秋学期の科目に向けて
夏学期の定期試験が終了したのも束の間、秋学期がやってきますね。
憲法、民法、刑法という楽しい基本科目と対照的に、秋学期は手続法である民事訴訟法と刑事訴訟法、具体的なイメージが湧きにくい行政法、多くの専門用語が立ちはだかる商法(会社法)と、難敵揃いです。
別に私も、きちんとこれらの科目を勉強しているわけではないのですが、友人からオススメの本を聞かれることも多いので、予備試験の択一終了後、急いでそれぞれの科目を仕上げるために有用だった基本書や参考書を紹介したいと思います。
もちろん、あくまでも個人的な意見です。また、迷った場合には、シラバス等で指定された基本書を用いるのが一番効率的だと思います。
民事訴訟法の基本書
新堂民訴
東大ロースクールで民事訴訟法を勉強する場合には、やはり新堂先生の民事訴訟法をマスターするのが一番なのではないかと思います。
新堂先生の基本書は、その厚さに手を出すのをためらいそうになってしまいますが、実際に読んでみると、平易な言葉で軽快な文章が記述されているため、思いの外読みやすいです。
私はこれまで、重要な部分(訴訟物等)について掻い摘んで一読し、その後は辞書として使用していますが、とても分かりやすいです。
もっとも、新堂先生の理論は、新訴訟物理論にしても争点効理論にしても、時間が無限大にあって、民事訴訟において完全に議論が尽くされる理想状態を前提に組み立てられているため、訴訟経済を考え争点の拡散を避ける実務の立場とは異なることに注意が必要です。
基礎からわかる民事訴訟法
東大以外のロースクールで民事訴訟法を勉強される方は、和田先生の基礎からわかる民事訴訟法がオススメです。図が多くて理解しやすいことと、学生が一般的に陥りやすい誤解について適宜ピックアップして記述があるため、読んでいくと理解が進みます。
予備試験受験者は、民事実務科目は旧訴訟物理論で記述する必要があるので、新堂民訴よりもこちらを軸に勉強するのがいいのではないかと思います。
また、この本も、読みやすいとはいえ、最初の方に記述のある「管轄」等の記述は、初学者にとって「眠訴」なので、パーッと通読した後で2周目のときに熟読すればいいのではないかと思います。
民事訴訟法の演習書
ロープラクティス民事訴訟法
民事訴訟法の演習書は、選ぶのが難しいですが、私はベーシックにロープラを使いました。全分野が網羅的に記述されているので、これをマスターすればどんな問題にも対応できると思います。また、予備試験の民事訴訟法の問題は、ロープラの問題に類似したものが多いので、予備試験を受ける方はロープラがいいのではないかと思います。
事例演習民事訴訟法は、事例演習刑事訴訟法と違って対話形式ではなく読みにくい上、少しレベルが高いので初学者にはオススメしません。
また、一般的に長谷部先生らの「基礎演習民事訴訟法」の評判がいいのですが、私は使ったことがありません。
その他で役に立ったもの
民事裁判実務の基礎
これは、民事訴訟法の基本書を一読した後に読むのがオススメです。
民事訴訟法の学習は基本書だけで勉強していると、抽象的すぎて掴みどころがないのですが、私はこの本を読んで目からウロコが落ちるように理解が進みました。
①訴訟物レベル、②事実レベル(主張レベル)、③立証レベルでそれぞれ、処分権主義、弁論主義、自由心証主義がどのように機能しているかを意識するのとしないのとでは、民事訴訟法の勉強効率が大きく変わると思います。