18歳以上に選挙権を付与する公職選挙法改正法が施行(平成28年6月19日)。参議院議員選挙・都知事選に適用。
平成28年6月19日、公職選挙法の一部を改正する法律が施行されました。
この改正法の施行により、これまで20歳だった選挙権年齢が18歳まで引き下げられ、240万人が新たに有権者となります。
国政選挙では平成28年6月22日公示の参議院議員選挙から、地方選挙では福岡県うきは市長選を皮切りに平成28年7月14日公示の東京都知事選挙にも適用されることになります。
テレビや新聞などマスコミの多くは新たに選挙権を付与されることになる18歳・19歳の若者に取材したり、東京都選挙管理委員会はラッパーを起用して投票促進活動を行うなど、若者がより選挙に意識を向けるような働きかけを活発に行っていますが、改正法施行後の選挙活動に関するルール変更についてはあまり知られていません。
そこで、この記事では、18歳に選挙権年齢を引き下げた後の選挙運動のルールについてまとめていきたいと思います。このルールを知っておかないと、最悪の場合刑事処罰を受け、刑務所行きになってしまうこともあるので必ずチェックしておくようにしておくようにしましょう。
選挙権年齢引き下げ後の選挙活動のルール
18歳・19歳も含めた若年層の有権者が一番気をつけなくてはならないのは、インターネット上での選挙運動についてです。
インターネット上での選挙活動は、平成25年の法改正により解禁されたもので、比較的新しいルールであるため、まだ社会に浸透していないところがあります。
もしかしたら、若年層を子供に持つ父親・母親や教員も知らず、子供に対して十分な情報提供ができていないことがあったり、万が一違法なことをしていた場合にそれを諌めることができない場合があるかもしれないので、特に注意したいですね。
18歳・19歳の有権者もインターネット上で選挙運動をすることが可能に
インターネット上での選挙運動については、選挙制度を所管する総務省のHP(総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報)に詳しい記載がありますが、まだ選挙権引下げの公職選挙法改正を受けた修正をしていないので、多少古い情報が含まれています(平成28年6月19日現在)。
それは、「未成年の選挙運動の禁止(公職選挙法第137条の2、第239条)」です。これまで、インターネット上でのものも含め、未成年者(20歳未満の者)による選挙運動は禁止されていました。
それは、公職選挙法に次のような規定があったためです。
改正前
(未成年者の選挙運動の禁止)
第百三十七条の二 年齢満二十年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2 何人も、年齢満二十年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。
しかし、今回の法改正では当該部分が次のように改められるため、18歳未満の者が、現実世界でも、インターネット上でも、選挙運動をすることができるようになります。
改正後
(年齢満十八年未満の者の選挙運動の禁止)
第百三十七条の二 年齢満十八年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2 何人も、年齢満十八年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。ただし、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。
つまり、今回の法改正により、18歳・19歳の者は選挙権を与えられただけでなく、選挙運動が解禁されました。ただし、その活動をする中で20歳以上の者と同様のルールに縛られることも忘れてはなりません。
電子メールを利用した選挙運動の禁止
インターネット上での選挙運動に関するルールを簡単に説明すると、次の通りです。
①有権者は、ホームページ、ブログ、ツイッターやフェイスブック等のSNS、動画共有サービス、動画中継サイト等を利用した選挙運動ができるが、電子メールを利用した選挙運動は引き続き禁止されています。
②候補者・政党等は、ホームページ、ブログ、ツイッターやフェイスブック等のSNS、動画共有サービス、動画中継サイト等及び電子メールを利用した選挙運動ができる。
つまり、平成25年の公職選挙法改正によってウェブサイト等(ホームページ、ブログ、ツイッターやフェイスブック等のSNS、動画共有サービス、動画中継サイト)を使用した選挙運動をできるようになったものの、電子メールを使用した選挙運動は、候補者や政党しかすることができないということです。
「〇〇さんに投票しましょう!」というようなメールを送ったり、また誰かから送られてきた当該文面を転送したりすると、直ちに公職選挙法に違反することになります。これに違反した場合には、①2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされています(公職選挙法第243条第1項第3号)。
ただし、フェイスブックやLINEなどのユーザー間でやりとりするメッセージ機能は、「電子メール」ではなく、「ウェブサイト等」に該当し、セーフとなります。
ウェブサイトやブログなどで選挙運動をする場合の注意事項
上述の通り、18歳・19歳も含めたすべての有権者は、ウェブサイトやブログなどで選挙運動をすることができます。
この記事を読んでくださっている方の中にも、ウェブサイトやブログを運営されている方はいらっしゃるでしょうし、選挙に向けて新たに立ち上げる方もいらっしゃるかもしれません。
その際注意したいのが、ウェブサイトやブログなどで選挙運動をする場合、必ず、メールアドレスを表示するか、連絡用フォームを設置するなどして、すぐに連絡が取れる体制を確保しなければならないということです(公職選挙法第142条の3第3項、第142条の5第1項)。
また、選挙運動は投票日の前日までに限られているため、投票日当日に選挙運動用のHPや記事を更新することは禁止されています(公職選挙法第129条)。
なお、万が一のために言っておきますが、ブログやHPに有料で特定の個人名等が含まれた選挙運動のためのバナー広告を掲載することも禁止されていますので、絶対にしないようにしてください(公職選挙法第142条の6)。
なりすましの禁止
TwitterやFacebookなどで、有名人に対するなりすましアカウントが氾濫する現在ですが、選挙運動を目的としたなりすまし行為は禁止されています(公職選挙法第235条の5)。
(氏名等の虚偽表示罪)
第二百三十五条の五 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて真実に反する氏名、名称又は身分の表示をして郵便等、電報、電話又はインターネット等を利用する方法により通信をした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
本人がそのつもりがなかったとしても、なりすましアカウントにおけるツイートや投稿などが、選挙運動を目的としていたと判断されれば、2年以下の禁錮または30万円以下の罰金となるため、候補者の名前でなりすましアカウントを作成している方などは、すぐに削除するようにしましょう。
もちろん、選挙に向けてなりすましアカウントを作るなんてことは以ての外です。
選挙運動に関するビラの頒布禁止
選挙運動で用いられるビラは、指定された枚数、選挙管理委員会のチェックを受けた上で頒布されます。したがって、有権者が勝手にビラを頒布することは禁止されています。
特に注意したいのが、ホームページなどを印刷したものです。選挙運動に関するウェブサイト等を印刷した物を配ることは禁止されており、違反した場合には2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処されますので注意してください(公職選挙法第243条第1項第3号)。
選挙運動期間に関する注意
選挙運動が許されるのは、公示〜投票日前日までです(公職選挙法第129条)。これ以外の期間は、「〇〇に投票しよう!」と呼びかけるような行為は禁止されていて、違反した場合には1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされています(公職選挙法第239条第1項第1号)。
まとめ
いかがでしたか?
選挙に関しては厳しいルールがあります。私自身も、2014年の衆議院解散総選挙の際に選挙管理委員会事務局の職員をしていて、ルールの多さに辟易したことがあります。
選挙権を有するということは相応の責任を負うことでもあります。
①選挙期間内に、②連絡先を表示した上で、③なりすましなどせずに選挙運動する。ただし、④メールはダメだし、⑤文書や印刷物を配るのもダメ。
この5点を押さえておけば、基本的には法律に引っかかることはありません。
もちろん、普段からも許されないハッキングによるウェブサイトの改ざんや、過度な誹謗中傷なども禁止されていますが、これらは当然ダメだということがわかるでしょう。
以上のルールを押さえた上で、2016年夏の参院選と都知事選、全力で考え抜いて、自分が好ましいと考えた人物に投票するようにしましょう!
自分は選挙に行かないくせに、「今の政治は腐ってる」と叫ぶような自己矛盾的な存在にはならないように注意しましょうね!!