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費用18万円削減!賃貸・部屋探しで悪徳不動産屋に負けない法律知識・交渉術まとめ

図解とQ&Aでわかる 賃貸トラブル解決マニュアル すぐに役立つ

冒頭注:丁寧に記事を書いた結果、かなりの長文となっています。全部読むのに1時間程度かかります。しかし、この記事は読めば必ず役に立ちます。実際に、私はここに記した方法で実際に18万円も費用を削減していますので、お時間がある時にお読み頂ければ幸いです。

目次

部屋探しの前に、悪徳不動産屋に騙されないための知識を身につけよう

 こんにちは! 宅建試験合格者のさんエリと申します。

 いきなり「宅建試験合格者」とか名乗られても「???」だと思うので、「宅建」について一応説明させていただきますね。

 「宅建」とは、「宅地建物取引士」の略です。以前は「宅地建物取引主任者」という資格でしたが、今では宅建士として士業の仲間入りをしています。

 といっても、「宅建士なんて聞いたことない! 初めて聞いた!」という方も多いかと思います。それも無理はありません。なぜならば、これは不動産業を営む上で必要となる資格だからです。

 不動産は、賃貸にしても売買にしても、それなりに大きな金額が動く取引になります。また、部屋を住居として借りる場合、そこは生活の本拠地として、人々が生活を営む中でとても大切な場所になります。

 そこで、例えば、「見た目は綺麗だけど実際に住んでみたら生活に必要な設備が整備されていない!」だとか、「オーナーには防音バッチリと言われたけど、実は木造で騒音がヒドイ!」だとか、そういうトラブルを防ぐために、きちんと不動産取引に関する法律的な知識を有した「宅地建物取引士」を不動産屋に置いて、重要な事項については宅地建物取引士から説明させるように法律で定められているのです。

 言うなれば、宅地建物取引士は、「部屋の賃貸等に関する法律のエキスパート」であるわけです。

 しかし、残念ながら、弁護士等と違って、宅建士が部屋を借りる側の味方になることはまずありません。なぜならば、宅建士も不動産屋の従業員だからです。

 そして、世の中には法律を平気で無視する悪徳不動産屋が沢山います。私も以前は、悪徳不動産屋なんて一握りの例外的な存在だと思っていたのですが、部屋探しを始めるとまともな不動産屋の方が例外的な存在であることを知りました。実際に私が遭遇したケースについては、こちらの記事(要注意!口コミ高評価で大学生協提携店でも悪質な不動産屋は存在する)をご覧ください。

 つまり、不動産屋と契約をする際に、あなたを守れるのはあなた自身しかいないのです。

 この記事では、部屋を借りる際に不動産屋に騙されないための法律知識や交渉術について全てまとめています。

 実際に私は、先日とある物件を借りるために不動産屋とやりとりをしていたところ、最終的に、先方が当初提示してきた金額よりも18万円以上の費用を削減することができました(詳しくは記事の最後に書いています)。

 進学や就職、転勤の時期ですが、気持ちよく新生活を送るためにも、この記事の知識を全て頭に入れてから部屋探しをすることをオススメします!

前提となる基本知識

 さて、いきなり不動産屋との交渉の話をしてもいいのですが、そうすると聞いたこともないような専門用語が飛び交うことになってしまうので、部屋探しをしていく上でまず知っておくべき基本的な知識について4点お話したいと思います。

 そんな基本的なことは知っているよという方は読み飛ばして頂いて構いませんが、部屋探しが初めての方などは、これを読んだ後で記事の後半を読んで頂くと、スッと内容が頭に入ってくるかと思います。

不動産賃貸の構造(不動産屋の役割)

 部屋を借りたいと思った時、大抵は「不動産屋」に行きますよね?

 この「不動産屋」という用語が厄介なのですが、「本屋」や「レンタルビデオ屋」などと違って、不動産屋は、自分が所有する不動産を販売したり貸し出したりする訳ではありません

 賃貸物件に関する不動産屋の仕事は、「家を貸したい人(物件のオーナー)」と「家を借りたい人(客)」とを引き合わせることです。

 これを、法律用語で「媒介」と言います(細かく言えば、不動産屋は「媒介」だけでなく「代理」の仕事もしたりするのですが、世の中の賃貸物件の大半は「媒介」なので、「代理」については割愛させて頂きます。なお、「代理」の場合であっても、この記事で紹介する法律知識や交渉術は同様に使うことができますので御心配なく)。

 この「媒介」のことを、不動産屋の従業員は「仲介」と呼ぶことがありますが、「仲介=媒介」だと理解してしまって全く問題ありません。また、一般的に「斡旋」という言葉が使われることもありますが、これも媒介と同じ意味だと考えて頂いて構いません。

 なお、現実には「家を貸したい人(物件のオーナー)」と「家を借りたい人(客)」が同じ不動産屋に訪れることは殆どないため、不動産屋同士の横の繋がりを使って、次のような形で賃貸契約が結ばれることが多いです。

貸主(物件のオーナー)
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貸主担当の不動産屋(管理会社)
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借主担当の不動産屋(仲介業者)
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借主(客)

 要するに、貸主借主とを、2つの不動産屋を通じて引き合わせる媒介する)ということです。

 2つの不動産屋を区別するのがややこしいので、法律的な正式名称ではありませんが、貸主(オーナー)担当の不動産屋を「管理会社」、借主(客)担当の不動産屋を「仲介業者」と呼ぶことにします。実際に不動産屋の従業員と会話する際も、このような呼び方で十分に通じます。

 ただし、法律的には管理会社にしても仲介業者にしても行っている業務は「媒介」であって、同じ役割を果たしているにすぎないので、名前に惑わされないように注意してください。

 また、入居後のトラブルなどでお世話になるのは管理会社の方です。仲介業者賃貸契約を締結したらそれで基本的に関係は終了します。

 なお、たまたま借主(借主)が訪れた不動産屋が、管理会社であった場合は、上の図から仲介業者が抜けることになります。

貸主(物件のオーナー)
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貸主担当の不動産屋(管理会社)
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借主(客)

 しかし、間に不動産屋がいくつ入ろうが、1つの賃貸契約から不動産屋が受け取れる報酬総額の上限は法令等で決まっていますので(後述)、無理して最初から管理会社を訪れる必要はありません。 

契約の構造(各契約の法的性質)

 先程、不動産の賃貸については、下図のような形で契約が行われるということをお伝えしました。

 しかし、これは法律的に見ると、全体がひとつの契約となっている訳ではありません。

貸主(物件のオーナー)
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貸主担当の不動産屋(管理会社)
 |
借主担当の不動産屋(仲介業者)
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借主(客)

 実際には、次の3つに分解することができます。

  1. 貸主(オーナー)管理会社との媒介契約
  2. 借主(客)仲介業者との媒介契約
  3. 貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約

 これらについて、それぞれ説明させていただきます。

貸主(オーナー)管理会社との媒介契約

貸主(物件のオーナー)
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貸主担当の不動産屋(管理会社)

 これは、貸主(オーナー)管理会社との契約ですので、借主(客)には殆ど関係ありません。要するに、「部屋を貸したいので、借りたい人を探してください」という内容の契約をし、この契約に基づいて管理会社が借主(客)を探すことになります。

 法律的には、「準委任契約(民法656条)」として扱われ、「委任」に関する規定がすべて準用されることになります。

民法第656条

 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。 

 これに関して借主(客)の側が注意しておかなければならないことは、貸主(オーナー)が、この媒介契約(準委任契約)をいつでも解除することができるということです(民法656条、651条)。

民法第651条

 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。  

 ですから、「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約 」が締結されるまでの間であれば貸主はいつでも媒介契約を解除して、部屋を貸す話をなかったことにすることができるのです。しかもその際、貸主(オーナー)借主(客)に対して損害を賠償する義務などは負いません。

 したがって、借主(客)は、借りたい部屋の貸主(オーナー)に不信感を与えないように注意をしながら手続きを進める必要があります。

 また、この貸主(オーナー)管理会社との間の媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約という3つの種類があるのですが、これについては後述します。

借主(客)仲介業者との媒介契約

借主担当の不動産屋(仲介業者)
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借主(客)

 こちらは、まさに借主(客)が不動産屋(仲介業者)に訪れて、「部屋を借りたいので部屋を探して欲しい」と依頼し、仲介業者がその依頼を引き受けることで成立する契約です。

 これも、「①貸主(オーナー)管理会社との媒介契約」と同様に、民法上の「準委任契約」としての性質を有します。

 なお、不動産の「売買又は交換」の場合であれば、仲介業者は媒介契約について書面を作成する必要がありますが(宅建業法第34条の2)、賃貸(部屋を借りる)の場合は契約書がなくても部屋探しの合意があった時点で媒介契約が成立します。

宅建業法第34条の2

第1項 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。 

 しかし、契約が成立したとしても、先程の「①貸主(オーナー)管理会社との媒介契約」と同様に、借主(客)又は仲介業者のどちらからでも好きな時に解除することができます(民法656条、651条)。

 なお、民法上、準委任契約は原則として無償で行われることが規定されています(民法第648条第1項)が、仲介業者は商法における「商人(商法第4条第1項)」に該当するため、有償で行われることが原則となります(商法512条。商法は、民法の特別法であるため、民法に優先して適用されます)。

民法第648条

第1項 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない

商法第4条

第1項 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

商法第512条

 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

 ただし、不動産屋が受け取ることのできる報酬については、法令等で上限が定められています。報酬の上限額については、後で詳しく説明します。

貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約

貸主(物件のオーナー)
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借主(客)

 さて、これまで「①貸主(オーナー)管理会社との媒介契約」と「②借主(客)仲介業者との媒介契約」について見てきましたが、契約の本体は「貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」です。

 前述のように、不動産屋(管理会社仲介会社)はあくまでも「媒介(貸主借主を引き合わせること)」が仕事です。

 不動産屋で探した後、希望する部屋を借りて住むという行為は、全て「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」を根拠になされるものなのです。

 この契約は、民法上の賃貸借契約に該当します。

民法第601条

 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 よって、この契約の解除等については賃貸借に関する民法の規定が適用されることになりますが、相対的に弱い立場に置かれている借主(客)を保護するため、借地借家法という法律も用意されていて、民法に優先して適用されます。

 借地借家法には、例えば、貸主(オーナー)側から解約したい場合は6ヶ月前に申し入れなければならない(民法では建物賃貸借の解約は3ヶ月前)だとか、厳しい要件を満たさなければ貸主(オーナー)は部屋を借りる契約の更新を拒絶することができないだとか、借主(客)に有利なルールが規定されています。

借地借家法第27条

第1項 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

借地借家法第28条

 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 また、裁判所の判例によって、「信頼関係破壊の法理」という法理論が確立されていて、貸主借主との間の信頼関係が破壊されたと認められる状況でない限り、貸主(オーナー)は賃貸借契約を解除することができないとされています。

 信頼関係破壊の判断基準のひとつは、3ヶ月以上の家賃未納(債務不履行)とされています。

 したがって、「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」に関する契約書の中に「家賃を1ヶ月滞納した場合は本件賃貸借契約を解除する」などといった記載があった場合、実際に1ヶ月滞納してしまったとしても、それだけでただちに、当該契約書や民法541条に基づいて解約することはできないのです。

民法第541条

 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 このように、貸主(オーナー)の側からいつでも契約を解除することができた「①貸主(オーナー)管理会社との媒介契約」と違って、「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」を締結してしまえば貸主(オーナー)は簡単に契約を解除することができなくなります。 

 よって、借主(客)として目指すべき目標は、いかに費用を安くして「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」を結ぶかということになります。

 なお、一般的に、「③貸主(オーナー)借主(客)との賃貸借契約」は次のような流れで締結されます。

(1) 借主(客)から貸主(オーナー)への入居を希望する意思表示(入居審査の依頼)

(2) 貸主(オーナー)による入居審査

(3) 貸主(オーナー)から借主(客)への入居を許可する意思表示貸主(オーナー)は賃貸借契約書にサイン

(4) 仲介業者又は管理会社宅建士による重要事項説明の後、借主(客)が賃貸借契約書にサイン

※「重要事項説明」というのは、借りようとする物件に関する登記簿上の情報や、利用制限事項、設備等の重要な情報について、借主(客)に対し、有資格者である宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示した上で、書面で説明しなければならないというプロセスで、賃貸借契約の成立前に必ず行わなければならないと宅建業法で定められています。

 なお、(1)〜(3)のプロセスでは賃貸借契約は成立しておらず(4)で借主(客)が賃貸借契約書にサインした段階で初めて賃貸借契約が成立すると考えられます。

※民法における賃貸借契約は諾成契約(当事者双方の合意だけで成立する契約。契約書等は無くてもいい)とされていますが、宅建業法第35条において、「契約が成立するまでの間に」重要事項を説明することが義務付けられており、また、重要事項説明の後に賃貸借契約書にサインをすることが慣例となっていることから、未だ重要事項説明を受けていない(1)の時点では、「(借主(客)が重要事項説明を受けた後に賃貸借契約書にサインした場合には)賃貸借契約を締結したい」という申込みの意思表示がなされているにすぎないと考えられるからです。

宅建業法第35条

第1項 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。(後略)

 逆に言えば、(4)で借主(客)が賃貸借契約書にサインするまでの間は借主貸主との間に何らの法律関係は成立しておらず、いつでも自由に(1)の「入居を希望する意思表示」を撤回することができるということです。

 このことは、重要事項説明がなされた後など、契約書にサインする直前で賃貸の申込みを撤回する場合などに問題になることがあります。 

一般媒介・専任媒介・専属専任媒介 

 部屋探しのために、住宅情報サイトのSUUMOやHOME'Sを見ていると、物件の詳細欄に「一般媒介」や「専任媒介」、「専属専任媒介」といった記載がある場合があります。

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(参照元:http://www.homes.co.jp/

 これは、先程説明した「①貸主(オーナー)管理会社との間の媒介契約」の種類であって、借主(客)の側にはあまり関係のないことなので読み飛ばしてもらってもかまいませんが、一応説明しておきます。

 通常、貸主(オーナー)は、少しでも早く借主(客)を見つけるために、複数の不動産屋(管理会社に媒介をお願いすることができます。このような、通常の媒介契約を「一般媒介契約」と呼びます。

 しかし、場合によって貸主(オーナー)は、付き合いが長く信頼している不動産屋がある場合など、「他の不動産屋に浮気せず、あなたの会社だけにこの物件の媒介をお願いするからよろしくね」と、1つの不動産屋(管理会社)だけに媒介を依頼する場合があります。これを「専任媒介契約」と呼びます。専任媒介契約の場合、貸主(オーナー)は、定期的に管理会社から報告を受けることができるといったメリットがあります。

 ただし、専任媒介契約を締結し、1つの不動産屋(管理会社)だけに媒介を依頼した場合であっても、自分で見つけた借主(客)と賃貸契約を締結することもできます。これを「自己発見取引」と呼びますが、この自己発見取引すらも禁止し、完全に1つの不動産屋だけに媒介を依頼する契約を「専属専任媒介契約」と呼びます。

 まとめると次のようになります。

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http://www.fudousan.or.jp/kiso/sale/3_4.htmlより引用)

 なお、専任媒介契約又は専属専任媒介契約の物件であっても、借主(客)管理会社仲介業者の両方を間に挟む形でその物件を紹介してもらうことは可能ですので、物件が一般媒介であろうと専任媒介であろうと専属専任媒介であろうと借主(客)にはあまり影響がありません

※しいて言えば、専属専任媒介契約の場合であれば、貸主(オーナー)による自己発見取引で取引が中断されるリスクがなくなるといった程度のメリットはあります。

REINS(指定流通機構)について

 「不動産賃貸の構造(不動産屋の役割)」について説明する中で「不動産屋同士の横の繋がり」ということを言いました。といっても、実際に不動産屋同士が普段から交流しているかというとそういう訳ではありません。

 実際には、REINS(レインズ)という国土交通大臣指定物件データベースを通じて繋がっているのです。宅建業法の中に、「指定流通機構」という言葉が使われているのですが、「指定流通機構=REINS」ということになります。

 本来、貸主(オーナー)専任媒介契約又は専属専任媒介契約を締結した管理会社に、指定流通機構(REINS)への登録が義務付けられていて(宅建業法第34条の2第5項)、一般媒介の場合、登録は任意なのですが、実際にはREINSに登録した方が早く借主(客)を見つけることができることから、一般媒介契約の物件も殆どがREINSに登録されています(正確には、REINSに登録されていない物件は、どこの不動産屋も紹介できないので、一般人が借りられる物件の99.9%はREINSに登録された物件に限られるということです)。

宅建業法第34条の2

第5項 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。

 不動産屋(仲介業者)は、基本的にREINSを使って借主(客)の希望にマッチした部屋を探すのです。

 なお、SUUMOやHOME'Sといった住宅情報サイトには、REINSで得た情報を元に不動産屋が物件情報を掲載するため、REINSよりも更新スピードが遅いですし、SUUMOやHOME'Sに物件情報を掲載している不動産屋が管理会社とは限りません

 残念ながらREINSを一般人が閲覧することはできないため、REINSでの検索は完全に不動産屋にお任せすることになってしまいます。良心的な不動産屋では、一緒にREINSの画面を見ながら部屋を探してくれますが、不動産屋によってはREINSの画面を見せてくれなかったり、REINSの代わりにSUUMOの業者版のページを借主(客)に提示して部屋探しをするところがあります。

 

 以上で、前提となる基本知識に関する説明は終わりです。

 次のステップでは実際に部屋探して借りるまでのプロセスについて説明させていただきます。

 読んでいるうちに、言葉の意味が分からなくなってしまったら、これまでの基本的な知識に関する記述をもう一度読み返してみてください。

部屋の探し方

希望する部屋を見つけよう

 知り合いが不動産屋だったりして仲のいい不動産屋がいる場合は別ですが、一般的には初対面の不動産屋(仲介業者仲介をお願いすることになります。

 そのような場合、飛び込みで不動産屋に行っても希望通りの物件が見つかることは滅多にありません

 また、家賃の相場観を持たずに不動産屋に行っても、相場より高い物件を契約させられてしまったりして、最終的に嫌な思いをすることになります。

 そこで、まずはSUUMOやHOME'Sといった住宅情報サイトで、希望に近い部屋をピックアップしてから不動産屋に行くのがオススメです。

 個人的にHOME'Sの地図検索http://www.homes.co.jp/chintai/tokyo/map/)が探しやすいように思います(注:私はHOME'Sの関係者ではありません)。ただし、悪徳不動産屋は、実際の不動産屋の所在地ではない場所に物件を登録し、条件のいい物件のように見せかけている場合があるので、物件の所在地については改めてGoogle Mapなどで確認することが必要です。

 住宅情報サイトで、築年数や広さ、構造(木造や鉄筋コンクリート造など)も参考にしながら色々な部屋を見ていると、住みたい地域のおおよその相場観を把握することができます。これにより、不相当に高い家賃で部屋を契約してしまうことを防ぐことができます。

 また、住宅情報サイトにはいわゆる「おとり物件」という、「既に入居者が決まっているにも関わらず、情報掲載をすることで、客を呼び寄せるための物件」が掲載されている場合があります(実際に、私が入居予定の部屋も、私の入居が決まって2週間近く経つにも関わらずいまだに住宅情報サイトに掲載されています)。

 ですから、その物件が本当に入居できる物件なのか、半信半疑でサイトを閲覧する必要があります。

 でも、たとえそれがおとり物件だとしてもいいのです。なぜならば、あくまでも自分の希望する部屋のイメージを、不動産屋(仲介業者)に伝えるための部屋を探しているのですから。 

掲載している不動産屋(仲介業者)に関する評判を調べよう

 気になる部屋をいくつか(3〜5件程度)ピックアップしたら、その物件情報を住宅情報サイトに掲載している不動産会社(仲介業者)の評判GoogleやTwitterで検索しましょう。

 以前こちらの記事で書いたように、ネット上の口コミが100%信頼できるわけではなく口コミが高評価であっても実際には悪質なことをやっている不動産屋は沢山存在していますが、「そもそもネット上での評判が低いにも関わらず実際に訪れてみたら善良な不動産会社だった」なんてケースはまずありません

 なお、もしかしたらこの作業をしている間に、住宅情報サイトに掲載している不動産会社が、単なる仲介業者ではなく、希望する部屋の管理会社であることが判明するかもしれません。

 その場合、ネガティブな情報がなければ、まずその不動産屋(管理会社)を訪れましょう

 一方、その管理会社についてネガティブな情報ばかり出てきた場合は、入居後や退去時に色々なトラブルに巻き込まれる場合があるので、その物件を借りることは諦めましょう。いくら気に入った部屋に入居できたとしても、入居後のトラブルでイラ立たされては満足いく生活を送ることはできません

 もちろん、悪質な管理会社に当たってしまった場合でも、後から法律的な手を打つことはできます。しかし、それにはかなりの体力を使いますトラブルには予め巻き込まれないようにするのが一番です。

不動産屋(仲介業者)を訪れよう

 さて、こうして調べた不動産屋(仲介業者)についてネガティブな情報が少なければ、実際に仲介業者を訪れてみましょう。

 この時の持ち物は、①ピックアップした部屋の物件情報(印刷するか、ブックマークしてスマホで見られるようにしておくか)と②スマートフォン、③10万円程度の現金です。

 実際に訪れたら、店内の雰囲気従業員の態度を見て、信頼できる不動産屋か確認するのも大事ですが、もうひとつチェックすべき点があります。

 それが「仲介手数料」についてです。

 詳しくは後述しますが、居住用建物の場合、不動産屋は、借主(客)の承諾がない限り、賃料の半月分(0.54月分)までしか仲介手数料を受け取ることができません。

 一方で、借主(客)の承諾がある場合は、賃料の一月分(1.08月分)まで受け取ることができます。

 これは法令等で定められたルールです。

 こちらが承諾をしない限り法律上は0.54月分の仲介手数料を支払う義務しかないので、仲介手数料について借主(客)の側から質問する必要はありません(むしろしない方が好ましいです)。

 そこで、ずる賢い仲介業者は、借主(客)が余計な知識を付けていない部屋探し初期の段階でこの承諾を取ろうとします。

 ですから、仲介業者の従業員が「うちは仲介手数料1月分でやらせてもらってます!」などと発言していないか注意するだけでなく、仲介業者を初めて訪れた時に記入する情報シート(氏名や希望する物件の条件について記載する用紙)「仲介手数料は1.08月分です」などと書いていないか注意するようにしてください。

 そして、仲介手数料に関する話をこの段階で持ち出された場合、「半月分にしていただけませんか?」と相談(交渉)をし、相手の反応を見ましょう。

 仲介業者の従業員が少しでも嫌な顔をしたら、いい部屋を紹介してもらえなくなる可能性が高まるので、その仲介業者を後にして別の仲介業者にお願いすることにしましょう。

 また、訪れた不動産屋が管理会社であった場合(貸主(オーナー)借主(客)との間に管理会社だけ挟んで賃貸契約をする場合)、仲介業者へのマージンが発生しないため、仲介手数料半月分で手続きを進めてくれる可能性が高いです

 逆に、管理会社であるにも関わらず強硬に一月分の仲介手数料を要求してくる場合には、コンプライアンス(法令遵守)意識が低い管理会社ということで、入居後にトラブルになる可能性が高いので、その管理会社を去るとともに、その部屋を借りることは諦めましょう。なぜならば、他の仲介業者を介したところで、結局その管理会社も契約関係に含まれることになるからです。

 さて、従業員の態度も悪くなく、また、仲介手数料一月分の説明もなかった場合(又は、説明があったけれども嫌な顔せずに半月分にしてくれた場合)、実際に部屋探しをその仲介業者にお願いすることにしましょう。

 この時、預り金として支払うために、10万円程度の現金を持参していることも伝えるといいでしょう。法令で定められた義務ではありませんが、多くの仲介業者は、入居審査の際に、家賃の一月分相当額を預けることを求めてきます。これは、貸主(オーナー)に対して、借主(客)の「部屋を借りる意思」を明示するためのものであり、最終的には借主(客)に全額返還されるお金で、「預り金」と呼ばれます。仲介業者に訪れた当日に部屋の申込みをしない場合、預り金を支払う必要はありませんが、「預り金のためのお金を持参してきた」ということで、「真剣に部屋を探している」というこちらの意思仲介業者に対して示すことができます。こうすることで、仲介業者も真剣に部屋を探してくれるようになるため、姿勢を示すこの行為はとても大事です。

 預り金のためにお金を用意していることを伝えた後、仲介業者の従業員には、事前にピックアップした部屋をすべて提示し、その空き状況を調べてもらうとともに、それと似た条件の部屋がないか、探してもらいます。

 事前にピックアップした部屋が空いているのであれば、すぐに内見(実際に部屋を見ること)をして、条件が悪くなければ申込みをしてもいいと思います。

 なお、事前にピックアップした部屋がどれも空いていない場合、その日は一度帰宅して、いい物件が出てきたら連絡をもらえるようにお願いしておくのがいいでしょう。

 いい物件は、すぐに成約してしまいます。それこそ、REINSに登録されて数時間後には申込みがされてしまうくらいのスピード感です。逆に言えば、不動産屋に訪れた日にすぐ紹介される物件は、長らく入居者がいないワケ有り物件である可能性が高いからです。

 このとき、同時に3社くらいの仲介業者を掛け持ちして部屋探しをお願いしておくといいでしょう。

 どの不動産会社もREINSで部屋を探すため、元となるデータベースは同じなのですが、不動産屋の従業員によって、提案してくる部屋にかなりの違いが出てくるからです。また、部屋探しを依頼していた仲介業者が、真剣に借主(客)の希望する物件を探していないというリスクを減らすことができます。

 逆に、8社とか9社とか、沢山の仲介業者に同時並行で依頼してもあまりメリットはなく、電話やメールの対応で疲弊するだけなのでその必要はありません。

物件を管理している不動産屋に関する評判を調べよう

 そうこうしていると、希望に沿う空き物件が見つかると思います。

 この時、焦ってはいけません。

 実際に部屋を見に行くこと(内見)も大事ですが、その前にすべきことがあります。

 それが「希望する部屋の管理会社の評判を調べる」ということです。

 これについては、その部屋を紹介してくれた仲介業者の担当者に質問してみたら何か教えてくれるかもしれませんし、仲介業者の評判を調べた時と同様に、管理会社についてGoogleやTwitterで検索してみることが大事です。

 どことは言いませんが、敷金・礼金は0一見良心的なように見える物件でも、管理会社貸主(オーナー)がグルで、共益費として毎月15,000円ボッタクって総額的に見たら礼金を一月分払うよりも高額になってしまったりとか、退去時に30万円もの高額な費用を請求されたりとか、悪質な管理会社によるトラブルが頻発している物件もあるのです。

 場合によっては、この作業を仲介業者の店内で行わなければならない場合があります。その時のために、スマートフォン必ず持っていくようにしましょう。

物件に申込みをしよう

 希望する空き物件の管理会社に問題がなければ、仲介業者に必要事項を記入した用紙を渡して、仲介業者管理会社を通じて貸主(オーナー)に入居審査の申込みを行いましょう。

 この時に気をつけること2つです。

 ひとつは、仲介業者から「預り金」を請求された場合、そのお金が、当該物件を契約した場合でもしなかった場合でも全額返還されるものであることを確認することです。なお、預り金を渡した場合には、「預り証」を必ず発行してもらいましょう。預り証がないと、預り金の返還時にトラブルになる場合があります。

 もうひとつは、入居審査の申込みに必要な書類の中に「以後、入居の申込みを撤回する場合には、相応の損害賠償金を支払うものとする」というような記述がないことを確認することです。この記述がある場合、入居審査後にやはりその部屋を借りないこととなった場合などに、お金を請求されるトラブルになったりします。

「騙し取られやすいお金」と「騙されないための法律知識」

 ここまで長文をお読み頂きありがとうございます。

 読むのに疲れたという方もいらっしゃると思います。

 しかし、実際に不動産屋(仲介業者)とお金の話をする、ここからの記述が本番です。一度休憩を挟んでからでもいいので、最後までお読み頂ければ幸いです。実際に数万円、十数万円というお金に直結する話なのですから、かならずあなた自身に返ってきます。

 ここからは、実際に不動産屋(仲介業者管理会社)に騙し取られやすいお金について個別に説明し、それに対応するための法律知識についても解説していきます。

家賃

 まずはじめに、一番基本的な「家賃・礼金」です。

 悪質な仲介業者は、この段階で借主(客)からお金をむしり取ろうとします。

 「そんなこと可能なの?」と思われるかもしれませんが、それが可能なんです。

 特に、REINSのシステムを借主(客)には見せないようにしている仲介業者で注意が必要なのですが、REINSに掲載された家賃に仲介業者が上乗せした金額を、借主(客)に提示するのです。

 これは実際に、私もやられました

 私が希望する条件にぴったり合う部屋として、とある仲介業者が紹介してきた物件は家賃10万9千円

 しかし、その物件についてHOME'SやSUUMOで調べてみると、家賃10万5千円と表示されているのです。もちろん、部屋番号も一致しました。

 そこで、REINSの画面を見せてくれる別の良心的な仲介業者にお願いして調べてみたところ、REINS上の情報も10万5千円となっていたのです!

 これについて、最初にその部屋を紹介してきた仲介業者に尋ねたところ、一応管理会社に確認するフリをした後で、すぐに10万5千円の家賃に訂正されました。

 たかが4千円と思うかもしれませんが、賃貸の契約は原則として2年間(=24ヶ月)です。2年間のスパンで考えれば、4,000円×24ヶ月=96,000円も騙し取られるところだったのです(家賃は礼金や仲介手数料にも跳ね返るので、実際にはもっと削減したことになります)

 もし私が気づかなかった場合、この金額の中の一部が、最終的に紹介した仲介業者に払い戻されることになっていたのでしょう。

 これは、刑法的には詐欺罪(刑法第246条第1項)に該当しうる行為ですし、民法においても不法行為に基づく損害賠償(民法第709条)及び不当利得の返還(民法第704条、第703条)を請求できる事態ですが、REINSという閉鎖的なデータベースをもとに立証しなければならないため、相手の詐欺行為を証明するのがとても難しいように思います。

刑法第246条

第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 

民法第709条

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第703条

 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

民法第704条

 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

 ですから、家賃については騙し取られることのないように、部屋の紹介をされた時点で、REINSの画面を見せてくれる他の仲介業者に協力してもらうなどして、正規の金額を確認する必要があります。

礼金

 礼金についても、家賃と同様の手段で借主(客)から騙し取ろうとします。

 実際にREINS上では「礼金1月分」となっているのを「礼金2月分」と改竄したり、貸主(オーナー)の好意で「礼金0月分」となっている物件を「礼金1月分」として紹介したりするのです。

 最近、礼金0月分の物件の方が珍しかったりしますから、借主(客)は当然のように1月分を払うものの、実際にそれは払う必要のないお金で、そのまま直接仲介業者のポケットに入ることになったりするのです。

 これに対する防衛策は、家賃の時と同様に、REINSの画面を直接確認することです。

共益費

 共益費についても、家賃・礼金と同様の手段が用いられます。

 実際には共益費0円であるにも関わらず、1ヶ月につき5千円や1万円の共益費がかかってしまう旨を、借主(客)に説明して契約させることで、最終的に共益費の一部を仲介業者のポケットに入れようとするのです。

 共益費についても、REINSの画面に記載がありますので、必ず確認するようにしてください。

仲介手数料

 一番トラブルになりやすく、また、違法に騙し取られている件数が多いのが、「仲介手数料」です。

 これまでの説明の中でも何度か出てきましたが、不動産屋が1つの賃貸借契約から受け取ることのできる仲介手数料については法令等で上限が定められています

 具体的には、宅建業法第46条と、同条から委任を受けて制定された「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)」です。

宅建業法第46条

第1項 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は国土交通大臣の定めるところによる。
第2項 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号) 

第4 賃借の媒介に関する報酬の額

 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税相当額を含む。以下この規定において同じ)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(中略)の一月分の1.08倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き借賃の一月分の0.54倍に相当する金額以内とする。

 ここで着目すべきは、建設省告示の2文目です。

 要するに、借主(客)の承諾がない限り、不動産屋は、賃料の0.54月分までしか借主(客)から受け取ることはできないというわけです。

 逆に言えば、借主(客)の承諾があって初めて、不動産屋は、賃料の1.08月分まで借主(客)から受け取ることができます

 しかし、このような規定があるにも関わらず、多くの不動産屋は、借主(客)からの明示の承諾を得ることなく賃料の1.08月分を請求し、受領しています。

※不動産屋が「法令では、承諾がない限り半月分しか仲介手数料(報酬)を受け取ることができないことになっているんですが、お客様は一月分支払うという承諾をしてくださいますか?」と聞いてきたら、借主(客)はその不動産屋を去って、他の不動産屋に行ってしまい、に逃げられてしまう可能性が高いでしょう。ですから、わざわざ明示の承諾を取るようなことはしないのです。

 それでは、このような不動産屋の行為がなぜ事後的に問題にならないのでしょうか。

 それは、殆どの借主(客)がこのような規定の存在を知らず、特に異議を申し立てること無く請求されたとおりの金額を支払ってしまうからです。

 この「請求通りに1.08月分を支払う」という行為が、「承諾」とみなされてしまうのです。

 また、最初から私は法令で定められたとおり、賃料の半月分しか払いません!という借主(客)は、入居審査の段階で仲介業者落としてしまうのです。入居審査では、落ちたとしても、その理由を説明しないこととなっています。ですから、本当は仲介手数料が原因で落としたとしても、そのことについて説明する必要はないのです。実際に入居審査をするのは管理会社貸主(オーナー)ですが、たとえ入居審査に通ったとしても、仲介業者管理会社貸主(オーナー)に対しては「借主(客)が申し込みを撤回してきた」と嘘の情報を伝える一方で、借主(客)に対しては、「入居審査に落ちました」と嘘の情報を伝えて終了です。

 それでは、このような仲介業者に対してはどのように対処すればいいのでしょうか。

 それは、入居審査が通過するまでの間は仲介手数料に関する話を一切せず入居審査通過後に仲介手数料を含めた契約金(敷金・礼金・各種手数料等)の支払を請求された段階で初めて、仲介手数料に関する話をするのです。

 もちろん、契約金の支払を請求された際、仲介手数料が賃料の0.54月分であればそれは当然に請求できる金額ですから、特に異議を述べる必要はありません。

 しかし、実際に私も経験したのですが、悪徳不動産屋は大抵、それまで一切、仲介手数料に関する話をしていないにも関わらず、契約金の請求段階になって当然のように1.08月分の仲介手数料を含めた契約金の支払を請求してきます。しかも、その時も何ら仲介手数料に関する説明はされません(私の場合は、請求金額が記載された請求書がメールで一方的に送付されただけでした)。

 そこで、借主(客)の反撃の番です。

 仲介業者の店内に必ず掲示されている「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号) 」を根拠に、次のようなことを仲介業者の従業員に告げるのです。

 「私は、仲介手数料が0.54月分だと思っていました。なぜならば、そのように書かれた告示が店内に掲示してあるからです。これまで、私は1.08月分支払うという承諾をした覚えはありません。私は0.54月分しか仲介手数料を支払うつもりはありません。

 なぜこんなことが言えるかというと、先程見た「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号) 」は、不動産屋の店内の見えやすいところに必ず掲示しなければならない宅建業法で定められているからです(宅建業法第46条第4項)。

宅建業法第46条

第4項 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

 悪徳不動産屋の場合、この告示を見にくい場所小さい字掲示していたりするのですが、不動産屋の方から「あなたにはあれを見ていないはずだ。だって、あんなに見にくい場所に掲示してあるのだから」なんて言うことはできません

 なぜならば、法律で「公衆の見やすい場所に」「掲示しなければならない」と書いてあるからです。それを「見にくい場所に掲示してあるのだから見ていないはず」なんて言ったら、自ら宅建業法第46条第4項に違反していることを自白していることになるからです。

※なお、この時、仲介業者が、物件の情報シートに記載された次のような表を見せて、「これが承諾の根拠だ!」と言ってくるかもしれません。

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 確かに、借主」のところに「100%」と書いてある当該表の意味するところは、「借主(客)が1.08月分の仲介手数料を負担する」という意味ではあるのですが、こんなざっくばらんな表の読み方を一般人の常識のように扱うのは筋が通りません

 「この表がそんな意味だとは知らなかった。何の説明もしなかったくせに、こんな専門的な表を承諾の根拠とするのはおかしい」と言って一蹴しましょう。

 このような展開になると、仲介業者は困って慌てるはずです。なぜならば、こちらの主張は全て筋が通っていて法律に適合しているからです。筋を曲げて違法なことをしようとしているのは、1.08月分の仲介手数料を無断で請求してきた仲介業者の方です。

 これに対して、仲介業者は2通りの対応をしてくることが想定されます。

 ひとつは、こちらの主張通り、0.54月分の仲介手数料で手続きを進めてくれる場合です。この場合、この仲介業者はまだ良心的です。

 最悪なのはもうひとつのパターンです。実際に私もこちらのパターンに遭遇してしまったのですが、仲介業者が完全に開き直って1.08月分の仲介手数料をお支払いいただけない場合、これからの手続きを進めることができません」という強気な発言に出てきた場合です。

 これは、「不当に高額の報酬の要求(宅建業法第47条第2号)」及び「威迫(同法第47条の2第2項)」として宅建業法に違反し、話の進め方によっては刑法上の犯罪である「恐喝罪(刑法249条第1項)」に該当しかねない行為なのですが、なぜかこのような対応をしてくる不動産屋がいるのです。

宅建業法第47条

 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

 第2号  不当に高額の報酬を要求する行為 

宅建業法第47条の2

第2項 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。

刑法第249条

第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 こうなってしまったらどうしようもありません。このまま関わるのも面倒なので、この仲介業者との関係を断つ方向に移りましょう。

 しかし、この後の動きを考えると、ここで、借主(客)の側から媒介契約を解除するのはオススメできません

 あくまでも、媒介契約の解除については、仲介業者の方から言わせましょう

 仲介業者が頑なに媒介契約の解除すらしない場合には、次のように発言しましょう。

 「私は法令で定められた報酬を支払うと言っているのに、そちらは手続きを進めようとしない。このままでは、善管注意義務違反として、損害賠償を請求することになりますよ」と。

 前述の通り、借主(客)仲介業者との間には、準委任契約としての性質を有する媒介契約が締結されているため、仲介業者は「善管注意義務(善良な注意者の管理義務)」(民法第644条)を負っています。つまり、仲介業者委託された媒介業務を円滑に行う義務を負っているのです。

民法第644条

 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

  善管注意義務に違反した場合、仲介業者債務不履行に基づく損害賠償責任(415条)を負うことになります(話がそれますが、以前、ヨッピーさんの記事で、おとり物件について追求したら仲介手数料が0円になったけどその後放置されたという記事がありましたが、このような場合も当然、媒介契約が継続している以上、善管注意義務を仲介業者が負っていて、債務不履行に基づく損害賠償責任を問うことができます)。

民法第415条

 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

※この行為が、刑法上の脅迫罪(刑法第222条第1項)や強要罪(同法第223条第1項)に該当するのではないかと心配になられる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも相手が追っている善管注意義務の履行を促しているだけであることから強要罪の構成要件には該当しませんし、脅迫罪の構成要件に該当したとしても、契約上の義務の履行を促す正当行為であるとして違法性が阻却される(同法第35条)ため問題はありません

刑法第222条

第1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

刑法第223条

第1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

刑法第35条

 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 ここまで言ってもまだ仲介業者強硬姿勢を崩さず媒介契約を解除してくれない場合は、こちらから媒介契約を解除した上で他の仲介業者を通じて希望する他の物件を探すことにしましょう。また、このときは、宅建業法違反等の行為についてしかるべき対応をとってもいいかもしれません(詳しくは後述)。

 一方、ここで仲介業者媒介契約を解除してきたらこちらのものです。媒介契約が存在しなくなった以上、この仲介業者義理を通す必要はありません

 すぐに入居審査済の物件を管理している管理会社に連絡し、「仲介業者から違法な要求を受けた挙句、最終的に仲介業者の方から媒介契約を解除された」ということを伝えましょう。

 入居審査も既に通過している状態ですし、管理会社としても途中まで進んだ話をなかったことにするのではなくそのままの状態で進めたいと考えているはずです。

 この時、管理会社が1.08月分の仲介手数料を請求してきたらそれはそれで考えものなのですが、それは滅多にないでしょう。そもそも、仲介業者が存在する元の状態であれば、仲介手数料は仲介業者管理会社で折半することとなり、半月分以下しか入ってこなかったはずですから。

仲介業者との媒介契約を借主(客)の側から解除した上で、直接管理会社と接触を図るのは、いわゆる「抜き」と呼ばれる行為になってしまうので、やってはいけません。不動産業界でタブーとされる行為ですので。あくまでも仲介業者から媒介契約を解除させるのです。

契約事務手数料

 仲介手数料の話と関連して、借主(客)に不当に請求されるのが、「契約事務手数料」です。

 これは、仲介業者又は管理会社から請求されるものですが、「契約に必要な書類の準備に必要な経費」として5千円〜1万円程度を請求されることがあります。

 確かに、媒介契約は準委任契約の性質を持つため、民法の原則に従って、必要な経費は借主(客)が負担しなければなりません(民法第640条、650条第1項)。

民法第649条

 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

民法第650条

第1項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

 しかし、よく考えてみてください。書類の印刷だけで5千円もかかることありますか?

 普通そんなにかからないですよね。

 おそらくこれには書類作成にかかる人件費も含まれているのでしょう。

 しかし、媒介契約にかかる人件費は、あくまでも「報酬」として受け取るべきものです。そして、「報酬」については、前述の通り宅建業法等で上限が定められており上限ギリギリの仲介手数料を払っているはずです。

 そうであるにも関わらず、人件費も含めた契約事務手数料を受領することは、報酬について定めた宅建業法第46条第2項に違反する行為です。

 これに対する防衛策は、「契約事務手数料の内訳を提示してもらう」ことです。 

 そうすることにより、本当に払うべき経費(恐らく数百円程度)が判明します。

 また、実際のところ、数百円を得るために経費の内訳を計算するのも面倒なので、契約事務手数料自体を支払う必要がなくなる場合が多いと思います。実際に私が遭遇したケースがそうでした。

火災保険料

 火災保険料についても、不必要なお金を騙し取られている可能性があります。

 確かに、多くの物件においては、万が一家事が発生してしまった場合にそなえて、貸主(オーナー)が、火災保険への加入を要求しているのが実情です。

 その場合、火災保険に入らなければ、その物件を借りることはできませんので、必ず入る必要があります。

 しかし、その際、火災保険の補償内容に着目すると、火災保険料引下げの余地があることがわかります。

 火災保険の補償内容は、大きく分けて次の2つに分けられます。

 ①借家人賠償責任補償
 ②家財補償

 ①借家人賠償責任補償というのは、借主(客)が重過失で火事を起こしてしまい、借りている部屋に損害を与えてしまった場合に、貸主(オーナー)に対する損害賠償金額を代わりに支払ってくれるという補償内容です。貸主(オーナー)が、火災保険に入ることを要求しているのは、万が一に備えて、①借家人賠償責任補償を準備しておいて欲しいからです。

 一方、②家財補償というのは、火事などで借主(客)の持ち物が損害を被った場合に、保険会社がその損害の相当額を借主(客)に対して支払ってくれるという保証内容です。

 ①借家人賠償責任補償については、貸主(オーナー)の利益に直結する事項なので、その補償内容を変えることは原則としてできませんが、②家財補償については、借主(客)の利益に直結する事項なので、借主(客)の意向である程度変更することができます。

 実際に私の場合、当初は管理会社から20,000円の火災保険への加入を求められていましたが、②家財補償の保証限度額を500万円から300万円に引き下げることで、15,000円の火災保険に変更することができました。

※火災保険への加入に際しては、保険業法において様々なルールが課されています。

 まず、火災保険について扱う業務は、保険業法上の「少額短期保険業」に該当します(保険業法第2条第17項)。そして、火災保険の加入を求める管理会社は「少額短期保険募集人」であり、「保険募集人」でもあります(同条第22項、第23項)。

保険業法第2条

第17項 この法律において「少額短期保険業」とは、保険業のうち、保険期間が二年以内の政令で定める期間以内であって、保険金額が千万円を超えない範囲内において政令で定める金額以下の保険(政令で定めるものを除く。)のみの引受けを行う事業をいう。

第22項 この法律において「少額短期保険募集人」とは、少額短期保険業者の役員若しくは使用人又は少額短期保険業者の委託を受けた者若しくはその者の再委託を受けた者(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)若しくはこれらの者の役員若しくは使用人で、その少額短期保険業者のために保険契約の締結の代理又は媒介を行うものをいう。

第23項 この法律において「保険募集人」とは、生命保険募集人、損害保険募集人又は少額短期保険募集人をいう。

 そして、「保険募集人」である管理会社は、火災保険に加入させるにあたり、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約を締結できるように提案する義務があるのです。

保険業法第294条の2

 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関し、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。 

 また、この際、「保険募集人」である管理会社は、「この金額の保険に入らなければ、賃貸契約を結ぶことはできません」というようないわゆる「圧力募集」をすることが禁じられています(保険業法第300条第1項第9号、保険業法施行規則第234条第1項第2号)。

保険業法第300条

第1項 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関して、次に掲げる行為(中略)をしてはならない。(後略)
 第9号  前各号に定めるもののほか、保険契約者等の保護に欠けるおそれがあるものとして内閣府令で定める行為

保険業法施行規則(内閣府令)第234条

第1項 法第三百条第一項第九号 に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
 第2号  法人である生命保険募集人、少額短期保険募集人又は保険仲立人が、その役員又は使用人その他当該生命保険募集人、少額短期保険募集人又は保険仲立人と密接な関係を有する者として金融庁長官が定める者に対して、金融庁長官が定める保険以外の保険について、生命保険会社、外国生命保険会社等、法第二百十九条第四項 の免許を受けた免許特定法人の引受社員又は少額短期保険業者を保険者とする保険契約の申込みをさせる行為その他の保険契約者又は被保険者に対して、威迫し、又は業務上の地位等を不当に利用して保険契約の申込みをさせ、又は既に成立している保険契約を消滅させる行為

 このように、保険業法において火災保険の加入に際して、加入者を守るためのルールが様々定められているため、通常であれば管理会社丁寧な対応をしてくれると思います。しかし、もし管理会社からこのような保険業法違反の行為を受けてしまった場合には、その部屋を諦めるか、又は、管理会社の指定する火災保険に加入した上で、事後的にしかるべき措置をとりましょう(保険業法違反行為への具体的な対応方法については後述)。

鍵の交換料

 鍵の交換については、本来的には物件管理上の問題であることから、貸主(オーナー)が負担すべきものなのですが、貸主(オーナー)の方から「借主(客)が交換したくないなら交換しなくていいよ」と言われた場合に、セキュリティ面で不安な生活を送ることになるのは借主(客)となってしまうので、お金を払ってでも交換してもらった方がいいでしょう。

 しかし、この時に注意すべき点があります。それは「新品の鍵に交換されるんですよね?」と、仲介業者を通じて管理会社貸主(オーナー)に確認することです。

 物件によっては、鍵のシリンダーを、単に他の空き部屋のもの(中古)と交換するだけで済ませてしまう、いわゆる「ローテーション」が行われている場合があります。

 この場合、中古の鍵と交換するわけで、新品の鍵と交換する時のように1万円とか2万円とかかかるはずはありません

 そこで、1万円以上の高額な鍵交換費用を請求されている場合には、必ず「新品の鍵に交換される」ということを確認するようにしましょう。

24時間サポートサービス

 最近、「入居者には全員に入ってもらっている」というような触れ込みで、「入居時トラブル24時間サポートサービス」などの加入を迫るケースが増えています。

 特に、大手建築会社による分譲マンションとかにそのケースが多いですね。

 サービスの内容としては、例えば、「入居中、室内設備にトラブルが生じた場合に24時間で対応してくれる電話サービスに、いつでも健康的な相談をできるサービス、さらにはファイナンシャルプランナーと相談できるサービスをあわせて月額300円! さらに、このサービスに加入していれば家賃の引き落とし手数料無料!」というようなものです。

 これは大抵の場合、管理会社が少しでも入居者からお金を巻き上げようとしているものです。

 そもそも、こんなサービスに加入していなかったとしても入居中のトラブルについては、貸主(オーナー)又は管理会社(貸主からトラブル対応を委託されている場合)が対応する義務があるのです(民法第606条第1項)。

民法第606条

第1項 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 

 それを、いかにも有料のサービスのように見せてお金をとろうとするのはどうかと思います。

 また、口座引落し手数料のような根幹となる費用の支払いに合わせる形で複数のサービスをまとめて契約させようとする行為は、「抱き合わせ販売」として独占禁止法第19条に違反する行為です。

独占禁止法第19条

 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

独占禁止法第2条

第9項 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

 第6号 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第九項の規定により、不公正な取引方法(昭和二十八年公正取引委員会告示第十一号)の全部を次のように改正し、昭和五十七年九月一日から施行する。

(中略)

(抱き合わせ販売等)

10 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。

 このことに対する防衛策は、「このサービスって必ず入らなければいけないんですか?」と仲介業者を通じて管理会社に質問することです。

 大抵の場合、この質問をすれば、このサービスに加入しなくていいことになると思います。

 また、これに仲介業者が質問に快く応じてくれなかったり、管理会社が「どうしても加入して欲しい」というような強硬な態度をとった場合には、「どうしてもこのサービスに入らないと、この物件は契約できないんですか?」と質問しましょう。

 もしこの質問に「はい、このサービスに加入しなければこの物件は契約できません」と仲介業者又は管理会社が答えた場合、「断定的判断の提供(宅建業法第47条の2第1項」として宅建業法に違反する行為ですから、後から問題にすることができます。

宅建業法第47条の2

第1項 宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。

 仲介業者管理会社が断定的判断を提供した場合には、それ以上揉めるのも面倒なので、とりあえず「このサービスに加入しなければ、この物件にどうしても入居することができないということであれば、仕方ないですね」と、その場はそのサービスに加入することを受け入れた上で賃貸借契約締結後にしかるべき対応をしましょう(宅建業法違反への対応については後述)。

口座引落手数料

 家賃の振込手数料や、口座からの引落し手数料は、借主(客)が負担することが原則です(民法第485条本文)。

民法第485条

 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

 物件によっては、家賃の支払い方法が銀行口座からの引落しに限定されていて、それにかかる手数料について家賃とは別に支払うことを求められる場合があります。

 このこと自体は問題ないのですが、問題となるのはその金額です。

 多くの銀行では、口座引き落とし手数料は1回あたり0円〜300円程度です。

 これを、 1回あたり700円とか800円とか請求してきた場合は、明らかに高すぎるので、どこの銀行でそんな高額の手数料を要求されているのか、その詳細を確認しましょう。

ハウスクリーニング費用

 物件によっては、借主(客)入居を開始する際に「ハウスクリーニング費用」を請求してくる場合があります。

 しかし、本来、部屋を清潔な状態で借主(客)に引き渡すのは、貸主(オーナー)の義務です。

 また、最近では、退去時に以前の住人からクリーニング費用を徴収して、部屋を綺麗にしているはずです。

 それにも関わらず、入居者に「ハウスクリーニング費用」を請求するのはおかしな話です。

 これは、ルームクリーニング費用として数万円のお金を徴収し、実際には数千円程度の簡単な掃除をするに留めることで、その差額が管理会社又は貸主(オーナー)のポケットに入るという仕組みを作るために請求されているものです。

 これについても、24時間サポートサービスと同様に、「このサービスって必要なんですか?」と仲介業者に質問して管理会社に問い合わせた上で、強硬な態度に出られた場合には、「このサービスを受け入れないとこの物件を契約することができないということですか?」と確認し、「YES」と答えるようであれば宅建業法違反を後から問題にしましょう。

※話が変わりますが、現在、多くの物件において、「退去時のハウスクリーニング費用」を退去者に負担させるという約束が、賃貸借契約の中に組み込まれています。これについて、相場の範囲内(例:1Kで2万円〜3.5万円程度)である場合、約束した以上は支払わなければなりません。しかし、場合によっては後から争うことができるかもしれないので、念のためこれの説明をされた時に「クリーニング業者をこちらで選ぶことはでいないんですか?」と確認しておくと後々いいことがあるかもしれません。

保証費用(保証会社)

 保証会社とは、部屋を借りる時に必要な「連帯保証人」の代わりになってくれる会社のことです。

 もともとは、連帯保証人を見つけられない人のために用意されていた制度だったのですが、最近では、連帯保証人がいる場合でも、二重の保険をかけるために保証会社の利用を必須としている物件もあります。

 しかし、保証会社の利用には料金がかかります。大抵の場合、契約時に半月分を支払、その後毎月家賃の1〜2%程度を保証会社に対して支払うという仕組みになっています。

 しかし、これが必ずしも全ての人に必要なのかは分かりません。

 たとえば、連帯保証人が40代の公務員であるなど、社会的一般的に信用が高いとされている場合だったらどうなのでしょう。また、敷金を通常の2倍支払う場合であればどうなのでしょう。

 保証会社に契約させることで、貸主(オーナー)仲介業者管理会社に紹介料が入るということで、無理やり保証会社を使わせようとしている場合もあるかもしれません。

 保証会社に払うお金は、結局無駄なお金になってしまいます。

 可能な限り払わなくて済むように、仲介業者を通じて貸主(オーナー)に相談してみましょう。

預り金

 悪質な不動産屋の場合、入居審査の際に預けた「預り金」を返してくれないケースもあるようです。

 特によくあるのが、入居審査に通った後に、借主(客)の側から入居の意思表示を撤回した場合で、「そこまで手続きを進めるために要した費用を差し引いて返還する」とか、「入居審査に通ったから、当然に借りるものと思って、鍵交換をしてしまった。鍵交換の費用については差し引いて預り金を返還する」とか、そういうトラブルが発生してしまうみたいです。

 一般に、預かり金は、仲介業者に対して預ける形になります。

 確かに、借主(客)仲介業者は、媒介契約を締結しており、媒介契約は準委任契約の性質を有することから、媒介契約を解除するタイミングによっては、仲介業者に生じた損害を賠償しなければならないこともあります(民法第656条、第651条第2項)。

民法第651条

第2項 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

 しかし、その場合であっても、通常、仲介業者に損害の発生は認められないでしょう。

 また、鍵交換費用についても、借主(客)が依頼して契約締結前に交換したなどの特別な事情がないかぎりは、借主(客)が損害賠償義務を負うことはないでしょう。実際に鍵交換をするのは貸主(オーナー)又は管理会社であって、賃貸借契約締結前の段階において、「借主(客)貸主(オーナー)との間」又は「借主(客)管理会社との間」には何らの法律関係が生じていないからです。

※唯一考えられるのは、仲介業者を挟まずに借主(客)管理会社と直接媒介契約を締結していた場合ですが、その場合であっても、実現が確実でない賃貸借契約締結前の段階で鍵の交換を行ってしまうのは、明らかに時期尚早であり、信頼利益の損失としても認められないと考えられるため、借主(客)が鍵交換費用を負担する必要はないでしょう。

収入印紙代

 珍しいケースではあると思いますが、「収入印紙代」という名目で、本来払う必要のない費用を請求される場合があります。

 賃貸借に関する契約書は、原則として印紙税の対象ではありません

 唯一必要になる場面があるとすれば、賃貸借契約書と独立して、連帯保証契約書を作成する場合です(印紙税法第2条)。

 この場合には、連帯保証人がその文書の作成者となることから、連帯保証人が印紙税の納税義務者となります(印紙税法第3条)。

印紙税法第2条

 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

別表第一(抜粋)

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印紙税法第3条

第1項 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

 しかし、その場合であっても印紙税の金額は200円です。

 これ以上の金額を請求されている場合には、根拠のない請求の可能性があるので、詳細を確認する必要があります。

 また、賃貸借契約書に、連帯保証人が連帯保証する旨を併記する形の場合には、印紙税はかかりません

交渉術

許可を取った上で録音する

 仲介業者管理会社重要な話をする際には、その会話内容を録音しておくことが大事です。

 具体的には、①初期費用(仲介手数料や火災保険料等)の内訳について話す時と、②重要事項説明を受けて賃貸契約書にサインをする時、の2つです。

 これらの際に録音することで、相手の違法な行為を抑止することができますし、また、後々トラブルになったときに証拠として使うことができます。

 最近では、スマートフォンに録音機能が付いているので、ボイスレコーダーなどをもっていなくても簡単に会話内容を録音することができますね。

 しかし、大事なのは必ず仲介業者管理会社の許可をとって録音するということです。

 そうしないと、相手の違法な行為に対する抑止力が働かないのはもちろん、後々万が一裁判等になったときに、民事裁判にしても刑事裁判にしても、違法収集証拠として証拠能力が認められない可能性が出てきてしまうからです。

 「そんな大袈裟な・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、賃貸契約は、総額で数百万円にものぼる大きな契約です。できる限りの手はうっておきましょう。

 トラブルが生じた際、「言った」「言ってない」の水掛け論になってしまうのが最も不毛です。実際の発言内容を正確に記録しておくことが、後々のトラブル回避のためにも役立ちますので、重要な会話については必ず録音しておくようにしましょう。 

法律の知識を持ち出さない

 この記事をここまで読んでくださった方ならお分かりかと思いますが、法律の知識はとても強力な武器です。

 しかし、どの時代のどの地域であっても、交渉の際、武器をお互いに向け合いながら行ったりはしません

 相手に武器を見せてしまうと、相手も身構えてしまいサービスの内容が低下したり、交渉が上手くいかなくなったりするからです。

 大事なのは、法律用語等を極力持ち出さず低姿勢のお願いベース不動産屋と交渉することです。

 「あなたの行為は宅建業法〇〇条に違反している!」だとか、「法律で〜〜と決まっている!」などと不動産屋に言ってはいけません

 法律という武器を持ち出すのは、本当に必要になった時だけです。その時までは、色々な武器を準備しつつも、全てテーブルの下に隠しておきましょう

 ただし、「仲介手数料」のところで解説したように、不動産屋の店内に掲示された「報酬額の上限に関する国土交通大臣告示」については、こちらが用意した武器ではなく、仲介業者等が店に予め用意したものですので、普通に使っても問題ないでしょう。

常に笑顔で

 仲介業者管理会社の従業員も、一人の人間です。

 話していて楽しい人にはいいサービスを提供したくなるでしょうし、話していて不快な人には意地悪をしたくもなるでしょう。

 ですから、借主(客)は、少しでもいいサービスを提供してもらえるように、常に笑顔で、笑いを交えながら会話をすることをオススメします。

 机の下に武器を隠しながらも、常に笑顔で談笑を続けるのが交渉のコツです。

不動産屋はビジネスでやっているのだということを忘れない

 借主(客)の中には、相手が違法なことをやっているにも関わらず、「これだけよくしてくれたんだから、相手に悪意はないに違いない」だとか、「これ以上相手に要望を出すのは可哀想」だとか言って、自分から遠慮して、不必要な大金を支払ってしまう方もいらっしゃると思います。

 こういう方は、不動産屋はビジネスでやっているということを忘れてはなりません。

 ビジネスでやっている以上、1円でも多くのお金を相手から手に入れたいと考えて行動していますし、場合によっては借主(客)に嘘をついたり、騙したりします。

 もしかしたらほんの一握りだけ、お金が有り余っているのに、趣味で不動産業をやっているみたいな奇特な人もいるかもしれませんがそんな人があなたの担当になる確立なんてほぼゼロです。

 「人を信用しない人はだれからも信用されない」という格言もありますので、不動産屋の担当者を信用して行動するのは構いません。むしろある程度は信頼しなければ、相手が気持ちよく動いてくれないでしょう。しかし、相手がどんな間違ったことをしてきても盲目的に信用してしまうような、盲信状態にはならないように気をつけることをオススメします。

不動産屋は他にも沢山あるということを意識する

 部屋探しをしていくうちに、特定の不動産屋と仲良くなることもあるでしょう。それはそれで素晴らしいことだと思います。

 しかし、その不動産屋との関係が、あなたの部屋探しに悪影響を与えるようであれば、その不動産屋との関係は断ち切るべきです。

 たとえば、仲介業者が違法な要求をしているにも関わらず、その態度が強硬で、手続きを前に進めることができないときには、さっさとその仲介業者との関係は終わらせて、他の仲介業者に媒介を依頼すべきです。

 前述のとおり、不動産屋はREINSという共通データベースでつながっていますので、他の仲介業者であっても、あなたが希望する物件を媒介してもらうことはできるのです。

部屋は他にも沢山あるということを意識する

 部屋探しをしているうちに、「ここが私にピッタリ!」「これ以上の物件は今後見つからないだろう」というような、条件にピッタリ合うような物件にあうこともあると思います。いわば「運命を感じるような物件」ですね。

 そういうとき、不動産屋も「これ以上の物件は今後出ないでしょう」とか言って勧めてくることでしょう。

 しかし、そういうときは、一歩引いて考えることが大事です。

 場合によっては、入居審査に落とされてしまうこともあるでしょうし、その物件の管理会社の評判が悪い場合もあるでしょう。

 まるで恋愛の話をしているようですが、あなたの希望にピッタリあう部屋は、ひとつだけではないのです。あなたがその部屋を2週間かけて探したのであれば、あと2週間かけて探せば、似たような物件に出会える可能性は十分にあります。場合によっては、新しく見つけた部屋の方が、よりあなたの希望に即しているかもしれません。

 マンションなどの共同住宅が主流になっている現代日本において、似たような部屋は沢山あるのです。

 特定の物件に惚れ込みすぎて、不利な条件で賃貸借契約を結ばされないように注意してください。

こちらが違法行為をしないように注意

 交渉をしていく中で忘れてはならないのが、こちらが違法行為をしないようにするということです。

 特に気をつけなければならないのが、脅迫罪(刑法第222条第1項)と恐喝罪(同法第249条)です。

 脅迫罪は、相手に恐怖心を起こさせる目的で害悪を告知することで成立しますし、恐喝罪は、相手を畏怖させて財物を交付させたり財産上の利益を得ることによって成立してしまいます。たとえ相手に告知する内容が違法でなくても、相手が恐怖心を感じたり、畏怖して財物を交付した時点で、これらの犯罪が成立してしまうのです。

刑法第222条

第1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

刑法第249条

第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 こちらが違法な行為をすると、逆に不動産屋につけこまれることになります。そのような事態は絶対に避けるべきです。

 したがって、「違法な仲介手数料を請求し続けるのであれば国交省に通報します」とか、「詐欺行為を受けたので警察に被害届を出します」とか、相手を脅すことになるような発言は決してしないようにしましょう。

 本当に国交省や警察に通報するのであれば、特に相手に告知せずに、こっそりと通報すればいいのですから。

管理会社貸主(オーナー)には失礼な態度をとらない

 最初の方でも書きましたが、仲介業者は賃貸借契約が締結されればそれでサヨナラですが、管理会社貸主(オーナー)とは、その部屋を借りている間、ずっと関係が継続することになります。

 入居中にトラブルにならないためにも、管理会社貸主(オーナー)には、仲介業者に対する態度よりも一層丁寧に接する必要があります。

 また、これも最初の方に書いたことですが、実際に賃貸借契約が締結されるまでの間、貸主(オーナー)は、いつでも管理会社との媒介契約を解除することができるのです。せっかく気に入った部屋を見つけたのに、貸主(オーナー)の信頼を失うような行為をして、その話がなくなったり入居審査で落とされるというようなことにならないように注意してください。

友人紹介制度は利用しない

 不動産屋によっては、「ある人(A)が紹介した友人(B)がその不動産屋で部屋を借りた場合、紹介した人(A)と紹介された人(B)にそれぞれ1万円ずつキャッシュバックします。」というような、友人紹介制度を実施している場合があります。

 しかし、この制度について書かれた用紙をよく読んでみると、次のような記述があるはずです。

 「紹介された友人が、仲介手数料を1.08月分支払った場合に限ります

 ここまで読んでくださった方ならもうお分かりですね。

 仲介手数料は、本来0.54月分支払うのが原則なのです。

 賃料が10万円の場合、1.08月分支払う場合には108,000円、0.54月分支払う場合には54,000円となります。

 つまり、紹介された友人にとっては、友人紹介制度を使って1万円キャッシュバックされるよりも、原則通りに0.54月分の仲介手数料で済ませたほうが圧倒的に得なのです(1万円のキャッシュバックを受けるよりも、初期費用を5,6万円削減できた方が得ですよね)。

 また、友人紹介制度を使ってしまうと、紹介してくれた友人に迷惑がかかってはいけないと思って、不動産屋に強気の交渉ができなくなってしまうという副作用もあります。

 以上の通り、損しかないですし、場合によっては大切な友人を失いかねないので、友人紹介制度は使わないことをオススメします。

最終手段

 お疲れ様でした。

 悪徳不動産屋に負けないための法律知識と交渉術に関するまとめは以上になります。

 しかし、1つだけまだ説明していないことがあります。それは、宅建業法違反の行為や刑法的に違法な行為を受けた場合の対応についてです。

 これらについては、かなり強力な武器となりますが、場合によってはその後の取り調べに付き合わされて時間を無駄にしたり、不動産屋から逆恨みを受けたりというデメリットもあるので、自己責任で使うようにしてください。

 不動産屋との交渉の過程で何があったにしても、最終的に希望通りの契約をすることができた場合には、これらの手段には頼らないほうがいいのではないかなと個人的には思っています。

宅地建物取引業保証協会

 宅地建物取引業保証協会とは、宅地建物取引業に関するトラブルの解決や、宅地建物取引士の研修を行うことを業務とする、国土交通大臣指定の機関です。都道府県ごとに設けられており、各都道府県の宅地建物取引業保証協会の連絡先はこちらから確認することができます。

 宅地建物取引業保証協会は、宅建業法において、賃貸等のトラブルに関して解決の申出があった場合にはその解決のために行動しなければならない旨が規定されています(宅建業法第64条の5)。その際、不動産屋は宅地建物取引業保証協会からの調査を正当な理由なく拒否できないなど、ある程度の強い権限が与えられているのです。

宅建業法(第64条の5)

第1項 宅地建物取引業保証協会は、宅地建物取引業者の相手方等から社員の取り扱つた宅地建物取引業に係る取引に関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するとともに、当該社員に対し当該苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
第2項 宅地建物取引業保証協会は、前項の申出に係る苦情の解決について必要があると認めるときは、当該社員に対し、文書若しくは口頭による説明を求め、又は資料の提出を求めることができる。
第3項 社員は、宅地建物取引業保証協会から前項の規定による求めがあつたときは、正当な理由がある場合でなければ、これを拒んではならない
第4項 宅地建物取引業保証協会は、第一項の申出及びその解決の結果について社員に周知させなければならない。 

 宅建業法違反で何らかの被害を被った場合には、まず、問題となる不動産屋が所在する都道府県の宅地建物取引業保証協会に相談されるのがいいと思います。

国土交通省・都道府県

 宅建業法違反の問題で、宅地建物取引業保証協会に相談しても解決することができなかった場合、国土交通省か都道府県に相談することになります。

 これらの機関は、不動産屋が業務を行うために必要な「宅地建物取引業免許」を発行している機関となります。

 具体的には、複数の都道府県にまたがって不動産業を営んでいる場合には、国土交通省から免許を受け、ひとつの都道府県内のみで不動産業を営んでいる場合には、都道府県から免許を受けています。

 どちらから免許を受けているのかについては、不動産屋に店舗内に掲げられた免許証を見れば分かりますし、その不動産屋のホームページに免許番号が掲載されていて、そこからわかる場合もあります。

 国土交通省及び各都道府県の担当部局の連絡先こちらの消費者庁のHPに一覧が掲載されていますので、御確認の上で連絡してください。

金融庁

 火災保険の加入に関して、圧力募集が行われたなど、保険業法に違反する事項があった場合には、保険業務について管轄している金融庁に相談することを検討してください。

 金融庁への問い合わせ先についてはこちらをご覧ください。

警察

 不動産屋から、宅建業法ではなく、恐喝や詐欺といった刑法上の犯罪に該当する行為を受けた場合には、警察署へ被害届を出すことを検討してください。

 なお、事実に反する虚偽の事項を述べて警察に告訴した場合には、虚偽告訴罪で処罰される場合がありますので御注意ください。

刑法第172条

 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

私の体験談

 最後に実際に私が先日部屋を借りる際に行った費用削減の実例について御紹介させていただきます。

家賃

 既に説明した部分ですが、実際には105,000円の家賃のところ、仲介業者から109,000円として紹介されました。実際には、SUUMO上に同じ物件が105,000円で掲載されているのを発見したので気付いたのですが、

 2年間(24ヶ月)で考えると、

 4,000円×24=96,000円

もの金額を騙し取られずに済んだことになります。

仲介手数料

 仲介手数料についても、家賃105,000円に対し、当初は1.08月分として113,400円の請求をされていました。しかし、上述したような交渉を繰り広げた結果、最終的に0.54月分の56,700円で済ませることができました。

 差額にして56,700円も費用を削減できたことになります。

 これに関する交渉は、少し大変でしたが、1時間程度の交渉で5万円以上の費用を浮かせることができたということで、時給5万円のバイトをしていると思えば大したことはありません。

契約事務手数料

 「契約事務手数料」として当初管理会社から6,480円を請求されていましたが、この費用の内訳を示すように求めたところ、即座に0円になりました。

 6,480円がそのまま浮いたことになります。

火災保険料

 管理会社からは、当初、20,000円の火災保険を提示されていましたが、他にプランがないのか確認したところ、一番安い15,000円のプランに変更してもらうことができました。このプランでも、貸主(オーナー)に対する補償額は変わりませんし、このプランであっても、家財について300万円分の保障がついているため、私の生活にとっては十分です。

 これによって、5,000円の削減に成功しました。

鍵交換費用

 当初、管理会社から、鍵の交換費用として20,000円が請求されていました。

 しかし、これが「新品の鍵に交換されるのか」と尋ねたところ、管理会社からは「特殊な鍵のため、新品ではなく中古の鍵に交換することになる」との回答。よくよく聞いてみると、「マンション玄関のオートロックも開けるように対応しているため、以前同じマンションの別の部屋で使用していた鍵シリンダーと交換することになる」とのことでした。

 「中古の鍵で20,000円も請求されるのはおかしいのではないか」と尋ねたら、すんなりと交換作業料だけの3,240円に減額されました。

 結果、20,000円-3,240円=16,760円の費用削減に成功しました。

24時間サポートサービス

 当初、管理会社から、一月あたり300円の計算で、2年分の7,200円を請求されていましたが「このサービスって必ず入らなければいけない訳ではないんですよね?」と尋ねたところ、入らなくてよくなりました

 7,200円が丸々浮いたことになります。

合計

 ここまでで削減した金額を合計してみると・・・

 96,000円(家賃)
+56,700円(仲介手数料)
+  6,480円(契約事務手数料)
+  5,000円(火災保険料)
+16,760円(鍵交換費用)
+  7,200円(24時間サポートサービス)

=188,140円

 最初に計算したときは自分でも驚いたのですが、なんと、18万円以上も削減することができました!

 不動産屋が暇な時期ではなく、2月・3月という1年の中で不動産屋が最も忙しい繁忙期にこれだけできれば上出来ですね!

終わりに

 最後までお読みくださり、ありがとうございました

 現在、不動産業界は、多くの不動産屋が当たり前のように法令違反を犯しています。まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の状態です。

 それは、不動産屋のコンプライアンス(法令遵守)意識が低いことに問題があると思いますし、消費者はその被害者だと思います。

 しかし、一人ひとりの個人が正しい知識を身につけ違法なことをしている不動産業者からは部屋を借りないという姿勢が世間に浸透し、悪質な不動産屋が経営難や公的機関による摘発で淘汰されていけば、いずれ不動産業界も浄化され、部屋を借りる側にとっても、あるいは貸すオーナーの側にとってもメリットのある社会になるのではないかと思います。

 

 この記事を読んでくださった方にお願いが2つあります。

 1つは、違法行為に手を染める悪徳不動産屋を通じて部屋を借りないでください

 もう1つは、是非、この記事で得た知識を友人や家族に広め、実践してもらってください

 確かに、不動産屋と交渉するのは少し勇気が要るかもしれません。しかし、一人ひとりの勇気が、この社会を変えていくのです。

 「家」は、生活の中心です。その「生活の中心」を仕切る業界悪質な業者に支配されているというのは、決して望ましいことではありません

 住みよい社会を作り出すためにも、是非、皆様のお力をお貸しいただけませんでしょうか

 

※この記事について、分かりにくい部分や質問等がありましたら、Twitter問い合わせフォーム等でお気軽に御質問ください。