をしたときも、その取締役は、これに同意しなければ報酬を請求することができる
最判昭60.3.26
・株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定め、その具体的な配分は取締役会の決定に委ねることができ、株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要でない
・361条1項の規定の趣旨は取締役の報酬額について取締役ないし取締役会によるいわゆるお手盛りの弊害を防止する点にある
☆判例によれば、株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定め、その具体的な配分は、取締役会の決定に委ねることができる
☆会社が、取締役に対し、その報酬等としていわゆるストック・オプションとしての新株予約権を付与する場合には、株主総会の決議によることを要する
435条2項、437条、442条、規則121条3号
※公開会社においては、各事業年度に取締役に支払った報酬等の総額を事業報告の内容の形で、株主・会社債権者・親会社社員に対し開示しなければならない
☆会社が会社法上の公開会社である場合でも、事業報告により、その事業年度に係る取締役ごとの個別の報酬の額を明らかにする必要はない
第4節 会計参与
329条1項
・役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。……)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する
☆会社は、定款の定めにより、会計参与を取締役会の決議によって選任するものとすることはできない
第5節 監査役・監査役会
381条2項
※監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
381条3項
※監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対してその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる
☆監査役が子会社の業務及び財産の状況を調査するには、監査役会の同意を得る必要はない
399条の3第1項
※監査等委員会が選定する監査等委員は、いつでも、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)及び支配人その他の使用人に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は監査等委員会設置会社の業務及び財産の状況を調査することができる
☆各監査役はいずれも、その権限として自ら会社の業務及び財産の状況の調査をすることができるが、監査等委員は、監査等委員会が選定した場合に限り、その権限として自らの会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる
390条
※監査役会は、常勤監査役の選定に関する事項の決定を行う(2項2号)
※監査役会は、少なくとも1人は常勤の監査役を選定しなければならない(3項)
☆監査役会は常勤の監査役を選定する必要があるが、監査等委員会は常勤の監査等委員を選定する必要がない
☆監査役会は、2人以上の常勤監査役を選定することができる
☆監査役会は、監査の方針を決定する(2項3号)
☆指名委員会等設置会社の監査委員は、全員を非常勤とすることも許される
336条1項
※監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする
332条1項本文、3項かっこ書、4項
※監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする
☆監査役の任期は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであるが、監査等委員である取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである
423条4項
※監査等委員でない取締役と会社との利益相反取引について、監査等委員会の承認があったときは、423条3項各号に掲げる者の任務懈怠の推定が生じない
☆取締役と会社との利益相反取引によって会社に損害が生じた場合であっても、当該取締役(監査等委員である者を除く)が事前に当該利益相反取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役がその任務を怠ったものとは推定されない
344条3項、1項
※監査役会設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役会が決定する
399条の2第3項2号
※監査等委員会は、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定を行う
☆監査役会及び監査等委員会は、いずれも、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容を決定する権限を有する
335条3項
※監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない
☆監査役が4人いるときは、少なくとも2人は、社外監査役でなければならない
335条2項
※監査役は、子会社の取締役を兼ねることができない
☆子会社の取締役が親会社の監査役を兼ねることはできないが、親会社の取締役が子会社の監査役を兼任することは可能である
393条1項
※監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行う
☆監査役が4人いる場合において、監査役回に出席した監査役が3人いるときは、そのうち2人の賛成では監査役の過半数とならず、監査役会の決議が成立しない
※監査役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができるとする規定はなく、決議の省略は認められていない
☆会社は、監査役が監査役の決議の目的である事項について提案をした場合において、その提案につき監査役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の監査役会の決議があったものとみなす旨を、定款で定めることはできない
309条2項
※1項の規定(株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う)に関わらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない(柱書)
※339条1項の株主総会(累積投票により選任された取締役を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る)(7号)
☆監査役を解任する株主総会の決議は、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもっておこなわなければならない
340条
・監査役は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができる(1項柱書)
・職務上の義務に違反し、又は職務を怠った時(1項1号)
・1項の規定による解任は、監査役が2人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければならない
☆監査役が3人いる場合には、そのうちの全員の同意により、職務を怠った会計監査人を解任することができる
831条1項柱書前段、828条2項1号
※監査役は、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる
☆監査役が株主総会の決議の取消しの訴えを提起するには、監査役の同意を得る必要はない
343条1項、3項
※取締役は、監査役会設置会社の場合、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには監査役の同意を得なければならない
☆取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役会の同意を得なければならない
849条2項柱書、1号
☆株式会社が、取締役を補助するため、責任追及の訴えに係る訴訟に参加するには、監査役設置会社の場合、監査役の同意を得なければならない
第8節 指名委員会等設置会社
362条3項、420条1項、402条6項
・取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない(362条3項)
・取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定しなければならない(420条1項)
・執行役は、取締役を兼ねることができる(402条6項)
☆代表取締役は、取締役の中から選定されなければならないが、代表執行役は、取締役の中から選定される必要はない
349条4項、420条3項
・代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(349条4項)
※代表執行役について、420条3項は349条4項を準用している
☆代表取締役及び代表執行役は、いずれも、その権限に制限が加えられていない限り、会社の業務に関する一切の裁判上及び裁判外の行為をする権限を有する
362条4項2号、416条4項
※取締役会が取締役に委任することができない決定事項として、「多額の借財」を規定(362条4項2号)
・委員会設置会社の取締役は、その決議によって、委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない(416条4項)
※416条4項の委任禁止事項に「多額の借財」は規定されていない
☆取締役は、多額の借財の決定について、取締役会から委任を受けることができないが、執行役は、多額の借財の決定について、取締役会から委任を受けることができる
331条4項、404条3項
・指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない(331条4項)
・執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、……(404条3項)
☆取締役は使用人を兼ねることができないが、執行役は使用人を兼ねることができる
355条、419条2項
・取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない(355条)
※執行役についても、419条2項は、355条を準用し同義務を定めている
☆取締役及び執行役は、いずれも、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行わなければならない
第9節 役員等の責任およびその追及等に関する法規制
848条
・責任追及等の訴えは、株式会社又は株式交換等完全子会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する
☆株式会社が取締役に対してその責任を追及する訴えを提起する場合、当該取締役の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に当該訴えを提起することはできない
☆株主が取締役の責任を追求する訴えを、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に提起することはできない
851条1項
※代表訴訟を提起した株主又はそれに共同訴訟参加した株主は、その訴訟の係属中に株主でなくなったとしても、次の場合には、引き続き訴訟を遂行することができる
①その者が当該株式会社の株式交換又は株式移転により当該株式会社の完全親会社の株式を取得したとき(1号)
②その者が、当該株式会社が合併により消滅する会社となる合併により、合併により設立する株式会社又は合併後存続する株式会社もしくはその完全親会社の株式を取得したとき(2号)
☆株主代表訴訟を提起した株主は、株式交換によりその訴訟の係属中に株主でなくなった場合でも、その対価として株式交換完全親会社の株式を取得したときは、原告適格を失わない
☆株主代表訴訟を提起した株主がその訴訟の係属中にその有する株式を売却して株主でなくなったときは、その者は、訴訟を追行することができない
834条17号
※株主総会等の決議の取消しの訴えの被告は当該株式会社である
☆取締役を選任した株主総会決議の取消しの訴えは、その取締役を被告として提起することができない
☆株主総会における取締役選任決議の取消しの訴えは、会社を被告としなければならない
最判昭36.11.24(民事訴訟法百選A35)
・上告人の本件参加の申出が許されるためには、上告人は本件訴訟の被告となりうる適格を有しなければならないのである。ところが、本件訴訟の被告となりうる者は、その性質上、被上告人会社に限られると解するのが相当であるから、上告人が本件訴訟の被告となる適格を有しないことは自明の理である
・第三者が民事訴訟法52条1項の規定により訴訟に参加することが許されるためには、当該訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合であることのほか、当該訴訟の当事者となりうる適格を有することが要件となっていることは、民事訴訟法52条1項の法意に徴し、明らかである
☆判例の趣旨によれば、取締役の選任を目的とする株主総会につきその決議の取消しの訴えが提起された場合には、その決議により選任された取締役は、会社の共同訴訟人としてその訴訟に参加することができない
他の株主に対する招集手続の瑕疵と決議取消しの訴え(最判昭42.9.28、百選36)
・株主は自己に対する株主総会招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵のある場合には、決議取消の訴えを提起し得る
☆株主は、株主総会の議案に賛成する議決権を行使した場合でも、その議案に係る株主総会の決議の取消しの訴えを提起することができる
831条1項柱書前段
※831条1項各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から3ヶ月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる
☆株主総会決議に取消事由がある場合には、訴え以外の方法によって決議を取り消すことができない
※株主総会決議無効確認の訴えについては、決議取消しの訴えと異なり、その主張を制限する規定は存在しない
☆株主総会決議無効確認の訴えは、確認の利益を有する限り、誰でも提起することができる
837条
※同一の請求を目的とする会社の組織に関する訴えに係る訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論及び裁決は、併合してしなければならない
☆株主総会における取締役選任決議の取消しの訴えと、同じ株主総会における計算書類承認決議の取消しの訴えが同時に係属しても、その弁論及び裁判を併合する必要はない
838条
・会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する
※決議取消の訴え(831条)において、原告が勝訴し、判決が確定すると、その判決は対世効を有する
☆株主総会決議の取消しの訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有するがその請求を棄却する確定判決は、第三者に対してはその効力を有しない
☆株主総会決議無効確認の訴えに係る請求を棄却する確定判決は、第三者に対しても、その効力を有する
☆会社の設立の無効の訴えについては、当該訴えに係る請求を認容する確定判決が第三者に対してもその効力を有するため、被告は、当該請求を認諾することができない
☆株主が取締役の法令違反行為の差止を求める訴えを提起したが敗訴した場合、後に他の株主が、同一の取締役がした同一の行為の差止を求める訴えを提起することはできない
831条2項
※株主総会決議取消しの訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、請求を棄却することができる
☆株主総会決議の内容が定款に違反することを理由とする株主総会決議の取消しの訴えの提起があった場合において、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときでも、その請求を棄却することができない
☆裁判所は、株主総会の決議の方法が法令に違反する場合でも、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁量により請求を棄却することができる
☆株主総会決議取消しの訴えの提起があった場合において、株主総会の招集の手続が定款に違反するときでも、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、その訴えに係る請求を棄却することができる
決議取消しの訴えと取消事由の追加(最判昭51.12.24、百選37)
・株主総会決議取消しの訴えを提起した後、831条1項柱書所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないと解するのが相当である
・取消しを求められた決議は、たとえ瑕疵があるとしても、取り消されるまでは一応有効のものとして取り扱われ、会社の業務は右決議を基礎に執行されるのであって、その意味で、右規定は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるためその取消しの訴えを提起することができる期間を決議の日から3ヶ月と制限するものであり、また、新たな取消事由の追加主張を時機に遅れない限り無制限に許すとすれば、会社は当該決議が取り消されるのか否かについて予測を建てることが困難となり、決議の執行が不安定になるといわざるを得ないのであって、そのため、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるという右規定の趣旨は没却されてしまうことを考えると、右所定の期間は、決議の瑕疵の主張を制限したものと解すべき
☆判例の趣旨によれば、株主は、株主総会の決議の取消しの訴えを提起した場合において、決議の日から3ヶ月を経過した後に新たな取消事由を追加主張することは、許されない
株式の相続と訴訟の承継(最大判昭45.7.15、百選13)
・相続の場合においては、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、持分の取得により社員たる地位にともなう前記のごとき諸権利はもとより、被相続人の提起した訴訟の原告たる地位をも承継し、その訴訟手続を受け継ぐこととなるのである
・もし、原告たる被相続人の死亡により同人の提起した訴訟が当然に終了するものとするならば、本件の社員総会決議取消の訴えにおけるように提訴期間の定め(831条1項柱書)がある場合において、被相続人の死亡当時すでにその提訴期間を経過しているときは、相続人は新たに訴えを提起することができず、原告たる被相続人の死亡なる偶然の事情により、社員がすでに着手していた社員総会決議の瑕疵の是正の途が閉ざされるという不合理な結果となるのを免れない
☆判例の趣旨によれば、株主総会の決議の取消しの訴えに係る訴訟の係属中に原告である株主が死亡した場合には、訴訟は、これにより終了しない
☆株主総会の決議の取消しの訴えは、他の株主の同意なく、取り下げることができる
847条
・6ヶ月(これを下回る期間を定款で定めた場合に合っては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(……単元未満株主を除く)は、株式会社に対し、……訴えの提起を請求することができる(1項)
・株式会社が1項の規定による請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しない時は、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる(3項)
※会社法上の公開会社の場合に、株主が株主代表訴訟を提起するためには、議決権数・株式数の要件はなく(少数株主権ではなく、単独株主権である)、保有期間要件のみ要求される
☆会社法上の公開会社の場合、株主代表訴訟を提起することができるのは、6ヶ月前から引き続き株式を有する株主である
847条の3第1項本文
※6ヶ月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式会社の最終完全親会社等の総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く)の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合に合っては、その割合)以上の議決権を有する株主又は当該最終完全親会社等の発行済株式(自己株式を除く)の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合に合っては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、当該株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、特定責任に係る責任追及等の訴えの提起を請求することができる。
※平成26年改正によって、親会社の株主に子会社の役員等の責任追及をする訴えの提起が認められることとなった(特定責任追及の訴え、多重代表訴訟)
※同条所定の要件を満たす株主が、原則として完全子会社に対する提訴請求を経て、この訴えを提起することができる。最終完全親会社等に対して提訴請求しなければならないわけではない
☆最終完全親会社等の株主が特定責任追及の訴え(いわゆる多重代表訴訟)を提起するためには、当該株主は、当該最終完全親会社等に対し、書面で特定責任追及の訴えの提起を請求する必要はなく、原則として完全子会社に対する提訴請求を経て提起することができる
☆会社法上の公開会社において、株主代表訴訟を提起することができる株主は、6ヶ月前から引き続き株式を有している必要があり、この期間は、定款の定めにより短縮することができるが伸長することはできない
386条1項かっこ書、408条1項かっこ書
・……であった者も含む
☆株主代表訴訟は、退任後の取締役を被告として提起することができる
☆株主代表訴訟においては、退任した取締役を被告とすることができる
408条1項
☆指名委員会等設置会社が監査委員を訴える場合には、取締役会が定める者が会社を代表する(1号)
※指名委員会等設置会社が、取締役若しくは執行役に対し訴えを提起し、又は取締役若しくは執行役が指名委員会等設置会社に対し訴えを提起する場合においては、監査委員会が選定する監査委員が会社を代表する(2号)
847条の4
・株主等(……)が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主等に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる(2項)。
・被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない(3項)
☆株主代表訴訟の提起が悪意によるものであると認められるとき、裁判所は、被告の申立てにより、訴えを提起した株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができるが、職権で、訴えを提起した株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることはできない
850条4項
※和解をする場合には、取締役の責任は全株主の同意がない限り免除することができないという規定(424条等)は適用されない
☆株主代表訴訟においては、総株主の同意を得なくても、取締役の責任を免除する内容の訴訟上の和解をすることができる
830条2項
・株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる
☆株主総会の決議の方法が法令に違反した場合、株主総会決議無効確認の訴えを提起することができない
最判昭33.10.3
※株主9名5000株の会社において、株主の1人である代表取締役が、自己の実子である2名の株主に口頭による招集通知をしたのみで、他6名の株主(その持株2100株)に通知がなされないまま開催された株主総会とその決議について、株主総会決議の不存在を認めた原審の判断を相当とする
☆株主総会の招集通知の発出に漏れがあった場合、その程度によっては、株主総会決議不存在確認の訴えを提起することができる
第5章 計算
第4節 株主への分配
170条5項
※会社による取得条項付株式(155条1号)については、取得対象株式の株主に交付される財産が107条2項3号二からトに規定する財産の帳簿価額が取得事由から生じた日における分配可能額(461条2項)を超える場合には、会社はこれを取得することができない
☆取得条項付株式の取得により株主に対して交付する金銭の額は、分配可能額を超えてはならない
461条1項1号
※会社が譲渡制限株式の譲渡(取得)を承認せずそれを買い取る場合、株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない
☆株式会社が譲渡制限株式の取得を承認しない旨の決定をする場合において、譲渡制限株式の買取りの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取りにより株主に対して交付する金銭の額は、分配可能額を超えてはならない
☆単元未満株式の買取りの請求があった場合において、当該単元未満株式の買取りにより株主に対して交付する金銭の額は、分配可能額を超えることができる
☆株式会社が他の会社の事業の全部を譲り受けることにより当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合において、当該株式会社の株式の取得により当該他の会社に対して交付する金銭の額は、分配可能額を超えることができる
☆株式交換をする場合において、株式交換をする株式会社の反対株主の株式買取請求があったときは、当該反対株主が有する株式の買取りにより当該反対株主に対して交付する金銭の額は、分配可能額を超えることができる
☆資本金の額は、会社の財産の増減と連動して増減しない
☆資本金は、貸借対照表において、純資産の部に計上される
445条
・株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする(1項)
※募集株式の発行に際して、株主となる者が会社に対して払込又は給付をした財産の額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないことができる(2項)
※この場合に資本金として計上しない額は、資本準備金として計上しなければならない(3項)
☆募集株式の発行に際して、株主となる者が会社に対して払込み又は給付をした財産の額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないときは、資本金として計上しない額は、資本準備金として計上しなければならない
☆自己の株式の取得をしても、資本金の額及び発行済株式の総数のいずれについても変化がない
450条、448条1項2号、会社計算規則25条1項
☆自己株式の処分により、資本金の額は増加しない
大判大8.1.24
※株主総会決議以前に株主権に包含される一内容である利益配当請求権そのものは独立した1個の権利とはいえないから、これを株主権と分離して譲渡することはできない
☆判例によれば、株主の会社に対する剰余金配当請求権は、剰余金の配当に関する事項が株主総会又は取締役会の決議によって定められる前において、株式から分離して、これを第三者に譲渡することができない
大判昭2.8.3
※当事者が特約によって権利の行使期間を制限し一定の期間内に請求しない時は期間経過とともに当然に消滅すると定めることはその権利の本質に反せず公序良俗に反しない限り可能であり、定款で支払期日より5年を経過しても配当金支払請求がないときはその支払い義務を免れると定めることも有効である
☆判例によれば、会社は、定款において、剰余金の配当につき、効力発生日から5年を経過しても請求がないときはその支払い義務を免れる旨を定めることができる
454条5項
※取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る)をすることができる旨を定款で定めることができる
☆会計監査人設置会社でない会社が、定款の定めに基づき、1事業年度の途中において1回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当をする場合には、その配当財産は、金銭でなければならない
454条4項1号、309条2項10号
※株式会社が現物配当を行う場合には、株主に対して当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利(金銭分配請求権)を与えることができる(454条4項1号)
※この場合、金銭分配請求権を行使した株主は、金銭の配当を受けることができる場合と同視できるので、株主総会の普通決議によって、剰余金の配当に関する事項を定めることができる(309条2項10号括弧書き)
※株式会社が金銭分配請求権を与えずに現物配当を行う場合には、株主総会の特別決議が必要になる(309条2項10号)
463条2項
※会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合には、株式会社の債権者は、463条1項の規定により義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払わせることができる
☆会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合には、会社の債権者は、その債権額を上限として、剰余金の配当を受けた株主に対し、交付を受けた配当財産の帳簿価額に相当する金銭を直接自己に支払うよう請求することができる
27条4号
※資本金は登記事項だが(911条3項5号)、会社の定款には、設立に際して出資される財産の最低額を定めれば足りる
☆会社を設立する際に記載すべき定款には、資本金の額を記載又は記録しなくてよい
449条1項
449条1項本文
・株式会社が資本金……の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる
※株式会社が資本金又は準備金の額を減少する場合には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金又は準備金の減少について異議を述べることができる
☆会社が資本金の額を減少する場合には、その会社の債権者は、その会社に対し、これについて異議を述べることができる
☆会社が準備金の額を減少する場合において、その減少額の全部を資本金とする時は、その会社の債権者は、その会社に対し、準備金の額の減少について異議を述べることができない
☆会社が資本金の額を減少する場合には、それと同時に株式の発行が行われることにより、その資本金の額の減少の効果が生ずる日後の資本金の額がその日前の資本金の額を下回らないときであっても、その会社の債権者は、その資本金の額の減少について異議を述べることができる
449条6項1号
※資本金の額の減少は、効力発生日にその効力を生ずる。ただし、債権者異議手続が終了していないときは、その終了まで効力を生じない
☆資本金の額の減少は、債権者異議手続が終了していないときは、その効力を生じない
447条1項、309条2項9号
※資本金の額の減少に関する事項は、原則として株主総会の特別決議による必要がある
☆取締役会設置会社が資本金の額を減少する場合において、減少する資本金の額の全部を準備金とする時は、その資本金の額の減少について、株主総会の特別決議を要する
828条2項5号、1項5号、2条9号
※資本金の額の減少の無効の訴えの原告適格が認められる「株主等」には「株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、委員会設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)」が含まれる。
※監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社は監査役設置会社に該当しない(2条9号)。
☆監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社の監査役は、資本金の額の減少の無効の訴えを提起することができない
911条3項5号、915条1項
※資本金の額は登記事項とされている(911条3項5号)
・会社において911条3項各号又は前3条各号に掲げる事項に変更が生じた時は、2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない(915条1項)
☆会社が資本金の額を減少したときは、その会社は、その本店の所在地で変更の登記をしなければならないが、その支店の所在地において変更の登記をする必要はない
828条1項5号
※資本金の額の減少手続に瑕疵がある場合におけるその無効は、訴えをもってのみ主張することができる
☆資本金の額の減少の無効は、訴えをもってのみ主張することができる
459条1項3号、452条
☆取締役会設置会社が剰余金の額を減少する場合において、その減少額の全部を準備金とするとき、取締役会の決議によって剰余金の額の減少をすることはできず、株主総会の決議による必要がある
☆会社が剰余金の処分として任意積立金の積立てをする場合には、定時株主総会の決議による必要はなく、取締役会の決議によることができる
第6章 資金調達
第2節 募集株式の発行等
37条1項、98条
※会社が発行することができる株式の総数(発行可能株式総数)は、公証人の認証を受ける時点で定款に記載されている必要はないが、会社の成立の時までに、発起設立では発起人全員の同意、募集設立では創立総会の決議により定款に定めることを要する
※公開会社でない株式会社の場合でも、発行株式総数を定款で定めなければならず無制限と定めることはできない
☆会社法上の公開会社でない株式会社を設立する場合には、発行可能株式総数を定款で定めなければならないが、発行可能株式総数は、設立時発行株式の総数の4倍を超えてもよい
37条3項ただし書
※公開会社ではない株式会社では、発行可能株式総数が設立時発行株式の総数の4倍を超えてはならないという制約が設けられていない
☆会社法上の公開会社でない株式会社を設立する場合には、発行可能株式総数を定款で定めなければならないが、発行可能株式総数は設立時発行株式の総数の4倍を超えてもよい
207条9項1号
※募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済み株式の総数の10分の1を超えない場合、当該募集株式の引受人が給付する現物出資財産の価額について、検査役の調査が不要とされている
207条9項2号
※現物出資財産について定められた199条1項3号の価額の総額が500万円を超えない場合、当該現物出資財産の価額について、検査役の調査が不要
207条9項3号
※現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定められた会社法199条1項の価額が当該有価証券の市場価格として会社法施行規則43条で定める方法により算定されるものを超えない場合、当該有価証券についての現物出資財産の価額について、検査役の調査が不要とされている
207条9項4号
※現物出資財産について定められた会社法199条1項3号の価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合に合っては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合、当該証明を受けた現物出資財産の価額について、検査役の調査が不要
※現物出資財産として不動産を給付する場合には、弁護士等の証明のほかに不動産鑑定士の鑑定評価も受ける必要がある
207条9項5号
※現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る)であって、当該金銭債権について定められた会社法199条1項3号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合、当該金銭債権についての現物出資財産の価額について、検査役の調査が不要
※弁済期が到来していない金銭債権を現物出資財産とした場合には、検査役の調査が必要
募集事項の公示の欠缺(最判平9.1.28、百選27)
・新規発行に関する事項の公示を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる
・新株発行に関する事項の公示(201条3項、4項)に定める公告又は通知は、株主が新株発行差止請求権(210条)を行使する機会を保障することを目的として会社に義務付けられたものである
☆判例の趣旨によれば、募集事項の株主に対する通知又は公告をいずれも欠いたことは、募集株式の発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、募集株式の発行の無効原因となる
☆募集事項の株主に対する通知又は公告のいずれも欠いたことは、新株発行の無効原因となる
210条
※①株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合(1号)及び②株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合(2号)において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、会社法199条1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる
☆募集に係る株式の発行が、法令又は定款に違反しない場合であっても、著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、当該株式の発行をやめることを請求することができる
204条4項
※202条の規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合において、株主が募集株式の引受の申込期日(1項2号)までに募集株式の申込(203条2項)をしないときは、当該株主は、募集株式の割当を受ける権利を失う
☆株式会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合、株主は、募集株式の引受の申込をしなければ、募集株式の引受人とならない
208条3項
※募集株式の引受人は、208条1項の規定による払込み又は2項の規定による給付をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない
☆募集株式の引受人は、募集株式の払込金額の払込をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない
213条の3第1項
※出資の履行を仮装した場合には、募集株式の引受人が出資の履行を仮装することに関与した取締役(指名委員会等設置会社に合っては、執行役を含む)として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない
☆募集株式の引受人が募集株式の払込金額の払込を仮装した場合には、当該払込の仮装に関する職務を行った取締役(当該払込を仮装したものを除く)は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときであれば、株式会社に対し、払込を仮装した払込金額の支払をする義務を負わない
828条2項2号
※新株発行無効の訴えにおける原告適格は、「当該株式会社の株主等」に認められる
☆株式の発行の効力が生じた後に株式を取得した株主は、新株発行の無効の訴えを提起することができる
他人名義による株式の引受け(最判昭42.11.17、百選9)
・他人の承諾を得てその名義を用い株式を引き受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である
・株式の引受及び払込については、一般私法上の法律行為の場合と同じく、真に契約の当事者として申込みをした者が引受人としての権利を取得し、義務を負担するものと解すべきである
株券の発行(最判昭40.11.16、百選25)
・215条にいう株券の発行とは、会社が216条所定の形式を具備した文書を株主に交付することをいい、株主に交付したとき初めて該文書が株券となるものと解すべきである
☆株券発行会社が株券として会社法所定の要件を満たす文書を作成した場合でも、その文書は、株主に交付される前は、株券としての効力を有しない
譲渡制限に違反した株式譲渡の効力(最判昭48.6.15、百選18)
・株式の譲渡につき定款による制限のある場合に、株式が譲渡担保に供されることにつき取締役会の承認を得ていなくとも、当事者間では、有効なものとして、株式の権利移転の効力を生ずるものというべきである
・定款に取締役会の承認を要する旨の定めがある場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効である
・107条1項1号は、株式の譲渡につき、定款をもって取締役会の承認を要する旨定めることを妨げないと規定し、株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もっぱら会社にとって好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であることとに鑑みると、定款に前述のような定めが在る場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である
・株式を譲渡担保に供することは、127条にいう株式の譲渡にあたると解すべきである
☆会社の承認を得ないで譲渡制限株式を譲渡担保に供した場合には、その譲渡担保権の設定は、契約当事者間においては有効である
☆譲渡制限株式について、会社の承認を得ないで譲渡がされた場合、その譲渡は、譲渡当事者間において、その効力を有する
従業員持株制度と退職従業員の株式譲渡義務(最判平7.4.25、百選21)
・右制度の趣旨、内容を了解した上で被上告会社の株式を額面額で取得し、その際、被上告会社との間で、退職に際しては、同制度にもとづいて取得した株式を額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の合意をした……事実関係及び原審の説示するところに照らせば、本件合意は、127条に違反するものではなく、公序良俗にも反しないから有効
・127条は、会社と株主との間で個々に締結される株式の譲渡等その処分に関する契約の効力について直接規定するものではない
・株式をその時価にかかわりなく一律に額面額で簡便に取得することができるほか、相当程度の利益配当を受けることができるものであって、それなりに持株従業員の財産形成に寄与するものである
・持株従業員の投下資本の回収を著しく制限する不合理なものとまで断ずることができない
☆会社と従業員との間で、従業員の退職に際してはその有する当該会社の譲渡制限株式を会社の指定する者に譲渡する旨の合意をした場合、その合意は、有効である
最判平6.7.18
・新株発行の無効の訴えにおいて、828条1項2号の出訴期間経過後に新たな無効の事由を追加して主張することは許されないものと解するのが相当である
・右規定が出訴期間を新株発行の日から6ヶ月以内に制限したのは、新株発行に伴う複雑な法律関係を早期に確定するところにあるところ、新たな無効の事由を右期間後も主張することができるものとすると、右の法律関係が不安定になり右規定の趣旨が没却されることになるから、右規定は無効の事由の主張をも制限したものと解するのが相当であるからである
☆新株発行の無効の訴えにおいて、会社法所定の出訴期間の経過後に新たな無効事由を追加して主張することは、許されない
108条1項4号
・株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができる(柱書本文)
・譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(4号)
☆会社は、その発行する一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定款の定めを設けることができる
134条4号
※相続その他の一般承継の場合、株式取得者は、会社の承認を経ずに、ただちに株主名簿書換請求が可能である
☆譲渡制限株式の株主が死亡した場合には、その相続人は、当該譲渡制限株式の取得について会社の承認を得ることなく、会社に対し、株主の地位を主張することができる
最判平5.3.30
・本件のようないわゆる一人会社の株主がその保有する株式を他に譲渡した場合には、定款所定の取締役会の承認がなくとも、その譲渡は、会社に対する関係においても有効と解するのが相当である
☆判例の趣旨によれば、取締役会設置会社の唯一の株主がその保有する譲渡制限株式を他に譲渡した場合には、取締役会の決議による承認がないときであっても、その譲渡は、当事者間だけではなく、会社に対する関係においても有効である
139条1項
・株式会社が株主からの承認請求又は株式取得者からの承認請求の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない(本文)
・定款に別段の定めがある場合は、この限りでない(ただし書)
☆取締役会設置会社は、定款の定めにより、譲渡による株式の取得についての承認の決定を株主総会の決議によるものとすることができる
社債株式振替法151条1項、152条1項
※振替株式の発行者は、基準時において振替機関から会社に対して総株主通知がなされた場合には、株主名簿に通知事項により示された事項を記載し、又は記録しなければならない
☆振替株式に係る株主名簿の名義書換は、振替機関から会社に対し総株主通知がされた場合には行われるが、振替機関から会社に対し個別株主通知がされた場合には行われない
社債株式振替法140条、161条3項、会社法130条1項
・振替株式の譲渡は、振替の申請により、譲受人がその口座における保有欄(機関口座にあっては、社債株式振替法129条5項2号に掲げる事項を記載し、又は記録する欄)に当該譲渡に係る数の増加の記載又は記録を受けなければ、その効力を生じない
※振替株式の譲渡の効力は、株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社に対抗できない(会社法130条1項)
社債株式振替法143条、144条
☆振替口座簿中の譲渡人の口座における保有欄に、譲渡人が有する振替株式の数を超過する振替株式の数が誤って記録されていた場合でも、譲受人が譲渡人からその記録に係る全ての振替株式を譲り受ける旨の合意をし、かつ、振替の申請により、譲受人の口座における保有欄にその譲渡に係る数の増加の記録がされたときは、譲受人は、悪意又は重大な過失があるときを除き、その増加の記録に係る権利を取得する
社債株式振替法151条3項、4項、161条1項、会社法147条1項
☆振替株式の質入れがあった場合には、総株主通知の際に、その振替株式の質入れの事実を会社に知らせないようにすることができる
社債株式振替法277条前段
・振替株式の加入者は、その直近上位機関に対し、当該直近上位機関が定めた費用を支払って、当該直近上位機関が備える振替口座簿の自己の口座に記載され、若しくは記録されている事項を証明した書面の交付又は当該事項に係る情報を電磁的方法であって主務省令で定めるものにより提供することを請求することができる
☆振替株式を発行した会社は、正当な理由がある時は、振替機関に対し、所定の費用を支払って、その備える振替口座簿中の加入者の口座に記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができる
第三者に対する新株の有利発行と株主総会決議の欠缺(最判昭46.7.16、百選24)
・新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもって発行されたものであっても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とならない
☆募集株式を引き受ける者に特に有利な払込金額による募集株式の発行が株主総会の特別決議を経ないでされたことは、新株発行の無効原因とならない
著しい不公正発行と新株発行無効事由(最判平6.7.14、百選102)
・新株発行に関する有効な取締役会の決議がなくても、右新株の発行が有効であることは、当裁判所の判例(最判昭36.3.31)の示すところである。この理は、新株が著しく不公正な方法により発行された場合であっても、異なるところがない
☆募集株式の発行が著しく不公正な方法によってされたことは、無効原因とならない
最判昭36.3.31
・新株の発行について有効な取締役会の決議がなくとも、右新株の発行は有効
・いわゆる授権資本制を採用し、会社成立後の株式の発行を定款変更の市場愛とせず、その発行権限を取締役会に委ねており、新株発行の効力発生のためには、発行決定株式総数の引受及び払込を必要とせず、払込期日までに引受及び払込のあった部分だけで有効に新株の発行を為しうるものとしている208条5項等の点から考えると、改正法にあっては、新株の発行は株式会社の組織に関することとはいえ、むしろこれを会社の業務執行に準ずるものとして取り扱っている
☆募集株式の発行に必要とされる取締役会の決議を経ていないことは、新株発行の無効原因とならない
発行差止仮処分違反の新株発行の効力(最判平5.12.16、百選32)
・新株発行差止請求訴訟を本案とする新株発行差止めの仮処分命令があるにもかかわらず、あえて右仮処分命令に違反して新株発行がされた場合には、右仮処分命令違反は、……新株発行無効の訴えの無効原因となる
・差止請求権を株主の権利として特に認め、しかも仮処分命令を得る機会を株主に与えることによって差止請求権の実効性を担保しようとした法の趣旨が没却されてしまうことになる
☆募集株式の発行差止請求訴訟を本案とする募集株式の発行の差止めの仮処分命令があるにもかかわらず、その仮処分命令に違反して募集株式の発行がされたことは、新株発行の無効原因となる
第3節 新株予約権
236条1項
※株式会社が新株予約権を発行するときは、新株予約権の目的である株式の数・算定方式(1号)、新株予約権を行使することのできる期間(4号)等を新株予約権の内容としなければならない
※株式会社が新株予約権を発行する場合において、金銭以外の財産を新株予約権の行使に際して出資の目的とするときには、その旨並びに当該財産の内容及び価額を、当該新株予約権の内容としなければならない(3号)
☆新株予約権の行使に際し、金銭以外の財産を出資の目的とすることができる
238条1項
※新株予約権の募集事項の決定に際しては、募集新株予約権の内容及び数(1号)等を定めなければならない
※募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日(5号)
☆会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするとき、募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を必ずしも定める必要はない
113条4項
※新株予約権を発行する場合には、新株予約権者が将来取得する株式の数は発行可能株式総数から発行済み株式総数(自己株式の数を除く)を控除して得た、未発行株式の数を超えてはならない。ただし、新株予約権を行使できる期間(236条1項4号)の初日が到来していない場合は、この規定は適用されない
※公開会社でない会社が公開会社となる場合について、新株予約権買取請求権を認める規定はない
☆会社法上の公開会社でない取締役会設置会社である甲株式会社が新株予約権の発行後に定款を変更して会社法上の公開会社となる場合には、当該新株予約権の新株予約権者は、甲株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができない
240条
※公開会社は、取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の2週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知又は公告しなければならない(2項)
※公開会社でない会社については、通知・公告義務は規定されていない
☆会社法上の公開会社でない取締役会設置会社である甲株式会社の株主総会の決議によって、募集新株予約権についての募集事項の決定を取締役会に委任し、取締役会がその委任に基づいて募集事項を決定した場合、甲株式会社は、当該募集事項を株主に通知・公告する必要はない
241条2項本文
※株式会社が発行する新株予約権を引き受ける者の募集において、株主に新株予約権の割当を受ける権利を与えた場合(241条1項1号)、株主(当該株式会社を除く)は、その有する株式の数に応じて募集新株予約権の割当を受ける権利を有する
☆会社法上の公開会社でない取締役会設置会社である甲株式会社がその発行する新株予約権を引き受ける者の募集において株主に新株予約権の割当を受ける権利を与える場合には、甲株式会社は、自己株式について当該権利を有しない
245条1項、246条3項
※募集新株予約権の発行手続においては、割当までの手続が完了すると、申込者及び総引受契約を締結した者は、割当日に新株予約権者となる(245条1項)
※もっとも、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合には、新株予約権者は、募集新株予約権についての払込期日までに、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額の払込み(当該払込に換えてする金銭以外の財産の給付又は当該株式会社に対してする債権を持ってする相殺を含む)をしないときは、当該募集新株予約権を行使することができない(246条3項)
☆募集新株予約権の引受の申込をした者は、割当日に、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社である甲株式会社の割り当てた募集新株予約権の新株予約権者となるが、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合には、募集新株予約権についての払込期日までに、払込金額の全額の払込みをしなければ、当該募集新株予約権を行使することができない
☆新株予約権は、これを発行した会社の貸借対照表において、純資産の部に計上される
280条6項
※株式会社は、自己新株予約権を行使することができない
☆会社は、その有する新株予約権を行使することができない
247条
※新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合、又は、新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、238条1項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる
☆募集新株予約権の発行が法令に違反する場合において、既存の新株予約権者が不利益を受けるおそれがあるときでも、その新株予約権者は、会社に対し、新株予約権の発行をやめることを請求することができない
第7章 設立
第1節 総説
※会社がその子会社を設立するには、発起設立又は募集設立の他、株式交換、株式移転によることができる
828条1項1号、839条
※会社の設立を無効とする判決が確定した場合、判決の効力は将来に向かって生じ、遡及効がない
☆会社の設立を無効とする判決が確定したとき、その会社は、当初から存在しなかったことにはならない
第2節 発起人
27条5号、26条1項
※発起人とは、発起人として定款に署名した者をいう
☆法人は、発起人になることができる
331条1項1号
※法人は、会社経営という事務処理の受任者である取締役にはなれない
☆法人は、設立時取締役になることができない
39条3項、331条1項
☆設立時取締役は、発起人であることを要しない
36条
※発起人が出資をしないような場合は、失権予告付で履行を催告し、履行がなければ、当該発起人は、出資によって設立時発行株式の株主となる権利を喪失する(失権)
25条2項
・各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない
※発起人は設立時株式を1株以上引き受ける義務がある
※失権により発起人が1株も権利を取得しなくなるような場合には、他の出資者により出資された財産の価額が定款で定めた「設立に際して出資される財産の価額またはその最低限」を満たしていたとしても設立無効事由になる
☆発起人のうちの1人が設立時発行株式の株主となる権利を全て失った場合、他の発起人がその引き受けた設立時発行株式について出資の履行をした財産の価額が定款に記載された設立に際して出資される財産の価額又はその最低限を満たしているときも、株式会社の設立の無効事由となる
☆発起人が2名以上ある場合、そのうちの発起人1名が設立時発行株式の全てを引き受け、他の発起人が設立時発行株式を引き受けないということはできない
52条1項、2項、103条1項
※会社の成立時における現物出資又は財産引受けの目的である財産の価額が、その現物出資財産等について定款に記載・記録された価額に著しく不足するときは、発起人は、会社に対して連帯して、その不足額を支払う義務を負う。しかし、現物出資者又は財産引受けにおける譲渡人以外の発起人は、33条2項の検査役の調査を経た場合には、この責任を負わない
☆発起人の1人から財産引受けに係る契約が締結された場合において、会社の成立の時におけるその目的財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときは、その財産引受けに関する事項について裁判所が選任した検査役の調査を経たときであれば、他の発起人は、会社に対し、その不足額を支払う義務を負わない
※募集設立の場合、現物出資者以外の発起人の責任は、33条2項の検査役の調査を経ない限り、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明してもその責任を免れることはできない
☆募集設立において発起人の1人が現物出資をした場合において、会社の成立の時における現物出資財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するとき、他の発起人は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したとしても、会社に対し、その不足額を支払う義務を負う
103条4項、52条1項、2項
☆募集設立においては、発起人でない者であって、設立時発行株式を引き受ける者の募集の広告に自己の氏名又は名称及び会社の設立を賛助する旨を記載することを承諾したものは、現物出資に関する事項について裁判所が選任した検査役の調査を経た場合を除き、当該会社の成立の時における現物出資財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときは、当該会社に対し、当該不足額を支払う義務を負う
61条、59条1項
※原則として、発起人は、設立時募集株式を引き受けようとする者に対して、設立時募集株式に関する事項等を通知しなければならない(59条1項)
※設立時募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、契約交渉の過程において必要な情報の開示がなされることが期待できるため、通知義務は生じないこととされている(61条)
☆設立時募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合は、発起人は、その者に対し、設立時募集株式に関する事項等を通知する必要はない
53条2項、54条
※発起人がその職務を行うにつき、悪意又は重大な過失があったときは、第三者に対して連帯して損害賠償の責任を負う。
※この責任は総株主の同意があっても免除することはできない
☆発起人がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったことにより第三者に生じた損害を賠償する責任を負うときは、総株主の同意によっても、これを免れることができない
56条
※会社不成立の場合には、発起人は会社の設立に関してなした行為につき、過失の有無にかかわらず、全員連帯して責任を負い、かつ、会社の設立に関して支出した費用は発起人の負担となる
☆会社が成立しなかった場合において、発起人がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときでも、その発起人は、会社の設立に関して支出した費用を負担する
53条1項、54条、839条括弧書
※発起人は、会社の設立についてその任務を怠り、会社に損害を生じさせた場合には、会社に対し連帯して損害賠償の責任を負う(53条1項、54条)
※設立を無効とする判決があっても、既に会社、株主及び第三者の間に生じた法律関係は影響を受けない(839条括弧書)
☆発起人が会社の設立についてその任務を怠り、これによって会社に損害を生じさせた場合において、その会社について設立を無効とする判決が確定したときでも、その発起人は、会社に対し、損害を賠償する責任を負う
第3節 発起設立
最判昭37.3.2
・株金払込取扱銀行等は、その証明した払込金額を、会社成立の時まで保管してこれを会社に引渡すべきものであって、従って、会社成立前において発起人又は取締役に払込金を返還しても、その後成立した会社に対し払込金返還をもって対抗できない
・株式会社の募集設立の場合につき、……払込取扱銀行等に払込金保管証明の義務を負わせる(64条1項)とともに、……64条2項は、払込取扱銀行等はその証明した払込金額について払込のなかったこと又はその返還に関する制限をもって会社に対抗することができない旨規定している……趣旨が、払込につきその確実と健全を期し、会社をして取扱銀行等が証明した払込金額を完全に収受せしめ、もって設立の安固と資本の充実をはかるにあることは疑いがない
・会社設立前に払込金を使用できる旨の特別な規定のないこと
☆判例の趣旨によれば、募集設立において払込みの取扱いをした銀行は、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書を発起人に交付した後は、払い込まれた金銭を株式会社の成立前に発起人に返還したことをもって成立後の株式会社に対抗することができない
38条4項
・定款で設立時取締役(……)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。
☆定款で設立時取締役として定められた者は、その定款について公証人の認証を受けたときではなく、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなされる
38条1項、47条1項、48条1項
※指名委員会等設置会社以外の会社の場合、発起人は、遅滞なく設立時取締役を選任しなければならない(38条1項)。そして、取締役会設置会社においては、設立時取締役は、設立時代表取締役を選任する(47条1項)
※指名委員会等設置会社である場合には、発起人が設立時取締役を選任し(38条1項)、設立時取締役によって、設立時執行役および設立時代表執行役が選任される(48条1項)
46条1項4号
☆設立時取締役は、その選任後遅滞なく、設立の手続が法令又は定款に違反していないことを調査しなければならない
467条1項1号、309条2項11号
※事業全部を現物出資する場合、対価が株式という特殊性を有するが、367条1項1号の全部譲渡にあたると解されている。そして、事業の全部の譲渡をする場合、譲渡する株式会社において、株主総会の特別決議を経なければならない
☆株式会社が発起人となってその事業の全部を現物出資する場合には、現物出資をする会社において株主総会の特別決議を経なければならない
第4節 募集設立
63条2項
※払込みをすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡は、成立後の株式会社に対抗することができない
※既に出資の履行を済ませているため会社の成立により自動的に株主となる権利についての譲渡は、成立後の会社に対抗できない
☆設立時募集株式の引受人は、設立時募集株式の払込金額の全額の払込みをする前に設立時募集株式の株主となる権利を譲渡した場合に、当該譲渡を成立後の株式会社に対抗することができないが、当該払込みをした後に設立時発行株式の株主となる権利を譲渡した場合にも、当該譲渡を成立後の株式会社に対抗することができない
63条3項
・設立時募集株式の引受人は、募集株式に関する払込期日又は払込期間内における払込金額全額の払込みをしないときは、当該払込をすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失う
☆設立時募集株式の引受人が所定の期日又は期間内に設立時募集株式の払込金額の全額の払込をしなかった場合には、その引受人は、その払込をすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失う
60条
※発起人は、申込者の中から設立時募集株式の割当を受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる設立時募集株式の数を定めなければならない。この場合において、発起人は、当該申込者に割り当てる設立時募集株式の数を、申込者の示した「引き受けようとする設立時募集株式の数」よりも減少することができる(割当自由の原則)
64条1項
※設立時発行株式を引き受ける者の募集をした場合には、発起人は、34条1項及び63条1項の規定による払込みの取扱いをした銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる
☆発起人は、払込の取扱いをした銀行に対し、設立時募集株式のみならず、発起人が引き受けた設立時発行株式についても、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる
28条1号、34条1項、63条1項
※募集株式の引受人は、金銭の払込みを行うことしか規定されていないため、現物出資は発起人しか行うことができない
☆募集設立においては、設立時募集株式の引受人は、定款で定めても、現物出資をすることはできない
☆現物出資は、定款に定めなければならず、かつ、発起人しかすることができない
102条3項
☆設立時募集株式の引受人は、払込みを仮装した場合には、義務を負う者による全額の支払がされた後でなければ、払込を仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができない
73条4項ただし書、67条1項2号
※創立総会は、67条1項2号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない、ただし、定款の変更又は株式会社の設立の廃止については、この限りでない
☆設立の廃止については、創立総会の招集に際して創立総会の目的である事項として定められていなくても、創立総会において、決議することができる
88条1項
※募集設立の場合には、設立時取締役の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない
☆募集設立においては、設立時取締役は、発起人ではなく創立総会が選任する
96条
※創立総会決議による定款変更には公証人の認証は不要である
☆公証人による定款の認証を受けた後に、創立総会の決議により定款を変更した場合には、改めて公証人の認証を受ける必要はない
49条
※株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する
第8章 定款の変更
第9章 買収・結合・再編
第3節 組織再編
750条1項
※吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する
☆吸収合併存続会社は、吸収合併の登記をした日ではなく、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する
750条2項
☆吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない
☆同一の不動産について、その差押えと吸収分割による権利義務の承継との間の優劣は、不動産の差押えの登記時と吸収分割承継会社による所有権移転登記時の先後で決することになる(177条)
☆吸収合併の場合、消滅会社の解散は、吸収合併の登記の前は、悪意の第三者に対抗することができない
754条1項、49条
※新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する(754条1項)
※株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)
☆新設合併設立会社は、その本店の所在地において設立の登記をした日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する
769条3項1号、768条1項2号イ、6号
※株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代えて株式交換完全親株式会社の株式を交付するときは、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、株式交換完全親株式会社の株主となる
☆株式交換完全子会社の株主は、株式交換の登記がされた日ではなく、効力発生日に、株式交換完全親会社の株主となる
749条1項
※吸収合併の対価は「金銭等」とされており、特に限定がなされていない(2号柱書)
☆存続会社は、その親会社の株式を消滅会社の株主に対して合併対価として交付することができる
☆消滅会社が会社法上の公開会社である場合に、存続会社は消滅会社の株主に対し、合併対価として存続会社の譲渡制限株式を交付することができる
※合併対価が割り当てられる「吸収合併消滅株式会社の株主」からは、「吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社」が除かれている(3号)
☆存続会社は、消滅会社の自己株式については、合併対価が金銭であっても、合併対価を割り当てることはできない
※吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社は吸収合併に際して当該新株予約権者に対して、「当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭」を交付する旨を吸収合併契約において定めることが求められる(4号柱書)
☆存続会社は、消滅会社の新株予約権の新株予約権者に対し、その有する新株予約権に代えて存続会社の株式を交付することはできない
785条1項
※吸収合併に際し、吸収合併消滅株式会社の「反対株主」は株式買取請求権を行使できる
☆消滅会社の反対株主は、合併対価として交付を受ける株式の価額が各当事会社の財産の状況その他の事情に照らして相当である場合でも、株式買取請求権を行使することができる
2条27号、748条、24条
※「吸収合併」とは、「会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう」(2条27号)
・会社は他の会社と合併をすることができる(748条)
※24条は、会社が会社以外の商人との間で事業譲渡をする場合についての定めを設けている
☆吸収合併の相手方は、会社でなければならないが、事業譲渡の相手方は、会社でなくても良い
☆吸収合併の場合には、消滅会社はそれによって当然に解散するが、事業譲渡の場合には、譲渡会社はその事業の全部を譲渡してもそれによって当然には解散しない
749条1項2号
・吸収合併消滅会社……の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付する時は、当該金銭についての次に掲げる事項(柱書)
☆吸収合併及び事業譲渡のいずれにおいても、対価として交付される財産の種類は限定されない
☆吸収合併の場合、存続会社は、消滅会社の株主に対し、合併対価を何ら交付しないこととすることができる
☆吸収合併の場合には、消滅会社の債務は個々の債権者の同意なくして存続会社に承継されるが事業譲渡の場合には、譲渡の相手方が譲渡会社の債務を免責的に引き受けるためには、個々の債権者の同意を得なければならない
828条1項7号
・次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる(柱書)
・会社の吸収合併(7号)
☆吸収合併は、訴えによらなければその無効を主張することができないが、事業譲渡は、訴えによらずにその無効を主張することができる
795条2項1号、2号
※吸収合併の場合、いわゆる合併差損が生ずる合併も、することができる
834条8号
※新設合併の無効の訴えの被告は、新設合併により設立する会社とされている
☆新設合併の場合、新設合併契約を承認した消滅会社の株主総会の決議に瑕疵があることを理由として新設合併の無効の訴えを提起する時は、設立会社を被告としなければらない
☆株式会社を各当事会社とする合併が新設合併の場合、設立会社を株式会社とせず持分会社とすることもできる
第10章 解散・清算・倒産
第3編 持分会社・国際会社法
第11章 持分会社・組織変更
第1節 持分会社
585条
※業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる
※無限責任社員及び業務を執行する有限責任社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない
☆業務を執行しない無限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾だけでは、その持分の全部を他人に譲渡することはできない
608条3項
※持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めた場合には、当該一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす
☆持分会社の社員が死亡した場合にはその相続人が当該社員の持分を承継する旨の定款の定めがあるときは、当該相続人が持分を承継した時に、当該相続人に係る定款の変更をしたものとみなされる
605条
☆持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についてもこれを弁済する責任を負う
612条1項
※退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う
☆合資会社を退社した社員は、その登記をする前に生じた当該合資会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う
588条1項
※合資会社の有限責任社員が自己を無限責任社員であると誤認させる行為をしたときは、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負う
☆合資会社の有限責任社員は、その責任の限度を誤認させる行為をしたときは、出資の範囲を超えて合資会社の債務を弁済する責任を負う
576条1項5号
☆社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別は、定款の絶対的記載事項である
576条1項6号
※社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る)及びその価額又は評価の標準を持分会社の定款に記載し、又は記録しなければならない
☆有限責任社員は、信用を出資の目的とすることができない
☆合同会社の社員になろうとする者は、労務や信用を出資の目的とすることができない
617条
※持分会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない(1項)
※持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類を作成しなければならない(2項)
☆合名会社は、計算書類を作成する必要がある
639条1項
※合資会社の有限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなす
☆合資会社の有限責任社員が退社したことによりその会社の社員が無限責任社員のみとなったときは、その会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなされる
☆合資会社は、社員が1人となったとき、解散しない
☆合同会社を設立しようとする場合において、定款で定めた社員の出資の目的が金銭以外の財産であるとき、社員になろうとする者が、裁判所に対し検査役の選任の申立てをする必要はない
859条3号前段
※持分会社の社員について業務を執行するにあたって不正の行為をしたときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる
☆合同会社の業務を執行するにあたって不正の行為をした社員は、他の社員の過半数の同意によって除名することができる
581条1項
※社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合には、社員は、持分会社が主張することができる抗弁をもって当該持分会社の債権者に対抗することができる
☆合名会社の社員が会社の債務を弁済する責任を負う場合には、その社員は、会社が主張することができる抗弁をもって会社の債権者に対抗することができる
668条1項、2項、646条
※合名会社は、総社員の同意によって、会社の財産の処分の方法を定めることができ、清算人を置かないで清算をすることができる(任意清算)
☆合名会社は、定款で定めた解散の事由の発生によって解散したときは、総社員の同意によって、会社の財産の処分の方法を定め、清算人を置かないで清算をすることができる
2条1号、676条
※「会社」とは、「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう」(2条1項)
・会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは……次に掲げる事項を定めなければならない(676条)
☆合名会社及び合同会社は、いずれも、社債を発行することができる
590条1項
・社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する
☆合名会社及び合同会社のいずれにおいても、社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行する
2条31号
※「株式交換」とは、株式会社がその発行済株式……の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう
☆合名会社は、株式交換完全親会社となることができないが、合同会社は、株式交換完全親会社となることができる
576条2項
・設立しようとする持分会社が合名会社である場合には……その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない
☆合名会社では、社員の全員が会社の債権者に対して無限の人的責任を負い、合同会社では、実質的に間接有限責任を負う
2条26号、743条
※組織変更とは、①株式会社が、合名会社、合資会社又は合同会社になること、②合名会社、合資会社又は合同会社が、株式会社になることを言う(2条26号)
・組織変更をする……場合においては、組織変更計画を作成しなければならない(743条)
☆合名会社が合同会社となるためには、組織変更計画を作成する必要はない
☆合同会社が合名会社となるには、組織変更計画を作成する必要はない
604条2項
・持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる
☆会社が新たに社員を加入させる場合、定款の変更をしなければならない
598条1項
・法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
☆法人は、合同会社の業務を執行する社員となることができる
☆法人は、持分会社の社員となることができる
632条1項
※合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を変更する場合を除き、624条1項前段の規定による出資の払戻請求をすることができない
☆社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、会社に対し、出資の払戻しを請求することができない
第12章 外国会社・国際会社法
商法
商法27条括弧書
※代理商とは、一定の商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう
☆代理商は、商業使用人の一種ではない
商法26条
※物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう)を目的とする店舗の使用人は、その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
☆物品の販売を目的とする店舗の使用人は、善意の相手方に対しては、その店舗内に在る物品の販売をする権限を有するものとみなされる
商法22条
※商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする
☆支配人の選任及びその代理権の消滅については、その登記をしなければならない
商法23条2項
※支配人が1項の規定(支配人は、商人の許可を受けなければ、自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をしてはならない)に違反して1項2号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する
☆支配人が商人の許可を得ないで自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をしたときは、当該取引によって当該支配人又は第三者が得た利益の額は、その商人に生じた損害の額と推定される
商法24条
※商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない
商法21条1項
※支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する
商法507条
☆商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う
☆契約の申込みを受けた対話者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失うとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される
商法504条
※商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない
☆商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合には、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときであれば、代理人に対して履行の請求をすることができる
商法536条3項、537条
※匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない(536条3項)
※自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、例外的に営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う(537条)
☆匿名組合員は、自己の氏名を営業者の商号中に用いることを許諾した場合でも、営業者を代表することはできない
商法510条本文
※商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込とともに受け取った物品があるときは、その申込を拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない
☆商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、その物品を保管する必要がある
商法515条、民法349条
※質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質権の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない(民法349条)
※民法349条は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない(商法515条)
☆商行為によって生じた債権を担保するために設定された質権の質権設定者は、債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることを約することができる
商法5条
※未成年者が4条の営業を行うときは、その登記をしなければならない
☆未成年者は、商人となることができる
大決大13.6.13
※商人が数種の独立した営業をし、又は数個の営業所を有する場合においては、その各営業又は営業所につき別異の商号を有することを妨げない
☆商人は、複数の商号を登記することができる
☆商人が数種の独立した営業を行うときは、その商人は、その各営業につき異なる商号を使用することができる
商法15条
☆商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる(1項)
☆登記した商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(2項)
☆商人は、その営業を廃止するときは、その商号を譲渡することができる
商法19条2項
☆商人は、その営業のために使用する財産について、適時に、正確な会計帳簿及び貸借対照表を作成しなければならない
商法508条1項
☆商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、効力を失う
商法511条2項
※保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する
☆保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときでも、その債務は、各自が連帯して負担する
商法512条
・商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる
☆商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、その他人が商人であるか否かにかかわらず、相当な報酬を請求することができる
☆商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、その他人に対し相当な報酬を請求することができるとの規律は、当事者の片方が商人であれば適用される
商法513条
・商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる
☆金銭の消費貸借をしたときは、利息の約定がなくても、貸主が年6分のり率による利息を請求することができるとの規律は、当事者双方が商人である場合に限り適用される
商法515条
・民法349条(流質契約の禁止)の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない
☆質権設定者は、設定行為において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることを約することができるとの規律は、当事者の片方が商人であれば適用される
商法516条2項
※指図債権又は無記名債券の弁済は、債務者の現在の営業所(営業所がない場合に会っては、その住所)においてしなければならない
商法524条1項
※商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれらを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告した後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない
☆商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒んだために売主が相当の期間を定めて催告をした後にその者を競売に付したときは、売主は、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならないが、これを怠ったときも、その競売は無効とならない
☆買主が売買の目的物の受領を拒んだ場合でも、売買契約は、直ちに解除されたものとはみなされない
商法11条1項
・商人……は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる
☆商人の商号は、その商人の氏又は名を含む必要はない
商法12条
・何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない(1項)
・前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(2項)
☆商人は、自己と誤認されるおそれのある名称を不正の目的をもって使用する者がある場合において、その名称の仕様によって営業上の利益が侵害された時は、商号の登記をしていなくても、その侵害の停止を請求することができる
商法14条
・自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う
☆自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人がその営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、その取引によって生じた債務を当該他人の財産をもって完済することができる場合にも、連帯してその債務を弁済する責任を負う
商法522条
・商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる
☆商行為によって生じた債務の不履行に基づく損害賠償請求権には、商事消滅時効の適用がある
☆債権者のためには商行為ではなく、債務者のためにのみ商行為である行為によって生じた債権には、商事消滅時効の適用がある
☆商行為によって生じた債権は、商法に別段の定めがある場合及び他の法令に5年より短い時効期間の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅するとの規律は、当事者の片方が商人であれば適用される
最判昭55.1.24(総則・商行為百選49)
・利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は、法律の規定によって発生する債権であり、しかも、商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法趣旨から見て、商行為によって生じた債権に準ずるものと解することもできないから、その消滅時効の期間は民事上の一般債権として民法167条1項により10年と解するのが相当である
☆商行為である金銭消費貸借に関し、利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権には、商事消滅時効の適用又は準用がない
最判昭50.6.27(総則・商行為百選35)
・質屋営業者の金員貸付行為は、商法502条8号の銀行取引に当たらないと解するのが相当である
☆質屋を営む個人が商人ではない個人の顧客に対して貸付を行った場合におけるその貸付債権には、商事消滅時効の適用又は準用がない
最判昭36.11.24(総則・商行為百選34)
・白地小切手の補充権は小切手要件の欠缺を補充して完全な小切手を形成する権利であること、補充権は白地小切手に付着して当然に小切手の移転に随伴するものであること等にかんがみれば、補充権授与の行為は本来の手形行為ではないけれども商法501条4後所定の「手形に関する行為」に準ずるもの
・白地小切手の補充は、小切手金星丘の債権発生の要件を為すものであり、さらに小切手法が小切手上の権利に関し特に短期事項の制度を設けていること等を勘案すれば、白地小切手の補充権の消滅時効については商法522条の規定を準用するのが相当である
☆満期を白地として振り出された約束手形の白地補充権は、商事消滅時効の準用がある
大判明41.10.12
※支配人選任の登記をしないときでも、支配人選任の事実につき、第三者から支配人を選任した営業主に対抗することは妨げられない
☆判例の趣旨によれば、個人商人が支配人を選任した場合には、その登記の前でも、その支配人と取引をした第三者は、その個人商人に支配人の選任を対抗することができる
商法11条2項
・商人は、その商号の登記をすることができる
☆個人商人は、その商号を定めた時、その登記をしなくてもよい
最判平20.2.22
・会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと、すなわち当該事業の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である
・会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とされているので(会社法5条)、会社は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者として、商法上の商人に該当し(商法4条1項)、その行為は、その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項)
☆判例の趣旨によれば、会社の行為は、商行為と推定され、これを争う者において、その行為がその会社の事業のためにするものでないことの主張立証責任を負う
商法506条
・商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない
☆商行為の委任による代理の場合、代理権は、本人の死亡によって消滅しない
商法509条
・商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない(1項)
・商人が前項の通知を発することを怠った時は、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす(2項)
☆商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、遅滞なく諾否の通知を発することを怠った時は、その商人は、その契約の申込みを承諾したものとみなされる
最判昭47.5.25
・損害賠償債務も……商法514条にいう「商行為によりて生じたる債務」というに妨げない
・契約上の債務の不履行を原因とする損害賠償債務は、契約上の債務がその態様を変じたにすぎないものであるから、当該契約が商行為たる正確を有するのであれば、右損害賠償債務も、その正確を同じくするもの
☆判例の趣旨によれば、商行為によって生じた債務の不履行による損害賠償債務についての法定利率は、年6分である
最判平20.1.28
・会社法423条1項に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、商法522条所定の5年ではなく、民法167条1項により10年と解するのが相当である
・会社法423条1項に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが、方によってその内容が荷重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできない
・取締役の会社に対する任務懈怠行為は外部から容易に判明し難い場合が少なくないことをも考慮すると、同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任については商事取引における迅速決済の要請は妥当しない
☆判例の趣旨によれば、会社法423条1項に基づく株式会社の取締役に対する損害賠償請求権は、商行為によって生じた債権に当たらず、その消滅期間は10年である
商法1条2項
・商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる
☆商慣習が民法上の強行規定に優先して適用されることもある
☆商事に関しては、商法に定めがない事項について商慣習があれば、それに従う
民法92条
・法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
☆契約当事者が商法上の任意規定と異なる慣習に従う旨の合意をしている場合には、それが単なる「事実たる慣習」にすぎないときでも、その慣習が商法上の任意規定に優先する
大判明38.3.13
※商慣習法で裁判所に知れたものについて、当事者の申立てや立証を待たずに職権で適用する
☆商慣習が法的確信にまで高まっている場合、その適用を求める当事者は、訴訟において、その存在及び内容について証明責任を負わない
☆判例の趣旨に照らせば、商慣習が商法上の強行規定に優先して適用される場合がある
商法525条
・商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす
☆売買契約が特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない性質のものである場合、当事者の一方が履行をしないでその日時を経過したことを理由に相手方がその契約の効力を失わせるためには、解除の意思表示は不要である
最判昭35.12.2(総則・商行為百選51)
・商法526条(買主の目的物の検査と瑕疵の通知義務)の規定は、不特定物の売買の場合にも、適用がある
☆判例によれば、売買契約の目的物の瑕疵に関する通知義務を定めた商法の規定は、不特定物の場合にも適用される
最判平4.10.20(総則・商行為百選53)
・損害賠償請求権は、民法570条、566条3項により、買主が瑕疵又は数量不足を発見した時から1年の経過により消滅する
・このことは、商法526条の規定による右要件が充足されたこととは関わりがない
・商法526条は、商人間の売買における目的物に瑕疵又は数量不足がある場合に、買主が売主に対して損害賠償請求権等の権利を行使するための前提要件を規定したにとどまり、同条所定の義務を履行することにより買主が行使しうる権利の内容及びその消長については、民法の一般原則の定めるところによるべき
・この1年の期間制限は、除斥期間を規定したものと解すべき
☆判例によれば、売買契約の目的物に生じていた瑕疵が直ちに発見することのできないものである場合、受領後6ヶ月以内にその瑕疵を発見して直ちに通知を発しても、その瑕疵を理由とする損害賠償請求権について、瑕疵担保責任に関する民法上の除斥期間の規定は、適用される
商法527条
※買主は、売買の目的物に瑕疵又は数量不足があったために、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない(1項本文)
※買主のこの義務は遠隔地間の売買についてのみ生じ、売買当事者の営業所(営業所がないときはその住所)が同市町村内にあるときは除外される(4項)
☆売買契約の売主及び買主の営業所が異なる市町村内にある場合には、買主が売買の目的物に瑕疵があることを理由にその売買契約を解除したときであっても、買主は、その目的物を売主に送り返すことを要しない
商法14条
☆名板貸人の責任が生ずるのは、名板貸人が商人の場合に限られる
☆名板貸人の被用者が交通事故を起こしたことによる責任を名板貸人が負うことはない
502条11号
☆手数料を採って結婚相手の紹介を業とする行為は、営業的商行為の一つである仲立に当たる
手形法
最判昭52.6.20(手形小切手百選24)
・上告人が訴外Bから本件手形を取得するに際し、同訴外人が本件各手形を所持することにつき疑念を抱いて然るべき事情が認められるとした原審の認定はこれを肯定するに足り、手形振出名義人又は支払担当銀行に照会するなどなんらかの方法で手形振出の真否につき調査すべき注意義務があったにもかかわらず、なんらの調査をしなかった上告人に重大な過失があるとした原因の判断も相当であって、右の認定、判断の過程に所論の違法はない
☆判例の趣旨によれば、裏書の連続する手形の所持人から裏書きにより当該手形を譲り受ける者であっても、当該所持人が当該手形を所持することにつき疑念を抱いてしかるべき事情が認められる場合には、振出人又は支払担当銀行に照会するなどの方法で調査をしなければ、手形を善意取得することができない
☆善意取得は、手形の承継取得ではなく、原始取得の一例である
最判平成13.1.25(手形小切手百選80)
・手形について除権判決の言渡しがあったとしても、これよりも前に当該手形を善意取得した者は、当該手形に標章された手形上の権利を失わないと解するのが相当である
・手形に関する除権判決の効果は、当該手形を無効とし、除権判決申立人に当該手形を所持するのと同一の地位を回復させるにとどまるものであって、上記申立人が実質上手形権利者であることを確定するものではない。手形が善意取得されたときは、当該手形の従前の所持人は、その時点で手形上の権利を喪失するから、その後に除権判決の言渡を受けても、当該手形を所持するのと同一の地位を回復するにとどまり、手形上の権利までをも回復するものではなく、手形上の権利は善意取得者に帰属すると解するのが相当である。加えて、手形に関する除権判決の前提となる公示催告手続における公告の現状からすれば、手形の公示催告手続において善意取得者が除権判決の言渡しまでに裁判所に対して権利の届出及び当該手形の提出をするのは手形の流通保護の要請を損なうおそれがあるというべきである
☆判例の趣旨によれば、手形について除権決定があったとしても、これよりも前に当該手形を善意取得した者は、当該手形に表章された手形上の権利を失わない
大判昭2.4.2
※所持人の悪意・重過失の有無は、手形取得時を基準として判断し、取得時に悪意・重過失がなければ、その後、譲渡人の無権利につき悪意となっても善意取得の成立は妨げられることはない
☆無権利者からの裏書きの連続した手形を取得した者がその取得時に相手方の無権利につき善意でかつ重大な過失がない場合には、その後に事情を知った時であっても、当該手形を善意取得することができる
☆相続による手形の取得には、善意取得の適用はない
☆裏書人は、遡及義務者にならない場合がある
最判昭57.7.15(手形小切手百選73)
・約束手形の振出人の手形金支払い義務につき消滅時効が完成した場合には、裏書人の償還義務もこれにともなって消滅する
☆判例の趣旨によれば、訴求を受けて受け戻した手形の所持人は、満期の日から3年を経過した振出人の義務について消滅時効が完成した後には、前者である遡及義務者に訴求をすることができない
手形法77条1項5号、63条3号
※複数の参加支払が競合した時には、最も多くの手形債務者の義務を免れさせることになる参加支払が優先する
☆手形が、振出人AからB、BからC、CからD、DからEに順次裏書きによって譲渡され、手形の所持人Eが、裏書人B、C及びDのいずれに対しても訴求をすることができる要件を満たしているが、いまだその請求をしていない場合において、Eが、B、C及びDから同時に訴求金額の支払の申出を受けたときは、Eは、Bから支払を受けることができる
最判昭41.10.13(手形小切手百選39)
・いわゆる白地手形は満期にこれを支払のため提示しても、裏書人に対する手形上の権利行使の条件が具備しないのであって、後日右白地を補充しても、右提示が遡って有効になるものではない
・所論は、確定日払の約束手形においては、振出日の記載は手形上の権利の内容の確定のために必要でないから、その記載のない手形もこれを無効と解すべきでない旨主張するが、手形法75条、76条は、約束手形において振出日の記載を必要とするものとし、手形要件の記載を欠くものを約束手形としての効力を有しないものと定めるにあたり、確定日払の手形であるかどうかによって異なる取扱いをしていないのであって、画一的取扱いにより取引の安全を保持すべき手形の制度としては、特段の理由のない限り法の明文がないのに例外的取扱いを許すような解釈をすべきではない
☆判例の趣旨によれば、手形の所持人が、支払呈示期間内に、振出日が白地である確定日払の手形を、白地を補充しないで支払のために呈示し、支払を拒絶された場合には、支払呈示期間経過後に白地を補充したとしても、遡及をすることができない
最判平5.10.22(手形小切手百選68)
・約束手形の所持人が振出人に対し満期前に将来の給付の訴えとして約束手形請求訴訟を提起したが、口頭弁論終結前に満期が到来した場合には、裏書人に対する遡求権行使の要件として、支払呈示期間内に支払場所において振出人に対する支払呈示をしなければならないというべきであり(手形法43条、77条1項4号)、振出人に対する右訴訟の提起ないし訴状の送達は、裏書人に対する遡求権行使の要件である支払呈示としての効力を有しないものと解するのが相当である
・支払呈示が裏書人に対する遡求権行使の要件とされているのは、最終的な支払義務者である振出人に対し支払呈示期間内に支払場所において支払呈示をすることにより、請求者が約束手形の正当な所持人であることを確知させると同時に、振出人によって支払がされるのか否かを明らかにさせる必要があるためであるところ、右の必要性は、振出人に対し将来の給付の訴えである約束手形請求訴訟が提起され、その口頭弁論終結前に満期が到来した場合であっても異なるところはない
☆判例の趣旨によれば、約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起又は当該訴訟に係る訴状の送達は、裏書人に対する満期後の遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力を有しない
最判昭34.7.14(手形小切手百選26)
・被融通者以外の人の手に渡り、その者が手形所持人として支払を求めて来た場合には、手形振出人として手形上の責任を負わなければならない
・融通手形なるものは、被融通者をして該手形を利用して金銭を得もしくは得たと同一の効果を受けさせるためのものである
・手形所持人が単に原判示のような融通手形であることを知っていたと否とにより異なるところはない
☆Aが商取引の裏付けなく専ら手形を利用してBに金融を得させることを目的としてBに手形を振り出した場合において、BがCにこれを裏書譲渡したときは、Cがそのような手形振出の目的を知ってその手形を取得したときでも、Aは、そのことを理由として、Cに対して手形金の支払を拒むことができない
最判平13.1.25(手形小切手百選80)
・除権判決の言渡があったとしても、これよりも前に当該手形を善意取得した者は、当該手形に表章された手形上の権利を失わない
・除権判決の効果は、当該手形を無効とし、除権判決申立人に当該手形を所持するのと同一の地位を回復させるにとどまる
・手形が善意取得されたときは、当該手形の従前の所持人は、その時点で手形上の権利を喪失するから、その後に除権判決の言渡を受けても、当該手形を所持するのと同一の地位を回復するにとどまり、手形上の権利までをも回復するものではなく、手形上の権利は善意取得者に帰属する
・手形の公示催告手続において善意取得者が除権判決の言渡しまでに裁判所に対して権利の届出及び当該手形の提出をすることは実際上困難な場合が多く、除権判決の言渡しによって善意取得者が手形上の権利を失うとするのは手形の流通保護の要請を損なうおそれがある
☆手形を善意取得した者は、その手形について除権決定があったときも、その手形に表章された手形上の権利を失わない
最判昭41.11.10
・手形法77条2項、10条が、悪意又は重大な過失なくして白地手形を取得した上、予めなされている合意と異なる補充を自らした所持人に対する場合にも、適用ある
☆AがBに振り出した手形が白地手形であって、Bが白地の補充をしないままこれをCに裏書譲渡した場合において、CがA・B間であらかじめされた白地の補充に関する合意と異なる補充をしたとき、Cが善意でかつ重大な過失がないときは、Aは、その白地の補充に関する合意に反することをもってCに対抗することができない
最判昭61.7.18(手形小切手百選54)
・被裏書人欄の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、手形法77条1項1号において準用する同法16条1項の裏書の連続の関係においては、所持人において右抹消が権限のある者によってされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる
・当該裏書は被裏書人の記載のみをないものとして白地式裏書となると解するのが合理的であり、かつ、取引通年に照らしても相当であり、ひいては手形の流通の保護にも資することになる
☆手形の裏書欄の記載事項の内被裏書人欄の記載のみが抹消されたときは、その裏書きは、裏書の連続の関係では、白地式裏書となる
最判昭37.5.1(手形小切手百選28)
・手形所持人の前者が善意であるため、手形債務者がこれに対し人的抗弁を対抗し得ない場合においても、その前者の地位を承継し手形所持人に対しその悪意を云為して右人的抗弁の対抗を許すものとすべきではない
☆AがBに振り出した手形をBがCに裏書譲渡し、これをCが更にDに裏書譲渡した場合において、AがBに対する人的抗弁を善意のCに対して対抗することができないときは、Dがその人的抗弁の存在を知ってその手形を取得したときでも、Aは、Dに対してその人的抗弁を対抗することができない
手形法77条1項3号、40条1項
☆振出人が期限の利益を放棄して支払をすべき日よりも前に手形金の支払をしようとするときは、所持人は、その支払を拒むことができる
手形法77条1項3号、39条2項
※手形所持人は一部支払を拒むことができない
☆振出人が支払をすべき日に手形金の一部の支払をしようとするときは、所持人は、その支払を拒むことができない
手形法77条1項3号、40条3項
※満期において裏書きの連続による形式的資格を有する所持人に対して支払をした者は、所持人が無権利者でも、それについて悪意又は重大な過失がないかぎり免責される(40条3項前段)。
※支払をするものがこの免責を受けるためには、手形の方式の適否、引受人又は振出人の署名の真否、裏書きの連続の整否を調査しなければならず、これらの要件が欠ける手形については免責を受けない(40条3項後段)
☆振出人は、支払をすべき日に手形金の支払をするに当たり、裏書きの連続の整否を調査する義務を負うが、裏書人の署名を調査する義務を負わない
手形法77条1項3号、38条1項
※確定日払、日付後定期払又は一覧後定期払の手形は、「支払をなすべき日」又はこれに次ぐ2取引日以内に支払のため提示しなければならない
☆振出人は、所持人が支払をすべき日又はこれに次ぐ2取引日内に支払のために手形を呈示しないときでも、所持人に対する手形金の支払い義務を免れない
最判昭55.3.27
・約束手形の支払呈示期間内に適法な呈示がなかったときは、その後に呈示されても、振出人は、手形法78条1項、28条2項、48条1項2号及び49条2号所定の利息の支払義務を負わない
☆確定日払の手形の振出人は、所持人が支払のために手形の呈示をしないときは、支払をすべき日に支払をしなくても、同日以後の利息を支払わなくてよい
手形法77条1項1号、11条2項
※振出人は、「指図(裏書)禁止」の文字を記載することができる(指図(裏書)禁止手形)
手形法77条1項1号、15条2項
※裏書人は、裏書きをするに際して、新たに裏書きをすることを禁ずることができる(裏書禁止裏書)
☆振出人は、手形に「指図禁止」の文字を記載することができ、裏書人は、新たな裏書きを禁止することができる
手形法77条1項7号、69条
・為替手形の文言の変造の場合においては、その変造後の署名者は変造したる文言にしたがいて責任を負い、変造前の署名者は原文言にしたがいて責任を負う
☆手形金額を100万円とする手形が振り出された後に、手形金額が200万円に変造され、その後、裏書きがされた場合には、振出人は100万円の限度で手形上の債務を負い、裏書人は200万円について手形法の債務を負う
☆無権限の丙が受取人欄の記載を抹消して空欄とし、自己の名前を記載して満期前に第三者に裏書きをした場合において、その裏書きが無担保裏書でない時は、丙に対する遡求権が発生する
手形法75条5号、76条1項本文
※受取人の記載のない手形(白地手形)は、未完成手形であるから、受取人の記載を補充しない限り手形上の権利を行使することができない
☆受取人の記載のない手形について振出人に対し手形上の権利を行使するには、受取人の記載を補充する必要があるが、被裏書人の記載のない手形について裏書人に対し手形上の権利を行使するには、被裏書人の記載を補充する必要はない
手形法75条3号、小切手法28条1項
☆満期は、約束手形における手形要件であるが、小切手における小切手要件ではない
小切手法3条本文
☆支払人の資格は、為替手形については限定はないが、小切手については銀行又は法令によりこれと同視されるものに限られる
手形法77条1項8号、71条
※手形義務者の合同責任は一種の連帯責任であるが、民法上の典型的な連帯債務と異なり、各債務者についての時効の中断は、原則として独立であり、他の債務者に影響を与えない
☆振出人及び裏書人が手形所持人に対して合同して責任を負うときは、手形所持人が振出人に対して手形上の債務の履行を請求しても、裏書人に対しては時効の中断の効力を生じない
手形法77条1項8号、70条
※主たる債務者である約束手形の振出人に対する手形法上の権利は満期の日から3年で時効により消滅する(70条1項)
※手形所持人の裏書人に対する遡求権は拒絶証書作成の日(その作成が免除されているときは満期)から1年で時効により消滅する(70条2項)
※償還義務を履行した裏書人の他の裏書人に対する再遡求権は手形受戻の日又はその者が訴えを受けた日より6ヶ月で、時効により消滅する(70条3項)
手形法77条3項、32条2項
・保証はその担保したる債務が方式の瑕疵を除き他の如何なる事由によりて無効なるときといえどもこれを有効とす
☆AがBに対して約束手形を振り出し、Cが手形保証をした場合、Aが未成年者であり、その法定代理人がAの手形行為を取り消した場合でも、これによって、Cの手形保証債務は、無効とならない
最判昭45.6.18
・主たる債務につき消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅し、手形保証人は、手形所持人の請求に対しては、みずから主たる債務者の手形債務の消滅時効を援用することにより保証債務の消滅を主張してその履行を拒むことができる
・手形保証人がその手形行為に基づき主たる債務者と独立して手形上の債務を負担するものであることは、所論のとおりであるが、その責任は、保証としての性質上、手形保証人が自己の負担する債務を履行したときは、主たる債務者に対して求償権を行使しうることを前提とするものである(手形法32条3項、77条3項)。しかるに、主たる債務者の手形債務につき消滅時効が完成した場合にも手形保証債務が消滅しないものとするときは、手形保証人がその債務を履行した後に主たる債務者に対し求償権を行使しても、主たる債務者から自己の債務の消滅時効を援用されて、手形保証人は求償の途を失う自体を生ずることになり、手形保証の性質に反するものといわなければならない
☆AがBに対して約束手形を振り出し、Cが手形保証をした場合、判例によれば、Aの手形債務が時効により消滅した場合は、Cの手形保証債務は、消滅する
手形法77条3項、32条1項
・保証人は保証せられたる者と同一の責任を負う
☆AがBに対して約束手形を振り出し、Cが手形保証をした場合、BがCに手形保証債務の履行を請求するためには、遡求権保全の手続をとる必要はない
最判昭45.3.31(手形小切手百選63)
・手形保証人は受取人に対し手形金の支払を拒むことができる
・将来発生することあるべき債務の担保のために振り出され、振出人のために手形保証のなされた約束手形の受取人は、手形振出の右原因関係上の債務の不発生が確定したときは、特別の事情のないかぎり、爾後手形振出人に対してのみならず手形保証にに対しても手形上の権利を行使すべき実質的理由を失ったものである。しかるに、手形を返還せず手形が自己の手裡に存するのを奇貨として手形保証人から手形金の支払を求めようとするが如きは、信義誠実の原則に反して明らかに不当であり、権利の濫用に該当する
☆AがBに対して約束手形を振り出し、Cが手形保証をした場合、判例によれば、AB間の手形振出の原因関係においてAの債務の不発生が確定した場合、Cは、Bに対し、手形保証債務の履行を拒むことができる
手形法77条1項4号、47条1項
・為替手形の振出、引受、裏書又は保証を為したる者は所持人に対し合同してその責に任ず
☆AがBに対して約束手形を振り出し、Cが手形保証をした場合、Cが、Aに弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合でも、Bは、Aの財産についてではなく、Cの財産について執行することができる
手形法77条2項、6条
※手形金額を文字及び数字で記載した場合においてその金額に差異がある場合は文字で記載した額(6条1項)を、手形金額を文字を持って又は数字をもって記載した場合においてその金額に差異がある場合は最小金額(6条2項)を、それぞれ手形金額とする
☆手形の金額として2つの異なる金額を記載した場合でも、その手形は無効とならない
手形法77条2項、5条1項後段
※確定日払い、日付後定期払の手形には、利息文句の記載は、記載しても無益的記載事項となる
☆確定日払の手形において、手形金額につき利息を生ずる旨の約定を記載した場合でも、その手形は、無効とならない
最判昭44.3.4
☆判例によれば、手形の満期として平年の2月29日を記載した場合、その手形は、無効とならず、「2月末日」を意味するものとして手形を有効としている
手形法77条1項2号、33条2項
※分割払の手形は無効とする
☆手形の金額として毎月末に一定金額ずつ支払う旨の記載をした場合、手形金額となる総額が確定していても、その手形は、無効となる
手形法76条2項
※満期の記載がない約束手形は、これを一覧払のものとみなす
☆手形に満期の記載がない場合でも、その手形は、無効とはならない
※手形を預かった者が何ら権限を有さずに受取人の記載を抹消し空欄としても、白地補充権は発生せず当該手形は白地手形とならない
※無権利者によって抹消がなされても、手形上の権利が有効に変更されたり消滅することはない
最判昭41.11.10
※受取人欄の名称が無権限で抹消された後、これを補充した第三者が手形金を請求したという事実関係においては、本件約束手形について手形文言の変造があったものと認めるべき
※振出人の当該手形所持人たる第三者に対する手形金支払い義務を否定
※振出人は、変造前の原文言に従い責任を負う
手形法85条
※為替手形又は約束手形より生じた権利が手続の欠缺又は時効によって消滅しても所持人は振出人、引受人又は裏書人に対しその受けた利益の限度において償還を請求することができる
※利得償還請求権を取得するのは、失権当時に実質的に証券上の権利者であったことを要し、実質的に無権利者であれば権利を取得することはできない
民事訴訟法356条本文
・手形訴訟の終局判決に対しては、公訴をすることはできない
民事訴訟法352条1項
※手形訴訟においては、証拠調べは、書証に限りすることができる
手形法28条1項、小切手法4条
☆支払人による引受は、為替手形については行うことができるが、小切手については禁じられている
小切手法39条
※小切手の場合にも、支払拒絶による遡求が認められる