映画を補完する素晴らしいスピンオフ
世間で絶賛を受けている映画「君の名は。」。
非常に魅力的な作品だけに、回収されない伏線などが気になってしまうというのも事実だろう。
個人的に一番残念だったのは、結局父親が嫌われキャラで終わってしまうところだと思う。
宮水を憎み、娘に対しては最後の最後まで頑なで、三葉やてっしー、沙也加が頑張って助けた住民も、父親の的確な避難指示で救われたことになるなど、いいところだけ持っていく嫌なやつである。
しかし、そんな父親に関しての描写を、より深く掘り下げた作品がある。
それが、小説「君の名は。Another Side:Earthbound」である。
君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)
- 作者: 加納新太,田中将賀,朝日川日和,「君の名は。」製作委員会,新海誠
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: 文庫
これは、以前大流行したアニメ「コードギアス」のCDドラマSound Episodeシリーズで脚本を書いていた加納新太さんが書いている小説で、新海監督が直接書いたものではないが、映画の世界観を崩さずにより深く味わうための作品として、非常によく書かれている。
映画のヒットに引っ張られて、書店や通販では在庫切れが続いているようだが、Kindle版ならいつでも手に入れることができるため、是非読んでみて欲しい。
三葉編、てっしー編、四葉編、父親編の4部構成で、てっしーや四葉のファンにもオススメなのだが、特に最後の父親編が素晴らしい。
別にこれで、父親がいい奴に思えるわけではない。しかし、三葉の母親二葉との馴れ初めのエピソードを読み進めていくうちに、この父親が血も涙もない人間では一切ないことがわかる。
この小説を読んだ後に、もう一度映画を見に行きたい。
そう思わせてくれる素晴らしいスピンオフ小説である。
(P.S.)
スピンオフ作品の出来は素晴らしいが、下の記事に書かれたエピソードの方が実は好きだったりする。