リカレント!

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今でも若者は沢木耕太郎の『深夜特急』に憧れて一人旅に出るのだろうか

私も沢木耕太郎に憧れた一人

 私が一人旅に出たのは、大学4年最後の1ヶ月。2013年の3月である。

 下関から青島行きのフェリーに乗り、シベリア鉄道などを経由してポルトガルのロカ岬まで到達した後、アメリカに渡って車で西海岸まで横断した。もちろんこんな旅を請け負ってくれる旅行代理店はなかったから、全て自分で手配した。大学4年間全てかけて準備したと言っても過言ではない。

 1ヶ月で世界一周するため、準備は周到に行った。世界一周のために、前期教養学部の2年間で、中国語・ロシア語・フランス語・スペイン語を学習したほどだ。日本にいる間に、中国の旅行代理店に中国高速鉄道とシベリア鉄道のチケットの手配を依頼し、アメリカの"Way to Russia"というサイトで発行した空インビテーションでロシアビザを発行した。ユーレイルパスも事前に入手していたし、国際免許の発行も忘れなかった。

 事前に国内で確保することができなかったのは、モスクワからEU圏までの移動手段だけであった。安全策をとって、ベラルーシを通るルートとウクライナを通るルートの2つを想定し、ベラルーシのビザも取得しておいた。

 沢木耕太郎が深夜特急に記したような行き当たりばったりな旅に憧れていたが、そこまでの勇気はなかったというのが正直なところである。

私が「深夜特急」を読んだきっかけ

 私に深夜特急を読むきっかけを与えてくれたのは、下の記事で紹介した友人であった。私よりも4年も前、18歳にしてユーラシア大陸単独横断を成し遂げた彼が、教えてくれたのである。

 読めば読むほど深夜特急の世界に引き込まれた。音を聞き分けて大勝しかけたマカオのカジノや、耽美で爽やかなペナンの娼婦の宿、タイの女学生との交流。イスタンブールで詐欺師の熊に襲われそうになった場面は最も印象深い。

外国への見方を変えた沢木耕太郎は偉大である

 今でもそう思っている日本人が多いのかもしれないが、外国は、日本人が思っているほど怖い場所ではない。強盗や殺人、テロが日常茶飯事の世界なんかではない。海外から日本に伝わって来るほどの強烈なニュースが、先入観を植え付けているのである。

 深夜特急を読んだ人間は、本を通じてそれを知り、海外に旅立つハードルが低くなる。同書をバイブルという人の中には、深夜特急という書物がなければ海外一人旅に出ていないという人も多いのではないだろうか。

 「未知」の世界の恐怖を解消し、旅立つべく心震わせてくれる物語を記した沢木耕太郎は、やはり偉大である。

 

人生一度は世界一周一人旅をしよう

 ブログを始めて改めて実感したが、今や世界一周をした経験のある日本人は五万といる。聞いたところによると、転職の際の面接でも、「バックパッカーやっていました」とか「世界一周しました」という人はありふれているらしい。

 しかし、たとえそうであったとしても、世界の広さを知り、海外を身近に感じることのできる人の方が好ましいと思う。井の中の蛙は空の高さを知るというけれど、井の外の蛙は空の高さだけじゃなくその広大さも知っている。

 海外に行くことへのハードルを高く感じている人は、一度「深夜特急」の世界に触れることをお勧めしたい。

 

深夜特急(1?6) 合本版

深夜特急(1?6) 合本版

作者: 沢木耕太郎

出版社/メーカー: 新潮社