掟上今日子の叙述トリックの犯人がわかった!
前回、下の記事を書いた時は放置していたんですが、犯人がわからないのも気持ち悪いので、「掟上今日子の叙述トリック」の犯人を突き止めました!
忘却探偵である今日子さんが延々と叙述トリックについて解説するこの話は、「掟上今日子の心理実験」に向けた布石であって、最後に犯人を明らかにしていないんですよね。終わり方も、次のようになっています。
二段構えの暗号が示していたのは、あまりにも意外な犯人だった
でもやっぱり犯人がわからないのもモヤモヤしますし、犯人を突き止めましょう!
まず、この事件における登場人物を確認しましょう。
樫坂大学推理小説研究会
千良拍三(ちら・はくぞう)
美女木直香(びじょぎ・なおか)
夥田芳野(おびただた・よしの)
大隅真実子(おおすみ・まみこ)
石林済利(いしばやし・なりとし)
寿々花大学軽音楽部
雪井美和(ゆきい・みわ)
里中任太郎(さとなか・にんたろう)
益原楓(ますはら・かえで)
殺風景(ころかぜ・けい)
児玉融吉(こだま・ゆうきち)
これは、第2章で刑事が登場人物紹介表の如く羅列した登場人物です。戯言シリーズと違って、忘却探偵シリーズで登場人物紹介表が出てくるのはこの作品が初めてです。読み仮名までふってあって親切ですね。
なお、語り部である刑事さんが地の文で次のように語っており、これら登場人物紹介表の中にいる人物が犯人であると考えて問題ありません。もしここで叙述トリック(人数の誤読)を用いるようであれば、それはミステリーのルール違反であり、叙述トリックを題材にしたこの作品でそんなことをするとは思えません。
確かに鳥川荘には管理人やコックといった従業員はいるけれど、みんな通いで、夜までには島から出て行ってしまう――住み込みの警備員はいない。
犯行時間と、状況から見て、犯人は今日子さんの腕に書いた『登場人物紹介表』の中にいると考えて、およそ間違いないはずだ。
また、被害者は千良拍三なので、彼は犯人候補から除外します。
さて、この事件では、被害者の千良が持っていたスマートフォンの電卓に残された「+5-12+40+20-8+221-9-14-94+7-8-18-19+20+143」という数式を、「(+5-12+40), (+20-8+221), (-9-14-94), (+7-8-18), (-19+20+143)」として、3次元xyz軸の座標に見立て、同じく被害者のスマートフォンに表示されていた小説「XYZの悲劇」紙版の上下巻に当てはめて解読していくことで犯人を突き止めます。
多くの読者は、ここで突き当たることでしょう。だって、作中の架空の人物岸沢定国が書いた「XYZの悲劇」なんていうミステリー小説は、この世に存在しないのですから。なお、同じく作中で、叙述トリックの生みの親として紹介されているエラリー・クイーンが、Xの悲劇、Yの悲劇、Zの悲劇という本を出していますが、これらは3本立てであり、上下巻ではないため、今回の謎解きの方法を使うことはできません。
しかし、悲観することはありません。なぜならば、各座標に当てはまる文字は1文字なのですから。「(+5-12+40), (+20-8+221), (-9-14-94), (+7-8-18), (-19+20+143)」という座標が示すのは、5文字の言葉なのです。
さて、ここで上に掲げた登場人物紹介表を御覧ください。
この中で、五文字の人間は、「雪井美和」だけです。漢字で5文字という可能性もなくはないですが、それでは登場人物紹介表にわざわざ読み仮名が括弧書きで書いてある必要がありません。読み仮名は本来、カッコ書きではなくフリガナの形で書くのがこれまでの西尾維新の作品だからです。
作品中で、千良拍三を殺したのは同じサークル樫坂大学推理小説研究会のメンバーであろうと途中で推測していますが、実はそうではなく、軽音楽部のメンバーである雪井美和が犯人であったため、最後は、「あまりにも意外な犯人だった」と締めくくられているのです。
というわけで、犯人は雪井美和でした。もしほかの読み解き方があれば是非教えてくださいね!