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公務員のボーナスを批判するのは本質が見えていない証拠

お役所バッシングはやめられない (PHP新書)

公務員のボーナスはいくら?支給日はいつ?

 グーグルやヤフーでは、「公務員 ボーナス 金額」とか「公務員 ボーナス 支給日」とか、そんなキーワードで多くの人が検索しているらしい。

 自分の収支を管理しなければならない公務員自身がそういうキーワードで検索するのは当たり前のことだが、検索をしているのはそういう人がすべてではない。

 公務員のボーナス支給額と自分のボーナス支給額と比較して優越感を感じたり、または自分の方が低いからといって批判の種にすべく検索する人が多くいるのである。

 別に誰がどう思おうと勝手だし、既に私には関係のない話だが、他人と自分を比較して羨んだり妬んだりする人を見ると、悲しい気持ちになる。

 彼らは、物事の本質を捉えることができておらず、不適切な批判を行っている。そうであるからこそ、平均以上の賃金を稼ぐこともできず、恨みと羨みという負の感情に覆われた残念な人生を送ることになるのである。

 なぜ、公務員にボーナスが支給されるのか。

 その答えは簡単である。

 会社員にボーナスが支給されるからである。

 日本の公務員の給与体系は、国内の民間企業における給与体系をベースに、その平均をとる形で構築されている。

 普段の月給自体が、民間企業の給与体系を踏襲している以上、ボーナスについても民間企業と同様に支給されるのは当たり前の話である。

 世の中には、「うちは今年ボーナス出てないんだから、公務員にボーナスが出ているのはけしからん」という人がいる。

 不況によってボーナスを支給しない会社がいくつか出てきたからといって、公務員のボーナスがなくならないのは当然のことである。

 民間企業民間企業の支給月数の平均をとって公務員への支給月数が決定されるからだ。

 個別の会社で見ていけば、そりゃあボーナスが出ない年もあるだろう。しかし、その時期に、日本に存在するすべての会社がボーナスを出していないかというとそんなことはない。

 ボーナスが出ていない企業や支給額が減った企業の存在も踏まえて、公務員のボーナスは現に減少させられている。それが本来の趣旨に則った適切なやり方である。

 ボーナスが出ていない会社があるんだから、公務員のボーナスも支給すべきではないなんて議論は筋が通らない。

 もし公務員に対するボーナスがなくなるとすれば、日本国内の殆どの企業がボーナス制度を廃止した時であろう。

 「舛添都知事は不祥事で辞任するんだから、ボーナスを受け取るべきではない」などという人もいる。

 しかし、彼らはわかっていない。ボーナスは、毎月の月給の一部が積み立てられて財源になっているということを。特別職の地方公務員である都知事の給与体系も、その例外ではないということを。

 舛添都知事がボーナスを受け取るべきではないという人に限って、舛添都知事が自ら提案した月給の減俸にはあまり関心を示さないのだから面白い。その矛盾した言説は、その人の理解不足を露呈している。

 ボーナスは、賃金の後払いとしての性質を有する。

 ボーナス制度を用いて、賃金の一部を本来支給すべき時に支給せず、特定の時期にまとめて与えることで、従業員をより長い期間その会社に引き止める効果を持たせている。

 つまり、ボーナスの大部分は、本来月給として受け取るべきであったお金なのである。

 公務員のボーナス制度自体はなくしてもいいのかもしれない。しかし、それは、ボーナスとして受け取るべきであった金額を、月給に振り戻した上でだ。

 しかし、そんなことをすれば、公務員の平均賃金が民間企業と比べて高いという、別の不適切な批判が噴出することは間違いない。

 今回の舛添都知事辞任に係る一連騒動のように、誰かを批判することで自らの鬱憤を発散しなければ生きていけない残念な国民が多いからだ。

 誰かが羨ましいのであれば、その羨ましい相手を超えるために努力をし、超えていけばいい。

 努力もしないで批判ばかりしているようでは、不満ばかりの人生から抜け出すことはできない。

 誰かを貶めるよりも自分を高めることにエネルギーを注ぐべきなのである。

 なお、本記事における主張に対して、「公務員の給与水準を決定する際に参考にしているのが大企業ばかり」という反論があることが予想されるが、そんな反論に意味はない。

 本来月給として支給すべき給与のうち一部を積み立てて賞与の財源にしているという構造自体は、国内の殆どの企業において共通するものであり、給与水準の決定に際して参考にする企業を変更したところで、その構造が変わることはないからである。

(蛇足。個人的な愚痴)

 私が国家公務員を辞めるとき、人事の担当者から「ボーナスをもらってから辞めるなんて論外だ!非常識すぎる!」ということを苛烈な口調で何度も繰り返し言われた。

 最終的に私は譲歩し、結局数ヶ月分の賃金の後払いを受けることを放棄したが、その方も賞与の性質についての理解が足りなかったのではないか。

 譲歩までに数度の話合いをしたが、私は当時お金に拘っていたわけではない。ボーナスを受給すべきではないとする説明が感情論の域を脱することなく、全く筋が通っていなかったから、引き下がらなかったのだ。

 国家の中枢たる中央省庁で人事を担当する立場であり、しかも、総務省は地方公務員の賃金も含めた地方行政制度を所管しているのである。入省直後の若手職員ならまだしも、中堅職員がそのような有様では、不勉強で済まされる話ではないだろう。